LTHM ライベント 2021年4Q決算

リチウム準大手。

アルゼンチンのオンブレ・ムエルト塩湖から炭酸リチウムを生産し、アメリカや中国で水酸化リチウムに加工している。

生産コストは低く、会社によると炭酸リチウムでは下位1/4、水酸化リチウムでは下位1/2に入るそうだ。

戦略的にハイエンドの水酸化リチウムに注力しており、2020年の販売の55%が水酸化リチウムになっている(炭酸リチウム&塩化リチウムは4%)。

アルゼンチンの拡張により、今後は炭酸リチウムの販売も増やしていく方針。

 

4Qの業績は、前年比で売上高+50%の増収、営業利益-3.9Mドル→18.8Mドルの黒字転換、調整EBITDA5.6Mドル→27.5Mドルの大幅増益だった。

業績好調の理由は、3Qまでに固定価格の年間契約数量のほとんどを販売していたため4Qは高い価格での販売が可能になったことや、価格の暴騰している炭酸リチウムの販売が増えたため(3Qに中国の水酸化リチウムプラントが電力不足で操業停止したため原料の炭酸リチウムが余っていた)。

 

四半期の売上高、営業利益、調整EBITDAの推移が下のグラフになる。

業績は2020年3Qを底に回復が続いているが、調整EBITDAは以前のピークの47.7Mドルに比べるとまだかなり下にある。

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2022年のガイダンスは、売上高540~600Mドル(前年比+28~43%)、調整EBITDA160~200Mドル(前年比+130~188%)。

調整EBITDAはガイダンスの上限で2021年の3倍近い数字となる。2018年のピークの182.9Mドルを超えることも期待できそう。

 

今期の販売数量は横ばいとなる。新たなキャパシティの追加がない。

一方で販売価格は大幅な上昇を見込む。2022年は販売量のすべてが2021年末の契約価格、もしくは市場価格で販売される。

内訳は、水酸化リチウムの3/4が複数年の固定価格契約で、前年比+50%の値上がりとなる。水酸化リチウムの残りと炭酸リチウムが市場価格で、前年比2~3倍の値上がりになると予想している。

 

ベッセマーシティ(5Ktの水酸化リチウム)とアルゼンチンのフェーズ1&2(それぞれ10Ktの炭酸リチウム)の拡張計画についてはほとんど変更ないが、アルゼンチンのフェーズ2がやや早まったようだ。

ベッセマーシティは2022年3Qまでに商業生産開始を見込む。

アルゼンチンのフェーズ1は2023年の1Qまでに、フェーズ2は2023年3Qまでに商業生産開始という目標。

これらに加えて、2025年末までにアルゼンチンのキャパシティをさらに2万トン追加することを発表した。完成すると現在の3倍のキャパシティになる。

ネマスカについては進捗が遅れている。会社は2025年までにリチウム化合物を生産することを目指しているようだが、ケベック州政府が50%を持つためライベントには決定権がない(ライベントの持ち分は25%)。

 

2021年の資本支出は119Mドルで、そのうち25Mドルがメンテナンス費用だった。2022年の資本支出は280~320Mドルで、メンテナンス費用は過去と同水準。

2022年の調整営業キャッシュフローは145~185Mドルを見込む。

バランスシートには、現預金が113Mドル、有利子負債が240Mドル。

その他にリボルビング・クレジット・ファシリティを400Mドル確保している。

財務的には余裕があるわけではないが、資金調達を行ったことで一息ついた感がある。今後の投資は手持ちのキャッシュ、借入、キャッシュフローで回していくようだ。

 

株価はアルベマールの暴落に巻き込まれて下がっていたが、決算後にやや戻している。現在は22.69ドルで時価総額3.66Bドル。

今期の調整EBITDAは過去最高も更新する可能性があるが、増資によって希薄化が生じているためEPSはピークに届かないと思われる。

2018年の株式数は1.27億株でEPS0.99ドルだったが、現在の株式数は1.62億株(希薄化株式数は1.92億株)に増えている。

調整EBITDAと純利益の比率が変わらないという前提で現在の株式数を使って計算すると、今期の予想PERは27~33倍(希薄化株式数だと31~39倍)となる。

なお、希薄化株式数が多いのは2020年に発行した転換社債のためだと思われる。この転換社債は総額225Mドル、転換価格8.75ドル、転換可能日2025年1月15日以降という条件だが、2023年7月20日以降に株価が転換価格の130%以上であれば償還可能とあるので、現在の株価が維持できればそれほど希薄化が生じないかもしれない(条件については自信がない。下のリンク参照)。

Livent Announces Pricing Of Private Offering Of $225 Million Of Convertible Senior Notes Due 2025 With Net Proceeds Designed To Align With The Provisions Of The International Capital Market Association Green Bond Principles 2018

 

ライベントは割安ではないが、アルベマールに比べるとやや割高感が少ない気がする。

メインとなる水酸化リチウムの販売の大部分が複数年契約なので、2023年も価格の大幅上昇は期待できなさそうだが、2023年にはキャパシティが倍増するので、これがフル稼働すればバリュエーションも半分に下がる。

さらに追加の2万トンが稼働すれば割安になるが、これは2027年くらいになりそう。