AKE.AX オールケムリミテッド 2021年4Qアクティビティレポート

オロコブレとギャラクシー・リソーシズの合併によって誕生した会社。リチウム準大手。

アルゼンチンの Olaroz から炭酸リチウムを、オーストラリアの Mt Cattlin からスポジュメン精鉱を生産している。

この他にアルゼンチンの Sal de Vida、カナダの James Bay を開発している。

 

2021年4Q(6月決算なので決算期の基準では2Q)のグループ売上高は107Mドル、キャッシュコスト控除後の利益(Group gross operationg margin)は70Mドルを超えたそうだ。

 

保有するプロジェクトの稼働・開発状況は以下のとおり。

 

・Mt Cattlin

2021年4Qの数字は以下の通り。

スポジュメン精鉱の生産量は52,225トン。2021年の年間生産量は230,065トンとなり、ガイダンスの220,000トンを上回った。

販売量は38,071トン。生産量に比べて販売量が少ないが、2022年1月に2020年に生産した23,000トンを出荷する予定。

販売価格は1,595ドル/トン。3Qの796ドルから大幅に上昇している。

キャッシュコストは324ドル/トン。

売上高60.7Mドル。

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2022年上半期の生産量は90,000トンとペースが落ちる見込み。長期的にもそれくらいのペースで推移するとのこと。

販売価格はさらに上がり、2022年1Qは2,500ドルを見込んでいる。スポジュメン精鉱の販売価格は長期契約の顧客と出荷単位で交渉しているそうだ。

なお、Mt Cattlin は資源量が少ない鉱山だが、鉱山寿命を延ばすための拡張採掘プログラムを開始するとアナウンスがあった。

 

・Olaroz

2021年4Qの数字は以下の通り。

炭酸リチウムの生産量は3,644トン。電池グレードは51%。

販売量は3,293トン。電池グレードは65%。

平均販売価格は12,491ドル/トン。

キャッシュコストは4,336ドル/トン。

売上高は41.1Mドル。

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生産量と販売価格の推移は下のグラフの通り。

販売価格は底値の3,102ドルから大幅に上昇している。2022年上半期はさらに値上がりして約20,000ドルになる見込み。

会社によると2021年の販売契約は、3分の1がスポット価格に連動、3分の1が年間固定価格、3分の1が四半期ごとの調整だった。2022年には年間固定価格の分も隔月調整となり、完全に変動価格にシフトする。

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2021年の年間生産量は約13,000トンで、依然としてネームプレートキャパシティの17,500トンを下回っている。

今後もステージ2が立ち上がり、ステージ1のボトルネック解消の投資を行うまで同じ水準が続くそうだ。現在の生産設備でバッテリーグレード17,500トンを生産するのは難しいようだ。

 

ステージ2プロジェクトの建設は68%が完了している。最初の生産は2022年下半期の予定。

なお、COVID19による遅れもあり、資本支出は10~15%増加して365~380Mドルになる見込み。増加分はオーバーランに使用できる保証金から充てられる。

楢葉の水酸化リチウムプラントの建設はほぼ完了した。2022年の前半に稼働する予定。

 

・Sal de Vida

現在はパイロット活動とインフラや初期作業の段階。

最初の生産量10,700トンに対する環境認可を取得し、ロイヤリティ契約(純売上高の3.5%)も締結した。

2023年の下半期に試運転と初生産を行う予定。

 

・James Bay

フィージビリティスタディを発表した。

スポジュメン精鉱の年間生産量321,000トン、販売価格約1,000ドル/トンで、税引前のNPVが1.42Bドル。鉱山寿命は19年。

2022年3Qに建設開始で、2024年上半期に試運転を行う予定。

 

オールケムのレポートで目を引くのは Mt Cattlin の収益力の高さだと思う。

Mt Cattlin と Olaroz をざっくり比較したのが下の表だが、Mt Cattlin の方が売上・(キャッシュコスト控除後の)利益ともに大きい。

※販売量は今後に予想される数字、販売価格は翌四半期のガイダンス価格、キャッシュコストは過去1年の平均値を使用した。

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Mt Cattlin の年間生産量は炭酸リチウム換算で22,500トンと Olaroz よりも大きい。販売先や販売契約の違いもあり単純比較はできない。

とはいえ、Olaroz が世界でも数少ない塩湖プロジェクトで、開発に多額の資金や時間がかかっているのに対して、Mt Cattlin は資源量の小さな鉱山で、開発費用も少なく、生産開始までの時間も大幅に短かった。さらには下流のリチウム化合物への加工も行っていない。両者を比較してMt Cattlin の方が収益力があるのはかなり違和感がある。

鉱石の生産がこれほど儲かるのであれば、今後はどんどん新規鉱山の開発が進むと思う。

2022年はピルバラの増産、Wodgina の再稼働、シグマリチウムとコアリチウムの新規稼働くらいだが、今年に入って SQM/Wesfamers の Mt Holland やガンフォン/Firefinch の Goulamina の最終投資決断(FID)がされている。鉱石プロジェクトは建設から約1年で生産開始できることから、2024年や2025年にはかなりの量の鉱石が供給されることになりそう。