ノジマのコネクシオ買収

昨年末にノジマが携帯電話販売の大手コネクシオを買収することを発表した。

ノジマ、携帯販売3位のコネクシオを買収 854億円でTOB - 日本経済新聞

 

コネクシオは全国で携帯ショップを440店舗(うちドコモショップ356店舗)運営している。携帯電話の販売台数では業界2位だが、ドコモに限ると上位4社の販売台数は拮抗している。

ノジマも携帯ショップを運営しており、9月末のショップ数は585店舗となっている。両社を合計すると1,000店舗を超え、最大手ティーガイアの1,141店舗に迫る。

 

コネクシオの業績はここ2年で大きく落ち込んでいる。

ドコモは携帯販売ショップを大幅に削減する方針で、コネクシオの業績はドコモの手数料体系によって左右されるため、今後も厳しい状況が続くことが予想されていた。

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ノジマによる買収価格は854億円。

コネクシオの今期の純利益40億円を基準にすると、買収価格は純利益の20倍超でかなり割高に見える。2年前のピークの純利益を基準にしてもPERは12倍となる。

 

コネクシオ買収についてのノジマ社長のインタビューがあった。

家電ノジマが「ドコモショップ」を爆買いした成算 | 通信 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

明確な立ち直しの手段などは語られていないが、厳しい市場環境でも利益を出せると言っている。

実際にノジマは過去にITX(携帯販売会社)やニフティなどの成熟市場の会社を買収しており、売上高こそ伸ばしていないが利益はしっかり出している。

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なお、ノジマのキャリアショップ運営事業の業績は下の資料のようになっている。

売上高は右肩下がりだが、セグメント利益は60億円前後を維持している。

 

買収資金は860億円を上限にみずほ銀行から借り入れるとのこと。

ノジマのバランスシートを見ると、現預金は310億円。対して有利子負債は短期148億円+長期90億円となっている。

今期の経常利益が365億円、EBITDAが548億円という規模からするとそれほど大きくない。

買収先のコネクシオには有利子負債がなく、総負債の441億円は流動資産の797億円(現預金191億円、売上債権203億円、未収入金307億円など)を大きく下回っている。

 

今期のノジマの業績は、3Qまでで売上高+2%増収、経常利益+15%増益と堅調に推移している。

2017年~2023年の3Q累計のセグメント利益の推移をグラフにしてみた。

主力のデジタル家電専門店運営事業が堅調に伸びており、インターネット事業(ニフティなど。2020年末にセシールも買収した。)も業績に貢献していることが分かる。海外も安定して黒字となっている。

キャリアショップは厳しい環境だが、それでも前年並みの利益を確保している。


ノジマの今期予想PERは5.6倍とかなり低い。

のれん償却額が28億円あることや、今後はコネクシオの利益も乗ることを考えると相当に割安感がある。

 

やや不安に感じたのは家電の好調がどれくらい持続できるのかという点。

今期は巣ごもりの反動などで他社が不調な中でノジマのみが業績を伸ばしている。

日経新聞の記事では、「コロナ禍で在宅勤務が浸透し、自宅近くで買い物を済ます消費行動が定着するなか、首都圏の住宅地を中心とした積極出店が奏功」と書いてあるが、ノジマの強さがいまいちわからなかった。

家電量販4~9月、巣ごもり一巡で4社減益 値上げも響く - 日本経済新聞