PLS.AX ピルバラミネラルズ 2022年6月期2Q決算

リチウム化合物の原料となるスポジュメン鉱石を採掘している会社。オーストラリア上場。

保有する資産はオーストラリアの Pilgangoora で、生産中の鉱山ではトップクラスの資源量をほこる。資源量・グレードともに高い Greenbushes(ティエンチ/アルベマール)は別格だが、Mt Marion(ガンフォン/ミネラルリソーシズ)や Mt Cattlin(オールケム)よりもはるかに大きい。

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Pilgangoora の他には、Ngungaju を開発していたアルチュラマイニングを買収している。

Ngungaju の資源量は中規模クラス。アルチュラは生産開始までこぎつけていたが、リチウム価格の下落によって破綻した。Ngungaju は Pilgangoora に隣接しているため相乗効果が見込めると判断したようだ。

買収価格は175Mドル。足元の市況を基準にすると格安な買収価格となった。

 

ピルバラミネラルズのオフテイク契約の相手にはガンフォン、CATL、ポスコといった一流の会社が並んでいる。

これらの会社はピルバラの株主にもなっている(ガンフォン6.86%、CATL8.24%、ポスコ3.69%)。

ポスコとはJVで水酸化リチウムプラントを建設する計画も進行している(2023年後半に試運転の予定)。

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Pilgangoora でのスポジュメン精鉱の生産は2018年3Qに始まった。

リチウム市場の悪化を受けて2019~2020年にかけて生産が停滞したが、最近のリチウム市場の回復を受けて急回復している。

年間330Ktのキャパシティに対して、直近4四半期の合計は324Ktとフル生産に近い。

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2022年6月期の生産量は340~380Ktというガイダンス。

2022年7-9月四半期には Ngungaju の立ち上げとピルガンの改善により、キャパシティ560~580Ktへの拡張を見込んでいる。

なお、拡張計画は西オーストラリアの労働力不足により遅れが出ている。2021年11月のプレゼン資料では今期中に完了の予定だった。

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スポジュメン精鉱の市場価格は、底値から10倍となる4,000ドル前後まで急騰している。

ピルバラの販売価格も中国のスポット価格に素直に反応して大きく値上がりしている。

上半期のスポジュメン精鉱の販売価格は約1,300ドル/トン。1-3月の四半期にはさらに値上がりして2,600〜3,000ドル/トンになる見込み。さらに直近の契約価格は現在のスポット価格(3,750~4,500ドル)の下限に近付いているとのことだ。

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上半期のピルガンのコストはFOBベースで347ドル/トン、CIFベースで486ドル/トン。下半期のピルガンのコストは、ロイヤルティを除いたFOBベースで329~358ドル/トン(1豪ドル=0.7319米ドルで計算)となる見込み。

23年6月期は、Ngungaju を含めたFOBベース(ロイヤルティ除く)で388~417ドル/トンという予想。

安定的にキャパシティを達成できるようになれば、長期的にはCIFベースで350ドル/トン程度に戻るとの見方を示している。

 

中間の業績は、売上高が59.1Mドルから283.3Mドルに4倍以上に増加し、営業利益は135Mドルと黒字転換した。

純利益は84.2Mドルだが、買収費用や税金項目を調整すると114Mドルとなる。

営業キャッシュフローの116Mドルに対して、投資キャッシュフローは38Mドル。

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好調な業績の結果として、現金残高は前期末の99Mドルから191Mドルに増加した。出荷済みの取消不能の信用状を含めると245Mドルになる。

一方で有利子負債は176Mドル。ネットキャッシュはプラスとなった。

 

株価は2020年の底値からピークまで20倍以上に値上がりした。現在はピークの3.72豪ドルから下落して2.62豪ドルとなっている。時価総額は米ドル換算で5.6Bドル。

リチウム各社を見ると、アルベマール21.3Bドル、SQM17.7Bドル、オールケム4.4Bドル、ライベント3.4Bドルとなっている。ただ、ピルバラは下流のリチウム化合物を作っていないので他社と比較しにくい。

時価総額と上期の純利益の約100Mドルを比べると割高だが、販売価格2倍&コスト同じだと年間800Mドル程度の営業利益となるので割安感が出る。

ただ、スポジュメン精鉱は建設開始からフル生産まで2年程度と短く、リチウム化合物の生産と違って参入障壁も低いため、極端な高値が続くとは考えにくい。

2022年はシグマリチウム、コアリチウム、アルベマールのウォジナ再稼働くらいだが、2023~2024年には新規の鉱山が続々と稼働するはず。

スポジュメン精鉱の不足は少なくとも今年いっぱいは続きそうだし、来期のキャパシティ拡張やPOSCOとのJVというプラス要素はあるが、個人的には今の時価総額は十分に評価されているのではないかと思う。ただ、業績とスポット価格の連動が強い銘柄なので、リチウム価格の値動き次第ではまだ上があるかもしれない。

 

6890 フェローテックホールディングス 2022年3月期3Q決算

半導体関連の製品・サービスと電子部品の会社。

磁性流体、真空シール、石英製品、セラミックス、半導体洗浄、サーモモジュール、パワー半導体基板などを提供している。

 

2Q累計の業績は、前年比で売上高+41%の増収、経常利益+215%の増益だった。

3Q単体も、売上高+37%の増収、経常利益+94%と好調が続いている。

四半期の業績推移を見ると、売上高は2021年の3Qから大きく伸びている。経常利益は過去5年ほど10~30億円程度のレンジで推移していたが、2022年の1Qに65億円、2Qに60億円、3Qに57億円と大きく上抜けした。

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3Q単体のセグメント別業績は、半導体等装置関連が売上高+31%の増収、営業利益+207%の増益、電子デバイスが売上高+38%の増収、営業利益+18%の増益となっている。利益の改善は半導体等装置関連の方が大きい。

 

