SQM ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ 2020年1Q決算

チリの化学メーカー。

チリ北部のアタカマ砂漠からチリ硝石を、アタカマ湖からリチウムやカリウムを採取している。

チリ硝石からは硝酸ナトリウムとヨウ素が採れる。この硝酸ナトリウムと塩化カリウムから硝酸カリウムも生産している。

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セグメントはリチウム、特殊肥料、ヨウ素、カリウム、工業化学品の5つに分かれている。

主力が硝酸カリウムなどの特殊肥料で世界シェアは51%となっている。リチウムとヨウ素の世界シェアもそれぞれ15%・34%と高い。この3つに比べるとカリウムと工業化学品の比率はやや低い。

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2009年からのセグメント別の純利益の推移をグラフにした。

特殊肥料は比較的安定しているが、ヨウ素は好不調の波が大きい。カリウムは利益が大きく減ってきている。リチウムを除くと長期の成長はあまり期待できなさそう。ただ、リーマンショック後の2009年でもすべてのセグメントで利益を出しているのは心強い。

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1Qの業績は前年比で売上高-22%、純利益-44%、調整EBITDA-21%だった。

四半期の推移を見ると2018年をピークに業績の悪化が続いている。

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セグメント別の売上高を見るとリチウムが-58%と大幅の減収となり、特殊肥料も-11%の減収だった。ヨウ素は+2%と増収を維持した。

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リチウムは価格・数量ともに下落。価格の下落は予想通りだが、数量は予想以上だったそうだ。中国の需要減が大きい。COVID-19の影響でリチウム需要は前年(312Kt)並みを予想している。

ヨウ素は平均販売価格の値上がりにより1Qの粗利益の大きな割合を占めるようになった。ただ、今年の需要は-6.1%の減少になるそうだ。ヨウ素の需要はX線が最も大きいが、COVID-19の環境下で皆が病院に行くのを避けている。その他、塗料、エレクトロニクス、医薬品なども景気やロックダウンの影響を受ける。

肥料は必要不可欠な製品なので景気の影響は大きくない。ただ、成長率は従来想定の5~6%に届かないだろうとのこと。

 

2019年4Qまでの数字しかないがセグメント純利益の推移。

2016年~2018年にかけて伸びたリチウムが大きく縮小しているのが分かる。

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現金同等物は1Q末で1.4Bドル(ただし4月に250Mドルの社債を支払った)。

BSを見ると借入金は短期が932Mドル、長期が1,712Mドルとなっている。

プレゼンテーション資料の債務返済スケジュールを見ると財務的には問題ないように見える。

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今年の資本支出は以前にアナウンスした450Mドルから350Mドルに減少する。従業員の安全を守るため必要不可欠でない活動を減らしたとのこと。

ただし、これは一時的な遅れでありリチウムの拡張プランは予定通り2021年末に完了する。SQMはリチウムの中長期的なファンダメンタルズに変更はなく、2025年の年間需要800Ktに向けて年率20%で成長すると予想している。

 

株価は低迷が続いており現在は23.22ドル。実績PERは21倍、YahooFinanceの今期EPSを使うと予想PERは20倍となる。SQMはアルベマールに比べても評価が高い。

リチウムに関してはマーケットシェアを取りに行く姿勢を明確にしており、積極的な拡張政策を維持している。今年の生産量も減らすことなく在庫を積み上げていくとのこと。ただ、SQMのトラックレコードは悪い。リチウムの販売数量はブーム前の2015年からほとんど増えていない。

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LTHM ライベント 2020年1Q決算

元FMCのリチウム部門。かつてのビッグ3の一角だが、現在はアルベマール、SQM、ティエンチ、ガンフォンの4社と比べると規模が小さい。

アルゼンチンのオンブレ・ムエルト湖からリチウム化合物を生産しており、炭酸リチウムの生産コストは世界最低クラスとなる。戦略的にハイエンドの水酸化リチウムに注力している。

 

