9435 光通信 2023年3月期4Q決算

2023年3月期の決算は、前年比で売上高+12%、営業利益+4%、税前利益+9%、純利益+4%で着地した。

今期は、前年比で売上高-3%、営業利益+7%、一過性損益等除く営業利益+26%、純利益-17%という予想。

純利益がマイナスなのは前期・前々期に大きかった営業外利益(たぶん金融収益)が減るためだろう。下の資料のように保有株式の売買の一部は営業外損益に影響するようだ。

 

現時点の予想PERは12倍となっている。

この会社は余剰資金による株式投資の金額が大きいので、それを考慮するとバリュエーションはもっと低くなる。

 

今回は光通信の主力事業のひとつに位置付けられている電力小売事業について少し調べてみた。

この会社はセグメント情報に電力事業はないが、以前の資料に2020年~2023年(2023年は予想値)までの売上高と営業利益が掲載されていた。

2022年3月期は、売上高1,498億円、営業利益-12億円。全体の売上高が5,782億円だったので、売上高で見ると電力事業の割合は結構大きい。

 

電力事業の規模だが、決算説明会資料によると、小売電気事業者等除くと低圧では第4位、シェア7%とのこと。

新電力ネットというサイトの電力販売量ランキングでも、電力、ガス、通信大手などの大型プレイヤーを除くと、光通信は上場している新興系の中では最大手クラスとなる(2023/01における実績値とのこと)。

・光通信 519,812千kWh(ハルエネ294,552、グランデータ117,466、HTBエナジー73,783、地域創生ホールディングス26,370、エコログ7,641)

・ミツウロコ 306,302千kWh(ミツウロコグリーンエネルギー234,406、ミツウロコヴェッセル71,896)

・イーレックス 259,354千kWh(エバーグリーン・マーケティング143,505、エバーグリーン・リテイリング105,753、イーレックス10,096)

・リミックスポイント 72,470千kWh

・グリムス 53,869千kWh

 

下のグラフは、ミツウロコ、リミックスポイント、グリムス、イーレックスの四半期のセグメント利益の推移。イーレックスはセグメントがないので全体の営業利益を使った(イーレックスはバイオマス発電もしている)。ミツウロコの電力事業にも発電が含まれている。

イーレックスを除く3社は、四半期ごとに利益のブレが大きいうえ、頻繁に赤字を出している。利益率も低い。3社の4年分の売上高とセグメント利益を合計して計算すると3%にすぎない。

イーレックスは傾向が違い、電力高騰時にむしろ利益が上がっている。この会社はトレーディングも行っており、独自のノウハウを持っているようだ。

 

業績がさえないのは、2020年12月・2021年1月の異常な価格暴騰や、2021年冬から1年以上に渡る長期の価格高騰期を含んでいるためだろう。

JEPXの月平均のシステムプライスの推移。

 

各社はJEPXの価格高騰の影響を和らげるために市場連動型などの新プランを導入している。これにより今後の業績への影響が和らげられる見込み。

光通信の場合、新プランの導入によりJEPXのスポット価格が10~40円に変動しても営業利益への影響は±10億円の範囲に抑えられるそうだ。

 

新プランによりどれだけの利益が安定的に出るかは分からないが、市場連動型プラン(U-POWER)の業績を発表しているUSEN-NEXTを見ると、直近の四半期では営業利益率が10%超となり結構な利益が出ている。

 

光通信も新プランの導入により、4Qはかなり大きな利益となっているようだ(個人は3Qより、法人は4Qより導入)。

2022年の電力事業の営業赤字が12億円だったのを考えると、目測で正確には分からないものの4Q単体は数10~100億円程度の営業利益が出ているように見える。

 

一定の利益が安定的に出る市場連動型プランは導入企業には良いが、利用者にとっては問題があるという記事も見かけた。

卸売価格の高騰時に、消費者の想像以上の電気代が発生する可能性があるとのこと。

市場連動型プランにはルールが必要 今すぐ規制強化を。

市場連動型の電気料金は想像を絶する金額に、いま新電力がやるべきこと|日経エネルギーNext

 

大手電力にも燃料費調整額という項目があり、燃料価格によって電力価格が調整される。また、プランによっては燃料費調整額の上限も撤廃されている。

しかし、新電力が用いる電源調達調整費や市場連動型プランはJPEXの卸売価格に連動するため、燃料費調整額よりボラティリティが高くなるのが予想されるそうだ。

電源調達調整費がある料金プランはハイリスク | 電気代が高い原因に

 

JPEXの卸売価格については、2020年12月・2021年1月の価格高騰が不自然だったという指摘もある。

電力市場高騰の怪、「寒波主犯説」の思い込みを斬る|日経エネルギーNext

 

市場価格連動プランを導入した電力小売は短期的には安定した利益を出せるので良さそうだが、中長期的には電力価格の高騰が起きたときに社会問題化しそうでやや怖い気がした。