業績は絶好調で2度の上方修正を行なっている。3Qも問題ない決算だったが、株価はここのところ大きく下げている。

今期予想PERは4.6倍。特別利益の影響を除くため経常利益×0.7で計算すると6.5倍となり、成長率と比較すると相当割安になる。

評価が低いのは、中国比率が高いというカントリーリスクと、半導体市場のピークアウトが不安視されているのかなと思う。他の半導体銘柄も売られていることから、後者の影響が強そう。半導体市場の先行きについてはよくわからないが、今期業績の急拡大を見ると反動があってもおかしくないかなとは思う。

 

9435 光通信 2022年3月期3Q決算

インターネット回線、宅配水、電力などのビジネスを法人や個人相手に行っている会社。営業力に強みがあり、中小企業・小規模事業者向けに圧倒的な販売網を持つ。

かつては携帯電話ショップ、医療保険、OA機器といった商品・サービスの比率も高かったが、時代に合わせて主力製品が入れ替わっている。

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3Qの業績は、前年比で売上高+3%の増収、営業利益+3%の増益、税前利益+17%の増益、純利益+34%の増益だった。

3Q単体だと、売上高+3%、営業利益+7%となる。

 

セグメント売上高の四半期の推移が下のグラフになる。

数年単位で見ると売上高は右肩上がりになっている。

売上高の内訳を見ると、取次販売が減る一方で、法人・個人サービスが伸びている。販売代理店から自社商材への移行という方針に沿った動き。

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セグメント営業利益の四半期の推移が下のグラフになる。

取次販売の減少と法人・個人サービスの増加は売上高と同じ。

法人と個人では、法人サービスの方が伸び率がやや高いものの、四半期のブレ幅も大きい。21年4Qに赤字なのは、電力価格の高騰の影響で電力小売に損失が出たため。電力小売はリスクヘッジのために相対取引を増やしたことで、今年もマイナス要因になっている。

個人サービスも法人サービスほどではないが、前年比の増益率にややばらつきがある。

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株価は2019年末のピークから半値に下がっている。今年に入ってからの下落も大きい。今期の予想PERは10倍程度。大型株としては割安感のある水準だと思う。

ただ、足元で電力価格の高値が続いている(20円前後/kWh)のは不安要素に思える。

会社資料によると、スポット単価が20円/kWhの場合、単価10円/kWhに比べて、月次で17~27億円程度のマイナスになるそうだ。法人サービスの営業利益が四半期ごとに100億円程度なので影響は大きい。

 

次に光通信のもうひとつの主力事業である有価証券投資の状況を見てみる。

3Q末の純現金資産は3,553億円で、2Qから200億円ほど減っている。株価が下げているので4Qも厳しくなりそう。

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一方で、子会社以外の投資先の直近12か月の持分営業利益は642億円(うち持分法適用会社が121億円)と2Qより増加している。光通信の今期の営業利益が830億円なのでかなりの大きさになる。

とはいえ、持分営業利益は単に数字上の集計だし、日本企業は株主還元が少ないし、光通信がアクティビスト行為をしているわけではないので、絵に描いた餅という感じではある。

 

4193 ファブリカコミュニケーションズ 2022年3月期3Q決算

SMS送信サービスと中古車ビジネス支援プラットフォームが主力の会社。

他に車買取一括査定サイトなどのウェブサイトの運営、レンタカーや車検・整備といった事業も行っている。

 

3Qは前年比で売上高+17%の増収、経常利益+31%の増益だった。売上高、経常利益ともに進捗率は前年を上回っている。

 

年ベースの業績を見ると売上高・経常利益ともに右肩上がりに伸びている。

今期の予想は、前年比で売上高+17%の増収、経常利益+31%の増益。

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セグメント別の業績を見てみる。

3Q累計のSMSソリューションは、売上高+31%の増収、セグメント利益+36%の増益だった。

3Q単体でも売上高+36%の増収、営業利益+40%の増益と好調。

SMSソリューションは売上高の半分以上、利益の7割超を占めている。

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ファブリカの行っているSMS配信サービス市場は急拡大している。決算説明会の資料によると2025年にかけて年率41.5%の配信数の増加を見込んでいる。

プレーヤーは、NTTコムオンライン、ファブリカ(メディア4u)、アクリート、AI CROSSの4社の寡占となっている。

SMS配信ビジネスを行うには大手キャリアすべてと契約する必要があることや、通信量によってキャリアからの仕入価格が決まるという規模の経済が参入障壁になっているとのこと。

ファブリカは、国内法人のシェア2位(30%)で1位のNTTコムオンラインと争っている。

会社は自社の特徴として、国内法人に特化していること、本人認証以外に多用途で使われていること(業務連絡、事前通知、督促でトップシェア)、直販比率が高いこと、地方企業や中小規模の顧客も積極的に獲得していることを挙げている。ただ、AI CROSSの社長によると基本的な機能は差別化が難しいとの話だ。

ファブリカを含む各社の特徴については、アクリートの事業計画及び成長可能性に関する事項という資料に解説がある。

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上場しているファブリカ(SMSセグメント)、アクリート(単体)、AI CROSS(連結)の3社の四半期の売上高を比較したのが下のグラフになる。

売上高の規模はファブリカが最も大きい。

前年比の成長率はファブリカとアクリートが+40%程度となっている。AI CROSSはビジネスチャットの売却のため直近の数字が落ちているが、売却前は前年比+24~55%だった。基本的に3社ともここ2年の成長率は非常に高い。

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続いて3社の営業利益の推移。

ファブリカは営業利益率が29.3%と高く、営業利益の金額は最も大きい。利益率はこの2年近くで徐々に向上している。

アクリートはの営業利益率は17.3%で、2020年4Qの23%をピークにやや下落している。

AI CROSSの営業利益率は7.2%とかなり低い。AI CROSSの社長によると、粗利益率が低いのは販売代理店を使っているためで、他にはデータ分析などへの投資を理由に挙げている。ただ、粗利益率の40%前後はアクリートと大差ない。

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U-CARソリューションの3Q累計は、売上高+15%の増収、セグメント利益+13%の増益だった。ほどほどの成長率を安定して続けている。