1Qは前年比で売上高-30%、調整EBITDA-66%、営業利益-2.1Mドルの赤字、純利益-1.9Mドルの赤字だった。リチウム市場の悪化を受けて2018年上半期をピークに業績の悪化が続いている。

売上高の減少は販売数量の減少と価格下落が原因。価格下落の方がインパクトは大きくなっている。

また、水酸化リチウムの原料としてサードパーティーから炭酸リチウムを購入していることも利益率の低下につながっている。2020年の上半期に最も大きな影響が出るとのこと。

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バランスシートを見ると現金同等物の11.4Mドルに対して、長期借入金は211.1Mドルとなっている。

会社は流動性確保の観点からすべての設備拡張投資のストップを決定をした。これにより2020年の資本支出を当初予定の半分の115Mドルにカットする。なおライベントはリチウム市場の長期的な展望と拡張計画は維持するとしている。

加えて与信枠(2023年までの期間で400Mドル)のレバレッジ上限をトレイリングEBITDA倍率の3.5倍から6倍に増加させることに合意したほか、新しい条件についても交渉しているそうだ。

 

会社は2020年のガイダンスを取り下げている。

生産量の見通しは炭酸リチウムが前年比でフラット、水酸化リチウムは在庫の4,000トンを販売したのち顧客の需要に応じて生産を調整するとのこと。これによりサードパーティーの炭酸リチウムの購入を最小限に抑える。

なお、新型コロナウイルスの影響でアルゼンチンの生産を2週間ストップしたが、現在は通常の生産状態に戻っているそうだ。

 

ライベントの状況は苦しいと思う。ピュアプレイヤーであるためリチウム市況の悪化がダイレクトに業績に反映されてしまう。アルベマールやSQMのように他のセグメントの利益で穴埋めすることができない。

また、ガンフォンと違って株価が低迷していることから株式市場からの資金調達も行いにくくなっている。

短期借入金がなく赤字も小さいことからすぐに危なくなることはないと思うが、現在の状況が続くと厳しくなりそう。一方でリチウム需要と価格が底打ちするのであればアップサイドは大きいと思う。

 

1772.HK ガンフォンリチウム 2020年1Q決算

上海A株(2460)と香港H株(1772)に重複上場している中国のリチウム大手企業。川下のリチウム資源開発から川上のバッテリー製造やリサイクルまで手掛けている。中国では天斉リチウムと並ぶ2強となる。

 

1Qは前年比で売上高-19%、営業利益-92%、純利益-97%と大幅な減収減益だった。営業キャシュフローもマイナスになっている。

純利益は2017年~2018年の上半期をピークに右肩下がりに落ちている。

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バランスシートを見ると現金同等物2,669M人民元に対して、短期借入金2,112M人民元、長期借入金1,954M人民元、社債768M人民元となっている。フリーキャッシュフローのマイナスから借入金が徐々に増加している。

 

1Qは数字の報告だけで情報が少ない。少し前に2019年のアニュアルレポートも出ていたのでそちらも見てみる。

2019年は前年比で売上高+8%、純利益-68%だった。純利益は2年連続の減益。EPSは0.28人民元。

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セグメントの内訳はリチウム化合物・リチウムメタルが売上高の79.1%、粗利益の88%を占めている。リチウムバッテリーは2018年の7.5%から2019年の11.5%に大きく増加した。会社は全固体電池の開発に注力している。

地域別の売上高は中国本土が65%、海外が35%となっている。ただし粗利益では海外が半分以上を占める。

フリーキャッシュフローは2年連続の大幅マイナス。営業キャッシュフローの669M人民元に対して投資キャッシュフローが-2,822M人民元と大きい。

 

リチウム化合物の生産キャパシティーや生産量は下の表のとおり。

2019年はキャパシティの増加は少なかったが、利用率の向上によりリチウム化合物の生産量は42Kt LCEから54Kt LCEに大きく増えた。

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今後の拡張計画だが、年間生産量25Ktの水酸化リチウムのラインを2020年3Qに稼働させる予定となっている。