U-CARソリューションは、中古車販売に必要な業務支援をクラウドで提供するSaas事業。導入社数も右肩上がりで解約率も低い。

現在の symphony の導入社数は3,223社。中古車販売事業者は3万社以上いるため拡大余地は大きいようだ。会社は2030年に1万社の導入を目標にしている。

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インターネットサービスは赤字、オートサービスは売上高が大きいが利益への貢献は少ない。

 

ファブリカの株価は上場後ピークの5,080円から半減しており、現在は2,036円、時価総額は約100億円となっている。

今期の予想PERは17.4倍で、成長率と比べると割安感があると思う。

ただ、同業のアクリートが18.8倍、AI CROSSが21.5倍と、セクター全体として評価が高くない。同業間の競争はあるだろが、寡占市場で成長率も高いのでそれほど悪くないと思うのだが。

 

3663 アートスパークホールディングス 2021年4Q決算

イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオと主に車載向けのUI開発ソリューションを提供している会社。

クリップスタジオはアマチュアからプロのクリエイターまで幅広く利用されているそうだ。イラストSNSの pixiv での使用率はNo.1とのこと。

2021年12月末の累計出荷本数は1,659万本で、うち73.6%が海外向けとなっている。

 

4Q累計の売上高は前年比+8%の増収、経常利益+90%の増益だった。

4Q単体だと売上高-1%の減収、経常利益+103%の増益となる。

3Qの業績に失速感があったため上方修正後の会社予想から下振れるかなと思っていたが、売上高こそ下だったものの営業利益と経常利益は予想数字を達成した。

 

セグメント売上高の年ベースの推移が下のグラフ。クリエイターサポートが右肩上がりに伸びているのがわかる。

※2017年にコンテンツソリューションをクリエイターサポートに統合している。

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セグメント利益の推移を見ると、クリエイターサポートが利益を出す一方で、UI/UXが赤字を続けている。

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続いてクリエイターサポートの四半期業績の推移。

2021年の通期では前年比で+21%の増収増益だったが、4Q単体は売上高+7%、セグメント利益+20%と減速している。売上高は2四半期連続で、セグメント利益は3四半期連続の下落となる。

ただ、2019年以前を見ると、セグメント利益は1Qをピークに下がる傾向があるので季節性もあるようだ。売上高については新型コロナ特需の反動があるのかもしれない。

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クリップスタジオのサブスクリプションは順調に伸びている。

売上高に占めるサブスクの割合は3Q(7月~9月の平均)が37%、4Q(10月~12月の平均)が40%になっている。直近の1月は41.2%。季節性はあるが順調に上がっている。

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サブスクリプションの3か月ARRも順調に伸びている。

とはいえ、今期のクリエイターサポート事業の売上高が63億円の予想に対して、直近のARRは18.3億円なので、セグメント売上高に占めるサブスクリプションの割合はまだまだ低い。

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UI/UXの4Qは、売上高-26%の減収、セグメント利益0.8億円の赤字だった。

カンデラ社ののれんを償却したことで赤字は減ってはいるものの、依然として損失が続く。2021年通期では約5億円の赤字。今期も2.2億円の赤字予想。

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2022年の会社予想は、前年比で売上高+12%の増収、経常利益+33%の増益。

うちクリエイターサポートは、売上高+9.6%の増収、営業利益+21.7%の増益となっている。

多少のブレはあるものの、おおむね中計の数字に沿った予想が出てきた。

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株価はピークの1,279円から694円まで大幅に下がっている。現在の時価総額は239億円。

今期の予想PERは17.6倍。赤字のUI/UXを除いてクリエイターサポートの営業利益×0.7で計算すると15.8倍となる(この会社は営業外の損益もセグメント間の調整も少ない)。

PERは一時に比べてずいぶん低くなったものの、クリエイターサポートの売上高成長率も1桁に落ちているため、PEGで見ると割安感が増したとは言えないかもれない。

今後はクリエイターサポートが元の高成長に戻るかどうかが問題になりそう。

単に新型コロナ特需の反落だとすれば時間が経てば戻るかもしれない。2018年と2019年は前年比+25%の売上高成長率だった。ただ、クリップスタジオの市場規模がどれくらいあるのか見当がつかないのでいまいち確信が持てない。

あるいはサブスクへの移行で売上高が下押しされているという話もある。ただ、プロ版に関してはダウンロード価格5,000円に対してサブスク月額480円なのでそれほどマイナスの影響があるようには見えない。EX版だとダウンロード価格23,000円に対してサブスク月額980円なのでマイナスになりそうだが。

 

LTHM ライベント 2021年4Q決算

リチウム準大手。

アルゼンチンのオンブレ・ムエルト塩湖から炭酸リチウムを生産し、アメリカや中国で水酸化リチウムに加工している。

生産コストは低く、会社によると炭酸リチウムでは下位1/4、水酸化リチウムでは下位1/2に入るそうだ。

戦略的にハイエンドの水酸化リチウムに注力しており、2020年の販売の55%が水酸化リチウムになっている(炭酸リチウム&塩化リチウムは4%)。

アルゼンチンの拡張により、今後は炭酸リチウムの販売も増やしていく方針。

 

4Qの業績は、前年比で売上高+50%の増収、営業利益-3.9Mドル→18.8Mドルの黒字転換、調整EBITDA5.6Mドル→27.5Mドルの大幅増益だった。

業績好調の理由は、3Qまでに固定価格の年間契約数量のほとんどを販売していたため4Qは高い価格での販売が可能になったことや、価格の暴騰している炭酸リチウムの販売が増えたため(3Qに中国の水酸化リチウムプラントが電力不足で操業停止したため原料の炭酸リチウムが余っていた)。

 

四半期の売上高、営業利益、調整EBITDAの推移が下のグラフになる。

業績は2020年3Qを底に回復が続いているが、調整EBITDAは以前のピークの47.7Mドルに比べるとまだかなり下にある。

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2022年のガイダンスは、売上高540~600Mドル(前年比+28~43%)、調整EBITDA160~200Mドル(前年比+130~188%)。

調整EBITDAはガイダンスの上限で2021年の3倍近い数字となる。2018年のピークの182.9Mドルを超えることも期待できそう。

 

今期の販売数量は横ばいとなる。新たなキャパシティの追加がない。

一方で販売価格は大幅な上昇を見込む。2022年は販売量のすべてが2021年末の契約価格、もしくは市場価格で販売される。

内訳は、水酸化リチウムの3/4が複数年の固定価格契約で、前年比+50%の値上がりとなる。水酸化リチウムの残りと炭酸リチウムが市場価格で、前年比2~3倍の値上がりになると予想している。

 

ベッセマーシティ(5Ktの水酸化リチウム)とアルゼンチンのフェーズ1&2(それぞれ10Ktの炭酸リチウム)の拡張計画についてはほとんど変更ないが、アルゼンチンのフェーズ2がやや早まったようだ。

ベッセマーシティは2022年3Qまでに商業生産開始を見込む。

アルゼンチンのフェーズ1は2023年の1Qまでに、フェーズ2は2023年3Qまでに商業生産開始という目標。

これらに加えて、2025年末までにアルゼンチンのキャパシティをさらに2万トン追加することを発表した。完成すると現在の3倍のキャパシティになる。

ネマスカについては進捗が遅れている。会社は2025年までにリチウム化合物を生産することを目指しているようだが、ケベック州政府が50%を持つためライベントには決定権がない(ライベントの持ち分は25%)。

 

2021年の資本支出は119Mドルで、そのうち25Mドルがメンテナンス費用だった。2022年の資本支出は280~320Mドルで、メンテナンス費用は過去と同水準。

2022年の調整営業キャッシュフローは145~185Mドルを見込む。

バランスシートには、現預金が113Mドル、有利子負債が240Mドル。

その他にリボルビング・クレジット・ファシリティを400Mドル確保している。

財務的には余裕があるわけではないが、資金調達を行ったことで一息ついた感がある。今後の投資は手持ちのキャッシュ、借入、キャッシュフローで回していくようだ。

 

株価はアルベマールの暴落に巻き込まれて下がっていたが、決算後にやや戻している。現在は22.69ドルで時価総額3.66Bドル。

今期の調整EBITDAは過去最高も更新する可能性があるが、増資によって希薄化が生じているためEPSはピークに届かないと思われる。

2018年の株式数は1.27億株でEPS0.99ドルだったが、現在の株式数は1.62億株(希薄化株式数は1.92億株)に増えている。

調整EBITDAと純利益の比率が変わらないという前提で現在の株式数を使って計算すると、今期の予想PERは27~33倍(希薄化株式数だと31~39倍)となる。

なお、希薄化株式数が多いのは2020年に発行した転換社債のためだと思われる。この転換社債は総額225Mドル、転換価格8.75ドル、転換可能日2025年1月15日以降という条件だが、2023年7月20日以降に株価が転換価格の130%以上であれば償還可能とあるので、現在の株価が維持できればそれほど希薄化が生じないかもしれない(条件については自信がない。下のリンク参照)。

Livent Announces Pricing Of Private Offering Of $225 Million Of Convertible Senior Notes Due 2025 With Net Proceeds Designed To Align With The Provisions Of The International Capital Market Association Green Bond Principles 2018

 

ライベントは割安ではないが、アルベマールに比べるとやや割高感が少ない気がする。

メインとなる水酸化リチウムの販売の大部分が複数年契約なので、2023年も価格の大幅上昇は期待できなさそうだが、2023年にはキャパシティが倍増するので、これがフル稼働すればバリュエーションも半分に下がる。

さらに追加の2万トンが稼働すれば割安になるが、これは2027年くらいになりそう。

 

ALB アルベマール 2021年4Q決算

リチウム、臭素、触媒を生産する会社。

リチウムでは最大手の一角。チリのアタカマ塩湖、オーストラリアのグリーンブッシュ鉱山(持分49%)、同じくオーストラリアのウォジナ鉱山(持分60%)を持つ。アタカマとグリーンブッシュはかん水と鉱石でベストの資産とされる。

臭素は難燃剤が主な用途。他にもエレクトロニクス、自動車、建設、アプライアンスなど幅広い産業に使用されるGDP比例のビジネス。アルベマールはこの業界のマーケットリーダーとのこと。コスト競争力のある死海とアーカンソー州で事業を行っている。

触媒はガソリンなどの精製やディーゼルや石油原料の汚染物質を取り除くのに使われる。この部門は新型コロナによる移動制限が逆風になっている。

 

4Qの業績は前年比で売上高+2%の増収、調整EBITDA+3%の増益となった。営業利益は一時費用(Loss  on sale of business)により赤字。

売却したファインケミストリーサービスを除くと、売上高は+11%の増収、調整EBITDAは+12%の増益とのこと。

売上高 894Mドル(前年比+2%)

営業利益 -31Mドル(前年比-125%)

調整EBITDA 228Mドル(前年比+3%)

調整希薄化EPS 1.01ドル。

 

四半期の売上高と調整EBITDAの推移が下のグラフになる。新型コロナで落ち込んだ後の回復は鈍い。

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通期の業績は、売却したファインケミストリーサービスを除くと、売上高+11%の増収、調整EBITDA+13%の増益だった。調整希薄化EPSは4.04ドル。

年ベースの売上高、調整EBITDA、営業利益の推移が下のグラフになる。

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各セグメントの調整EBITDAの推移が下のグラフ。

リチウムは第一次ブームの2017年~2018年に大きく伸びた後、2019年と2020年に減益となった。ただし、長期・固定価格の販売戦略をとっていたため、同業他社に比べると落ち込みが非常に小さい。2021年は販売数量の増加と価格上昇により盛り返した。