さらに2021年にアルゼンチンの Cauchari-Olaroz が生産を開始する計画。ステージ1の生産量は年間25Ktでガンフォンは生産量の75%を購入する。

会社は近い将来に炭酸リチウム・水酸化リチウムの生産量を110Ktまで増やすとしている。

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なお、会社によるとガンフォンは水酸化リチウムの生産で世界シェア2位とのこと。水酸化リチウムの顧客にはLG化学、テスラ、サムスンSDIといった世界的な名前が並ぶ。

水酸化リチウムの2019年の需要は79Ktで、そううちバッテリーが62Ktを占めるそうだ。ガンフォンは2025年までの水酸化リチウムの年間成長率を38.65%と見積もっている。

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ガンフォンの持つ上流権益は下のマップに示されている。

主力の Mt Marion は持分を50%に引き上げた。年間キャパシティはスポジュメン精鉱400Kt。現在はガンフォンが生産量のすべてを購入しているが、2020年以降は購入量が50%に減る。

これを埋めるのがピルバラとアルチュラの Pilgangoora になる。ピルバラからは(フェーズ1のうち)年間160Ktまでの購入、アルチュラからは最低で年間70Ktの購入という契約になっている。なおガンフォンはピルバラに6.86%出資している。

Cauchari-Olaroz は持ち分を50%に引き上げたほかリチウムアメリカズの株式16.7%を保有する。

新たな投資はバカノラリチウムへの25.8%の出資とバカノラの開発する Sonora への22.5%の投資。Sonora はクレイからの生産となるが現状でクレイからリチウム化合物を生産している会社はない。

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株価の方は2019年秋の10香港ドルを割れを底に3倍近くに値上がりしている。他のリチウム会社が低迷する中での独歩高という状況。

原材料のスポジュメン精鉱の価格が下落する一方で、販売価格の高い国際的な顧客を獲得することでマージンの向上が期待されるのかなと思う。ただ、業績は低迷している。

ガンフォンの強みは垂直統合にこだわらないことで無理なくスピーディーに生産能力を拡大しているところかと思う。一方で垂直統合の会社に比べるとコスト競争力では劣るはず。

ガンフォンのドル換算の時価総額は8.2Bドルでアルベマールの6.8BドルやSQMの6.1Bドルを大幅に上回っている。リチウム専業でかつ大手の一角という貴重な会社だがバリュエーションはやや割高感があるように思う。

 

ALB アルベマール 2020年1Q決算

リチウム、臭素、触媒などを生産している化学メーカー。

リチウムでは最大手の一角でチリのアタカマ湖とオーストラリアのグリーンブッシュ鉱山(持分49%)からリチウム化合物を生産している。アタカマ湖とグリーンブッシュ鉱山はかん水と鉱石でベストの資産。

 

1Qは前年比で売上高-11%、営業利益-20%、調整EBITDA-13%、調整希薄化EPS-19%だった。希薄化EPSは1.01ドル。臭素とリチウムの販売が予想より良かったことやコスト削減効果で調整EBITDAはガイダンスを上回った。

セグメント別では、リチウムが売上高-19%、調整EBITDA-32%、臭素が売上高-7%、調整EBITDA+6%、触媒が売上高-18%、調整EBITDA-21%となっている。

 

四半期ごとの売上高の推移が下のグラフ。リチウムは前四半期比で大きく減少している。

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四半期ごとのセグメント別のEBITDAの推移。リチウムと触媒が落ち込んだが臭素は堅調。落ち込んだリチウムと触媒もそれなりの黒字額を維持している。

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リチウムは数量、価格ともに前年比で-10%の下落だった。数量は顧客の過剰在庫のため、価格は4Qにアナウンスした通り1度かぎりの価格譲歩を行ったため(アルベマールは長期契約が基本なので例外的な措置)。

2Qの調整EBITDAは前年比ではマイナスも前四半期比ではわずかなプラスになるとの見通し。売上高の6割を占める電池向けが底堅い。スペシャリティとテクニカルグレードは弱いとのこと。

会社は連続増配(26年)と格付けの維持を優先事項とするため資本支出を削るそうだ。これに伴い最も大きな資本支出である La NegraⅢ&Ⅳ と Kemerton の開発に遅れが出るとのこと。

 

リチウム市場は相変らず厳しい環境が続いており開発計画の停止や延期が相次いでいる。

直近の最も大きなニュースは天斉リチウムがグリーンブッシュ鉱山(51%)と Kwinana の水酸化リチウムプラントの売却を検討しているというものだろう。天斉リチウムは積極的な拡張やSQMへの投資がたたって資金繰りが悪化しているそうだ。

普通に考えればグリーンブッシュ鉱山の49%を保有するアルベマールが買収の筆頭候補となる。アルベマールも関心を持っているというコメントを出している。ただ、アルベマールは昨年にオーストラリアの鉱山 Wodgina を買収しており、これがスポジュメン価格の急落を受けて休鉱となっている。現在の状況でさらなる買収を行えるかは分からない。

 

臭素セグメントは堅調だったが、COVID-19の影響は2Qから始まり下半期も続くそうだ。2Qの調整EBITDAは~-20%との見通し。

臭素の販売は難燃剤(エレクトロニクス、自動車、建設など)が50%程度、続いて油田の採掘向けが10%程度となっている。後者は2021年により悪化するとのこと。

臭素ビジネスは2009年に売上高-30%減、EBITDAマージン16%まで落ち込んだこともあるが、過去20年間で赤字になったことはないそうだ。

 

触媒セグメントの2Qの調整EBITDAは~-50%の下落という見通し。

アルベマールの触媒はガソリン製品を得るためのFCCとディーゼルや石油精製処理のHPCに分かれている。原油価格が落ち込むと通常はFCCが伸びてHPCが落ちる。2008~2009年と2014~2015年はFCCがややアップしたのに対してHPCはそれぞれ-30%と-50%落ちたそうだ。しかし今回は交通量の減少からどちらも落ち込むとのこと。

 

バランスシートを見ると現金同等物553Mドルに対して短期借入金は35Mドル、長期借入金3,105Mドルとなっている。

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債務返済金額は2020年35Mドル、2021年433Mドルに対してキャッシュと融資枠で1.7Bドルを確保しているそうだ。

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アルベマールのここ数年の営業利益は600Mドル程度となっている。長期で見るとリーマンショックの2009年でも黒字を維持している。

財務的には鉄壁ではないが、収益の安定性と債務返済スケジュールの余裕から当面の問題はなさそうに思える。

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2Qのガイダンスは売上高700-775Mドル、調整EBITDA140-190Mドル。中央値の前年比は売上高-17%、調整EBITDA-37%となる。

なお、会社は2020年通期のガイダンスを取り下げている。

 

PERは実績10.6倍、予想(YahooFinanceの予想EPSを使用)14.9倍となる。景気が回復するとともにリチウム市場が強気に転じるという見通しであれば割安感のある水準だと思う。

 

3675 クロス・マーケティング

オンラインリサーチの大手。上場企業ではマクロミルやインテージが競合となる。

国内だけでなく海外にも展開しているほか、ITソリューションなどの事業も手掛けている。

 

売上高は2015年を除くとゆるやかに成長している。2015年に大きく増加しているのは海外リサーチの会社を子会社化したため。2016年以降は1桁の成長率が続いている。

セグメント別に見ると、国内リサーチ事業右上がりに伸びているのに対して海外リサーチ事業は横ばいにとどまっている。

ITソリューション事業は最も成長率が高く、2018年は+19%、2019年は+27%増加している。この事業はモバイル向けシステムの開発やIT人材派遣など。システム開発では金融系アプリに強みを持ち上場ネット証券の全口座の60%超に対して取引アプリを提供しているそうだ。金融機関向けはセキュリティや信用力が重要だが、Sler大手が参入するほどの市場規模がないことからクロス・マーケティングの独壇場となっていると思われるとフィスコのレポートで解説していた。