臭素は高い成長率ではないが右肩上がりに伸びている。触媒は新型コロナの影響で業績が大きく落ち込んでいる。

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なお、現在のところ臭素や触媒はリチウムと並ぶ柱になっているが、将来的にはリチウムセグメントが利益の大部分を占めることになる。

インベスターデイのプレゼン資料によると、2026年の全体の調整EBITDA2.2~2.6Bドルに対して、リチウムは1.7~1.9Bドルという目標になっている。

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2022年のガイダンスは、売上高+30~40%、調整EBITDA+35~55%、調整希薄化EPS5.65~6.65ドル。

インフレと税金の影響から1QのEBITDAが最も高くなるそうだ。

 

続いてセグメントの業績を見てみる。

リチウムの4Qは、前年比で売上高+13%の増収、調整EBITDA+13%の増益だった。売上高の内訳は、価格が+18%、数量が-5%の貢献。

足元で中国のスポット価格が暴騰しているが、アルベマールは長期・固定価格の販売戦略をとっていたため、2021年の業績への影響は小さかった。販売価格が前年比プラスに転じたのも2021年の3Qと遅い。

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2021年の通期の業績は、前年比で売上高+19%の増収、調整EBITDA+22%の増益だった。連続して上方修正されたガイダンスも上回って着地した。

 

2022年の調整EBITDAは、前年比+65~85%の増加というガイダンス。

年間生産量は+20~30%の増加、平均販売価格は+40~45%の上昇を見込む。3Qでは販売価格の上昇率は+15~20%と言っていたので大きく上方修正された。

バッテリーグレードの販売契約は、50%がグローバル価格に変動要素を組み込んだ上限・下限付きの契約、10%が中国のスポット価格に連動、残りが固定価格の契約との話。以前より変動部分を増やしている。

 

2021年のベースロード生産量は88Kt。炭酸リチウムと水酸化リチウムが半々。生産拠点は、Silver Peak、Kings Mountain、Xinyu、Chengdu、La Negra I & II。

原材料のほとんどはアタカマとグリーンブッシュからで、チリの La Negra で炭酸リチウムを生産、グリーンブッシュから採掘した鉱石を中国のプラントに運び水酸化リチウムを生産している。

拡張計画は以下の通り。

・La NegraⅢ&Ⅳ (年間40Kt)は現在は試運転・品質確認のプロセス。2Qに最初の売上を計上する。3Qのアナウンスによると2022年末のランレートは30Ktとのこと。

・Kemerton(年間50Kt、持ち分60%)はトレイン1が昨年の11月に完了した。現在はトレイン2の建設に注力している。トレイン1は2022年の下半期に最初の売上を計上する。トレイン2の建設完了は2022年下半期で、最初の売上は2023年となる。

・Qinzhou の買収は今年の上半期に完了する予定。キャパシティは25Ktで50Ktへの拡張も見込める。プラントは現在稼働中で、スポジュメン精鉱のトーリングを始めている。売上高は下半期から計上される見込み。

・中国(MeishanとZhangjiagang)で2つの水酸化リチウムプラントを建設する。キャパシティはそれぞれ50Kt。2022年に建設開始して、2024年末までの完成を目指す。

・ウォジナの再稼働は順調に進んでおり、2022年2Qに生産が開始される予定。全体のキャパシティはスポジュメン精鉱750Ktだが今回は250Ktを稼働させる。鉱石のみを販売する計画はなく、あくまでも製品化して販売していくと3Qに言っていた。

 

リチウム市場の見通しについては、従来の予測を上方修正した。新たな予想では2025年に1.5Mtを見込む。前提となるEVの販売台数は2,270万台でシェア22%。2021年は630万台で8.3%とのこと。

 

チリの新政権に対するコメントも少しあった。リチウムの既存事業やロイヤルティが全面的に変わるとは考えていないとのこと。

アルベマールやSQMはロイヤルティやリース契約を改定して日が浅い。アルベマールのリース契約は2043年まで残っている。楽観的に見れば影響は限定的にも思えるが、新政権次第でリスクは残りそう。

 

臭素セグメント。

4Qは前年比で売上高+10%増収、調整EBITDA-1%の減益だった。通期では売上高+17%の増収、調整EBITDA+11%の増益。

2022年も経済の回復と堅調な難燃剤需要を背景に、前年比+5%~10%の増加を見込む。

四半期の売上高と調整EBITDAの推移が下のグラフ。非常に安定した事業だと分かる。

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触媒セグメントの4Qは前年比で売上高+2%の増収、調整EBITDA+24%の増益だった。通期では売上高-5%の減収、調整EBITDA-18%の減益。ガイダンスをやや上振れて着地したが、業績自体は依然として低空飛行が続いている。

2022年は調整EBITDA+5~15%の増加を見込む。

触媒の販売数量がパンデミック前に戻るのは2022年後半~2023年になるそうだ。2022年も改善はあっても厳しい状況が続きそう。

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決算の数字はコンセンサスを上回ったが、ガイダンスに失望されたためか株価は急落した。現在は190.76ドルで、時価総額22.3Bドルとなっている。

株価の急落については、ちょっと投資家の期待が高すぎたのかなと思う。

アルベマールは基本的に安定路線の会社で、リチウム価格が暴落したときも業績悪化が限定的だった。反対に上昇局面になった時に業績がそれほど伸びないのは仕方ないと思う。

まあ、過去の業績を見ると、ピークの2018年はキャパシティ65Ktで調整EBITDA530Mドルだったので、今期の生産量110Kt程度(2021年のベースロード生産量88×1.2~1.3倍)で調整EBITDA791~887Mドルはやや少ない気がする。とはいえリチウム価格の高値が続けば、遅かれ早かれ業績に反映されるはず。

 

この会社のより本質的な問題はバリュエーションの高さだと思う。

株価はピークの280ドル超から大幅に下げているものの、今期の予想PERは29~34倍と依然として高い。PER30倍だと Wave2 がフル稼働しても、販売価格の大きな上昇がない限り割安感は出ないと思う。