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セグメント別の営業利益の推移。

リサーチ事業が主力だがITソリューション事業も安定的に利益貢献している。

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事業別の営業利益率は下のグラフのとおり(0%以上を表示)。

主力のリサーチ事業は国内リサーチがメインだった2014年まで20%前後で推移していた。しかし海外リサーチが加わった2015年に18%になり、2018年には13%まで低下した。2019年にはやや改善して15%となっている。

ITソリューション事業はここ数年は10%前後で推移している。

全体の経常利益率は直近では6.8%まで下がっている。同業のマクロミルに比べると低い。

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バランスシートは健全。海外リサーチ子会社を減損したためのれんが大きく減っている。

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オンラインリサーチ市場についてはマクロミルの決算説明資料にグラフがあった。

国内オンラインリサーチ市場の5年間の成長率は年率4.2%。

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 海外のオンラインリサーチ市場の5年間の成長率は年率11.6%と国内市場より高い。

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日本のマーケティング・リサーチ市場規模は広告支出比では他国に比べて低いため拡大の余地があるとのこと。 

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2020年12月期の予想は、前年比で売上高+5.3%、経常利益+15.7%となっている。予想PERは6.4倍、配当利回りは2.3%とバリュエーションは低い。 

ちなみに同業のマクロミルも予想PER5.4倍と低評価となっている。過去の実績を見るとマクロミルの売上高成長率は10%程度とクロス・マーケティングより高いものの有利子負債が大きい。

オンラインリサーチは新型コロナウイルスの影響を受けそうな業種なので現在のPERは当てにならないかもしれない。ただ、中長期的に最高益を更新していけるなら割安感があると思う。

 

3186 ネクステージ 2020年11月期1Q決算

中古車販売大手。輸入中古車や高級輸入車の新車ディーラーも手掛けている。

 

1Qは前年比で売上高が+25.6%伸びたが、経常利益は-77.3%の減益となった。

今期の業績も大幅に下方修正しており、修正後の予想は売上高+11.7%、経常利益-55.8%となる。

業績悪化の理由は増税後の反動を挙げている。ただ、既存店販売台数は前年比で-8.8%と中古車・月別登録台数の統計よりも悪い。

 

増税の反動だけであればある程度の時間が経てば回復するだろうが、今後は新型コロナウイルスの影響も本格化してくるのが問題だと思う。

バランスシートを見ると現預金が127億円に対して短期借入金が185億円・長期借入金が287億円ある。この会社は大型店の大量出店によりキャッシュフローがマイナスになっているのでこのような環境ではかなり苦しい。

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会社は決算と同時に発行済み株式数の9.2%・30億円を上限とする自社株買いを発表している。ただ、自社株買いを行う財務的な余裕は少ないと思う。

 

株価は下げ続けており、実績PERは10倍を切る水準になった。

新型コロナウイルスを乗り切り消費者の需要が回復することを前提とすれば安いと思うが、財務的に余裕がないのが怖い。

 

中国の自動車株②

前回は自動車市場について書いたが今回は香港市場に上場している自動車株を見てみる。現在のところ大手では以下の銘柄が上場している。

0175 吉利汽車

0489 東風汽車

1958 北京汽車

2238 広州汽車

2333 長城汽車

1211 BYD

 

BYDを除く各社の自動車販売台数を見ると東風汽車が最も多い。次いで広州汽車→北京汽車→吉利汽車→長城汽車という順になっている。

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・0489 東風汽車

2019年の販売台数は前年比-4%の293万台で市場シェアは11.4%となっている。2008年の市場シェアが11.3%だったので中国の自動車市場と並行して成長している会社かと思う。