Wave3が完成すればキャパシティは2018年の5倍になるのでさすがに割安になるだろうが、下の拡張スケジュールを見ても分かるように、Wave3がフル稼働するのは2027年くらいになる。時間の経過を考えると現在の株価は魅力的とは言えないと思う。

唯一、リチウム市場の好調が続き、アルベマールも過去の高値を大きく超えて販売できるのであれば割安感が出るかもしれない。

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バリュエーションを除けば、リチウム銘柄の中では業績が非常に安定しているし、保有する資産も一級品で、成長戦略もしっかりしており、製品のバランスもいい。この業界ではダントツの優良株だと思う。

 

3186 ネクステージ 2021年11月期4Q決算

中古車販売の大手。中古車買取や輸入車ディーラーも手掛けている。

 

2021年11月期は大幅な増収増益で着地した。

売上高 2,912億円(前年比+21%)

経常利益 133億円(前年比+105%)

純利益 96億円(前年比+103%)

 

4Q単体も2~3割の増収増益と堅調な業績だった。

売上高 791億円(前年比+27%)

経常利益 37億円(前年比+25%)

純利益 27億円(前年比+24%)

 

今期の予想も高い成長率となっている。

売上高 3,500億円(前年比+20%)

経常利益 172億円(前年比+29%)

純利益 120億円(前年比+24%)

 

四半期の売上高の推移が下のグラフとなる。

2020年に1年ほどの停滞があったが、今年の2Qから再び成長軌道に戻っている。

3Qが2Q比で減収だったのは、オートオークション滞留出品台数の減少が主要因とのこと。4Qは再び大きく伸びて過去最高の売上高となった。

前々年からの4Qの年率換算成長率は+17%となる。出店数と比べるとやや物足りない気はするが、ある程度の成長率まで回復している。

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経常利益は前年3Qに大きく切り上がった利益水準を維持している。4Qは売上高の伸びもあり最高益を更新した。

4Qの経常利益率は4.8%。前年3Qの5.6%には及ばないものの高水準を維持している。

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2021年11月期の小売販売台数は93,258台。前年比+14%の増加。期首目標の96,300台は下回った。4Q単体だと24,497台で前年比+26%と堅調。

買取台数は79,929台。前年比+58%と大きく伸びた。

なお、今回の決算では部門別の売上高と営業利益が開示されている。

買取店は、売上高+44%、営業利益+53%と大きく伸びている。全体に占める買取店の比率は、売上高が23%、営業利益が26%。

買取店が好調な一方で、販売店の売上高の伸びは前年比+12%とやや低い。ただ、今期の小売販売台数は114,000台と前年比+22%の予想。

その他の整備やディーラーは利益への貢献がない。

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利益率と経費の推移を見ると、祖利益率は高水準を維持しており、販管費は横ばいに抑えられている。

小売車両台当たり収益は4Qも改善が続いている。商品リードタイムを短縮することで台当たり利益改善とのこと。

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店舗数は144店舗から182店舗に増加した。

期首の予想に比べると、中型店+1、UNIVERSE(輸入車)+1、買取店+7となっている。買取店に力を入れていることが分かる。

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今期の出店も+56店舗と強気。

特に総合店の+22店舗というのはすごい。今期末が41店舗(40店舗+UNIVERSEからの変更)なので、前年比で1.5倍になる出店数だ。

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決算と同時に発表した中期経営計画も強気な内容となっている。

今後3年間で売上高が+72%、経常利益や純利益は2倍以上という目標。

ただ、これほど積極的な計画だと出店資金について不安になる。手元の現預金は227億円あるが、有利子負債が508億円と大きい。以前見た記事によると、総合店の出店には在庫を合わせて8億円必要とのことだった。すると今期の総合店+22店舗だけで176億円必要になる計算。どこかで増資が行われそう。

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決算後に株価は大きく上げた。今期予想と中期経営計画の数字が評価されたのだと思う。

今期の予想PERは約19倍。成長率からすると違和感のないバリュエーションだと思う。

 

2021年の感想と2022年の投資スタンス

すでに1か月も過ぎてしまったが、昨年の感想と今年の投資方針を書いておく。

 

〇 昨年の感想

2021年のリターンはほどほどだった。

良かったのはリチウム株と日本の主力株で、特にリチウム株は大当たりした。

ただ、ひとつのセクターでポートフォリオの2割を超えないようにしていたことや、投機的なジュニア銘柄(すさまじい上昇だった)を避けていたため、リチウム株だけで全体のリターンを大幅に上げることはできなかった。

日本株はアートスパークやネクステージなど比較的大きく持っていた会社が上げてくれた。主力株の当たり外れは運次第なので、去年は運が良かったと思う。

 

一方でリターンの足を引っ張ったのが、キャッシュポジション、短期取引、中国ADR株だった。

キャッシュポジションは年間を通して3割くらいあったと思う。アメリカ株のバリュエーションが高く全力で買う気になれないことや、2~3年くらい前からリスク回避気味の運用を心掛けているため一定のキャッシュを持ち続けている。

短期取引は指数が下げたら売っていく行動を繰り返している。リーマンショック以降に株価が半値になるような本格的な暴落は起きていないので、この取引は長年にわたってかなり成績の足を引っ張っている。ただ、フルポジションで下げ相場を乗り切るのは自分には無理だと分かっているので、平常時に株のポジションを保つためのコストと割り切っている。

中国ADRは厳しい1年だった。持っていた株はほとんど暴落したし、特にヨウダオでは1日で株価が半減するという被害を受けた。ただ、もともと中国リスクは分かっていたことだし、長年中国株を持っていてあまり儲かっていないことから、中国ADRはポートフォリオの1割未満にとどめていた。現在は、バイドゥ、ビリビリ、アリババを少し残しているほか、H株のガンフォンリチウムのみ持っている。

中国株には2005年くらいから投資してるがあまり良い記憶がない。全体としてはGDPのように伸びないし、国有企業は株価に関心がないようだし、小型株は不正会計で突如取引停止になったりする。情報不足もあって、持っている会社の業績変動の理由もよく分からないことが多い。