2008年~2019年のEPSと販売台数の推移は以下のとおりおおむね連動している。

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EPSは伸びている一方で株価は長期にわたって低迷している。バリュエーションの低下が原因。

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東風汽車の特徴としては商用車(トラックとバス)の販売が比較的多い。2019年は47万台の販売台数で市場シェアは10.8%とのこと。

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ブランド別で販売台数が多いのは日産とホンダで合計200万台程度。ホンダは自動車市場が低迷する中で販売台数を順調に増やしている。以前はPSAの販売台数も多かったがここ数年で激減している。

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2019年は自動車各社が減益になった中で-1%の減益で終えている。

セグメント別では商用車が28億元の利益で前年比+21%の増益、乗用車が39億元の赤字だった。関連会社やジョイントベンチャーからの利益は155億元で前年比+6%の増益となっている。

業績が底堅いのは、他社と比べて商用車部門が大きいことや好調な日本車との合弁を主力にしていることが理由だと思う。

実績PERは2.8倍、実績の配当利回りは8.4%とバリュエーションは低い。ただ、東風汽車の本社は湖北省にあることから新型コロナウイルスの被害が甚大になりそう。

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中国の自動車株①

東風汽車の実績PERが2.85倍と異常に安かったので中国の自動車株を調べてみた。

 

まずは中国の自動車市場について。 

下のグラフは中国の自動車販売台数の推移(数字はOICA)。

販売台数は2017年まで右肩上がりに伸びた後に2年連続で減少している。2019年は前年比-8%の減少に終わった。

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中国、アメリカ、EU28か国、日本、インドを比べたのが下のグラフ。

すでに中国が圧倒的な世界一の自動車販市場になっているのが分かる。中国の2,576万台に対して、EU28か国1,831万台、アメリカ1,748万台、日本519万台、インド381万台。

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中国は販売台数では世界一だが人口あたりで見るとまだ低い。人口1,000人あたりの自動車販売台数はアメリカ57台、ドイツ46台、日本42台、中国21台と先進国の半分以下にとどまっている。所得を考えるとかなり大きいともいえそうだが。

もうひとつ、中国は自動車の保有率も低いそうだ。三井住友銀行の資料によると中国の自動車保有率は2割弱で、アメリカの8割や日本の6割と比べてかなり低い。

これら人口比や普及率から見ると中国の自動車販売台数はもう少し伸びる余地があるように思える。ちなみに2017年の自動車中期発展計画によると、販売台数の目標は2020年に3,000万台、2025年に3,500万台の計画とのことだ。

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次に月次の自動車販売台数。

景気減速の影響で前年比マイナスが続いていたが昨年末には前年比プラスまで戻していた。しかし、新型コロナウイルスの影響で2月は前年比-88%というひどい数字となった。

今後は新型コロナウイルスの影響がどれだけ早く収まるか、再流行が起きないか、政府の補助政策といった要因に左右されそう。一番怖いのが再流行だが、いまのところは状況を注視していくしかないと思う。

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なお、中国は2018年に新エネルギー車、2020年に商用車、2022年に乗用車の外資出資比率制限がなくなるとのこと。

自動車の外資出資比率制限を撤廃

 

3169 ミサワ 2020年1月期4Q決算

おしゃれ家具のUnicoを運営する会社。店舗数は50店舗程度。最近はECに力を入れている。

 

通期の決算は前年比で売上高+9.7%、経常利益+131.8%と好調だった。経常利益は期首の会社予想を+120%上振れて着地した。

年ベースの業績はこんな感じ。売上高は右肩上がり。経常利益は2017年を底にして2020年は売上高と並行したトレンドに戻った。経常利益率は7.5%に回復している(ピークは2013年の8.8%)。

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四半期の売上高の推移。4Qはやや落ち込んで見えるが、前年比では+2%の伸び率となっている。増税後としては悪くないように思える。

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四半期の経常利益の推移。2019年2Qから安定して黒字が続いている。