唯一有望に思えたインターネット株も(政府の規制の前でも)競争の激しさから思うような成果は出なかった。ウェイボー、YY、MOMOなどは高成長・低PERでお買い得に見えたが、その後の業績が悪化したことで株価も低迷している。検索で絶対的な地位にあったバイドゥですら失速してしまった。業績も株価も一貫して良かったのはテンセントくらいではないだろうか。中国株は本当に難しいと感じる。

 

〇 今年の投資スタンス

年初から厳しい相場になっており、1月はかなりひどくやられてしまった。ただ、いまのところは調整+セクターローテーションの範囲かなと思っている。

グロース株や小型株の下げはきついものの、主要インデックスは調整レベルの下げだし、バリュー株は比較的持ちこたえている。

もちろんこの先に全面的な暴落が待っているかもしれないが、景気が大きく崩れない限りその可能性は低いのではないかと見ている。

 

景気については大した知識もないので適当な意見だが、今年も普通に拡大すると思っている。基本的に景気は拡大するものなので、よほど確信があるとき以外はリセッションに賭けるのは分が悪いと思う。

ましてや現在は新型コロナの落ち込みからの回復段階で勢いがある。

雇用はパンデミック前の水準まで戻っていない。

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Calculated Risk: Question #3 for 2022: What will the unemployment rate be in December 2022?

 

景気循環の先行指標である住宅市場も在庫が低水準なことから大きく崩れることはなさそう。

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Question #10 for 2022: Will inventory increase as the pandemic subsides, or will inventory decrease further in 2022?

 

アメリカ経済を主導する個人消費は、足元のインフレにより実質所得が下押しされているが、コロナ禍で積み上がった過剰貯蓄や住宅価格の上昇に伴う資産効果の下支えが期待できる。

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米国経済展望2022年1月

 

インフレについてはいまの水準が続くなら警戒する必要がありそう。厳しいリセッションにつながりかねないし、 インフレ時の株式リターンは悪いというデータがある。

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Global Investment Returns Yearbook 2012

 

ただ、12月のCPIは前年比+7%だが、食品とエネルギーを除いたコアは+5.5%、そこから自動車を除くと+3.6%になり、特殊要因を除くと異常なほど高いインフレになっているわけではない。エネルギーはずっと上がり続けるものではないだろうし、中古車価格もサプライチェーンの混乱が落ち着けば下がるという論調が多い。

三井住友信託銀行調査月報のレポートでは、コアCPIの前年比上昇率は今年1Qにピークを迎えて、その後は年末の3%まで低下することを予想している。

ただし、中古車価格と並んでコア指数を押し上げている家賃については、住宅価格の値上がりを背景に2022年末ごろまで上昇ペースが加速すると見込んでいる(家賃は住宅価格に1年半程度遅行する傾向があるそうだ)。

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住宅価格だが、ケースシラー指数やモーゲージ金利の推移を見る限りピークを超えたようにも見える。

・ケースシラー指数

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・30年物固定金利

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インフレの原因としてはもうひとつ労働力不足が挙げられている。失業率の低下に比べて労働参加率の戻りが鈍いのが問題視されているようだ。新型コロナの影響で早期リタイアした高齢者が労働市場に帰ってこないのではないかという話。

ただ、下の記事に掲載されている年齢別の Missing Workers (失業率に反映されない求職をしていない人)の2019年12月と2021年12月の比較を見ると、20代や40代もかなり多いため労働力が戻ってくる余地は大きそう。

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Calculated Risk: Question #4 for 2022: Will the overall participation rate increase to pre-pandemic levels (63.4% in February 2020)?

 

そんなわけでインフレについては中長期的なものは別として、短期的には徐々に落ち着いていくのではと思える。

仮に予想より高めの3〜4%で止まったとしても、その水準であればバリュエーションを壊すほどではなさそう。

・インフレ率とPERの散布図

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RELATIONSHIP OF INFLATION & PRICE/EARNINGS RATIOS (1900 - 2021)

 

インフレと共に話題になっている金利については、それほど気にする必要はないと思っている。もともとの出発点が超低金利なので、多少の上昇で経済や市場が壊れるとは思えない。

もちろん利上げを過小評価することはできない。Global Investment Returns Yearbook 2016 によると、利上げ期間のリターンは平均よりかなり悪いという結果になっている(マイナスリターンではない)。世界的(先進国中心の21か国)に見ても利下げ期間の方が利上げ期間よりもリターンが圧倒的に良いそうだ。

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ただし、2000年以降は政策金利と株価の関係が明確ではなくなっており、2004年~2007年、2015年~2019年の2つの利上げ期間でも株価は上昇しているし、逆に2000年と2007年から始まる利下げによって株価の下落を止めることもできなかった。FRBの政策金利も重要ではあるが、絶対的な基準にはならなさそう。

 

アメリカ外の世界経済に関しては、パンデミックの落ち着きや中国の金融緩和の開始といったプラス材料がある。中国の不動産バブルといったマイナス材料もあるが。

 

景気以外にもうひとつ心配なのはアメリカ株のバリュエーションの高さだろう。CAPEレシオはITバブルに次ぐ水準だし、予想PERでもやや割高感がある。

ただ、CAPEレシオに関してはバリュエーションを過大評価している面もあると思う。

CAPEレシオが最も役に立つのは、業績が景気に左右され、利益成長のない会社だと思う。一方で景気にかかわらず業績が右肩上がりに伸びていく会社に関してはどうしてもCAPEレシオが高く出てしまう。

現代は昔に比べて景気後退の数が少なくなっているし、主力株も景気の影響を受けにくいIT銘柄になっているし、株主還元が配当から自社株買いにシフトしているので(自社株買いはEPS成長率が上がる)、何十年も前の数字と単純に比較することはできないと思う。

GAFAMの22年の予想PERを見ると、アップル29倍、マイクロソフト33倍、アマゾン60倍、アルファベット24倍、メタプラットフォーム22倍となっている。アップルやマイクロソフトは割高感を感じるがバブルとまでは言えないと思うし、アルファベットやメタプラットフォームは妥当か割安な数字だと思う。

 

アメリカ以外の地域になると、予想PERは過去の平均レンジからそれほど外れておらず割高感はない。

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Guide to the Markets | J.P.モルガン・アセット・マネジメント

 

インフレの過熱、利上げ開始、アメリカ株のバリュエーションの高さ、中国の不動産バブルといった話はどれも無視できない大きなリスクだと思う。ただ、経済や株は右肩上がりという基本に反して暴落に賭けるのは現状では分が悪いと考えている。

今年も去年並みに株のポジションを保つのを基本にして、ナスダックにつられて売り込まれた日本の割安成長株の反発に期待しようと思う。

 

AKE.AX オールケムリミテッド 2021年4Qアクティビティレポート

オロコブレとギャラクシー・リソーシズの合併によって誕生した会社。リチウム準大手。

アルゼンチンの Olaroz から炭酸リチウムを、オーストラリアの Mt Cattlin からスポジュメン精鉱を生産している。

この他にアルゼンチンの Sal de Vida、カナダの James Bay を開発している。

 

2021年4Q(6月決算なので決算期の基準では2Q)のグループ売上高は107Mドル、キャッシュコスト控除後の利益(Group gross operationg margin)は70Mドルを超えたそうだ。

 

保有するプロジェクトの稼働・開発状況は以下のとおり。

 

・Mt Cattlin

2021年4Qの数字は以下の通り。

スポジュメン精鉱の生産量は52,225トン。2021年の年間生産量は230,065トンとなり、ガイダンスの220,000トンを上回った。

販売量は38,071トン。生産量に比べて販売量が少ないが、2022年1月に2020年に生産した23,000トンを出荷する予定。

販売価格は1,595ドル/トン。3Qの796ドルから大幅に上昇している。

キャッシュコストは324ドル/トン。

売上高60.7Mドル。

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2022年上半期の生産量は90,000トンとペースが落ちる見込み。長期的にもそれくらいのペースで推移するとのこと。

販売価格はさらに上がり、2022年1Qは2,500ドルを見込んでいる。スポジュメン精鉱の販売価格は長期契約の顧客と出荷単位で交渉しているそうだ。

なお、Mt Cattlin は資源量が少ない鉱山だが、鉱山寿命を延ばすための拡張採掘プログラムを開始するとアナウンスがあった。

 

・Olaroz

2021年4Qの数字は以下の通り。

炭酸リチウムの生産量は3,644トン。電池グレードは51%。

販売量は3,293トン。電池グレードは65%。

平均販売価格は12,491ドル/トン。

キャッシュコストは4,336ドル/トン。

売上高は41.1Mドル。

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生産量と販売価格の推移は下のグラフの通り。

販売価格は底値の3,102ドルから大幅に上昇している。2022年上半期はさらに値上がりして約20,000ドルになる見込み。

会社によると2021年の販売契約は、3分の1がスポット価格に連動、3分の1が年間固定価格、3分の1が四半期ごとの調整だった。2022年には年間固定価格の分も隔月調整となり、完全に変動価格にシフトする。

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2021年の年間生産量は約13,000トンで、依然としてネームプレートキャパシティの17,500トンを下回っている。

今後もステージ2が立ち上がり、ステージ1のボトルネック解消の投資を行うまで同じ水準が続くそうだ。現在の生産設備でバッテリーグレード17,500トンを生産するのは難しいようだ。

 

ステージ2プロジェクトの建設は68%が完了している。最初の生産は2022年下半期の予定。

なお、COVID19による遅れもあり、資本支出は10~15%増加して365~380Mドルになる見込み。増加分はオーバーランに使用できる保証金から充てられる。

楢葉の水酸化リチウムプラントの建設はほぼ完了した。2022年の前半に稼働する予定。

 

・Sal de Vida

現在はパイロット活動とインフラや初期作業の段階。

最初の生産量10,700トンに対する環境認可を取得し、ロイヤリティ契約(純売上高の3.5%)も締結した。

2023年の下半期に試運転と初生産を行う予定。

 

・James Bay

フィージビリティスタディを発表した。

スポジュメン精鉱の年間生産量321,000トン、販売価格約1,000ドル/トンで、税引前のNPVが1.42Bドル。鉱山寿命は19年。

2022年3Qに建設開始で、2024年上半期に試運転を行う予定。

 

オールケムのレポートで目を引くのは Mt Cattlin の収益力の高さだと思う。

Mt Cattlin と Olaroz をざっくり比較したのが下の表だが、Mt Cattlin の方が売上・(キャッシュコスト控除後の)利益ともに大きい。

※販売量は今後に予想される数字、販売価格は翌四半期のガイダンス価格、キャッシュコストは過去1年の平均値を使用した。

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Mt Cattlin の年間生産量は炭酸リチウム換算で22,500トンと Olaroz よりも大きい。販売先や販売契約の違いもあり単純比較はできない。

とはいえ、Olaroz が世界でも数少ない塩湖プロジェクトで、開発に多額の資金や時間がかかっているのに対して、Mt Cattlin は資源量の小さな鉱山で、開発費用も少なく、生産開始までの時間も大幅に短かった。さらには下流のリチウム化合物への加工も行っていない。両者を比較してMt Cattlin の方が収益力があるのはかなり違和感がある。

鉱石の生産がこれほど儲かるのであれば、今後はどんどん新規鉱山の開発が進むと思う。

2022年はピルバラの増産、Wodgina の再稼働、シグマリチウムとコアリチウムの新規稼働くらいだが、今年に入って SQM/Wesfamers の Mt Holland やガンフォン/Firefinch の Goulamina の最終投資決断(FID)がされている。鉱石プロジェクトは建設から約1年で生産開始できることから、2024年や2025年にはかなりの量の鉱石が供給されることになりそう。