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業績好調の理由としては、適正在庫の維持に成功、ECの売上が好調、人気シリーズや新製品が堅調、増税前の駆け込み需要が反動を上回った、などを挙げている。

 

BSを見ると現預金は5億円に対して、有利子負債は5.3億円となっている。

 

今期は売上高+5%、経常利益-7%の減益を予想している。

中期経営計画によると今期は落ち込むものの来期と再来期に増益を見込んでいる。

株価は下げており、今期PERは6.1倍、配当利回りは1.9%となっている。

ひとまず利益率は以前の水準に回復したので、ここからの大幅な増益は期待しにくいのかなと思う。売上高の伸び率も1桁台と高くない。PERは低いがそれを訂正するようなカタリストが見当たらない。ただ、中期経営計画が実現できるなら割安だと思う。

 

中国のネット株の決算②

今回は、虎牙(HUYA)、闘魚(DouYu)、ビリビリ(BiliBili)の決算をチェックする。

 

・虎牙と闘魚

ゲーム動画の実況配信サイトの2強。

闘魚の筆頭株主はテンセント、虎牙はJOYYだがテンセントが議決権の過半数まで買い増す権利を持つためこちらもテンセント系となる。

規模も良く似ている。売上高は虎牙の方がやや大きい。4Qの前年比成長率は虎牙が+64%、闘魚が+78%と非常に高い。

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 営業利益の黒字化は虎牙が先行していたが、直近の4Qでは闘魚が上回っている。

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月間アクティブユーザー数は闘魚が大きいものの虎牙も追い上げている。ただ、両社ともに成長率は鈍っている。

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有料ユーザー数ではここ1年虎牙が苦戦している。

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時価総額は虎牙32億ドル、闘魚21億ドルとなっている。

現金や有価証券は虎牙が約15億ドル、闘魚が約12億ドル保有している。両社とも有利子負債はない。

虎牙の実績PERは50倍を超えているが営業利益率が3%と低い。営業利益率が10%であればPER36倍、20%であれば18倍程度になる(YYやMOMOの営業利益率は20~30%出ていた)。売上高の成長が続き利益率が上がれば割安感が出ると思う。

ただ、両社ともMAUがそれほど伸びていないのはやや不安を感じる。また、ショートムービーの快手やビリビリが競争相手として浮上していることも心配な点となる。

 

・ビリビリ

中国のニコニコ動画。

ゲームやアニメ関連のリーディングカンパニーだが、ライフスタイルやエンターテインメントなどにも展開している。

4Qは売上高+74%、営業損失3.8億元の損失だった。

売上高の内訳を見るとモバイルゲームの比率が徐々に下がっている。モバイルゲームの4Qは前年比+22%の伸び率だった。

モバイルゲームに次ぐセグメントに育っているのがライブブロードキャスティング&バリュー・アド・サービスで前年比+183%という高い成長率だった。VASはプレミアム会員料、猫耳FM、コミックなど。ビリビリはeスポーツコンテンツにも注力しており、リーグ・オブ・レジェンド世界大会の3年間の独占放送権を獲得している。

広告はマクロ経済の逆風にもかかわらず前年比+81%増加した。Eコマースも前年比+244%という高い成長率となっている。

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月間アクティブユーザーは前年比+40%伸びて1.3億人、有料ユーザーは前年比2倍の880万人と順調に成長している。MAUのターゲットは2021年に2.2億人とのこと。

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ビリビリの強みは高いユーザーロイヤリティで12か月のリテンションレートは80%を超えているそうだ。

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バランスシートには現金と投資有価証券(短期・長期)が93億元あるのに対して、長期有利子負債は34億元となっている。

 

1Qのガイダンスは売上高が前年比で+56~60%とのこと。

 

現在の時価総額は75億ドルとなっている。

2019年の売上高が67億元(9.5億ドル)なので実績PSRは7.8倍。仮に2020年に売上高が+50%伸びればPSRは5.3倍になる。営業利益率が10%ならPER70倍、20%ならPER35倍というレベル。