PLS.AX ピルバラミネラルズ 2022年6月期2Q決算

リチウム化合物の原料となるスポジュメン鉱石を採掘している会社。オーストラリア上場。

保有する資産はオーストラリアの Pilgangoora で、生産中の鉱山ではトップクラスの資源量をほこる。資源量・グレードともに高い Greenbushes(ティエンチ/アルベマール)は別格だが、Mt Marion(ガンフォン/ミネラルリソーシズ)や Mt Cattlin(オールケム)よりもはるかに大きい。

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Pilgangoora の他には、Ngungaju を開発していたアルチュラマイニングを買収している。

Ngungaju の資源量は中規模クラス。アルチュラは生産開始までこぎつけていたが、リチウム価格の下落によって破綻した。Ngungaju は Pilgangoora に隣接しているため相乗効果が見込めると判断したようだ。

買収価格は175Mドル。足元の市況を基準にすると格安な買収価格となった。

 

ピルバラミネラルズのオフテイク契約の相手にはガンフォン、CATL、ポスコといった一流の会社が並んでいる。

これらの会社はピルバラの株主にもなっている(ガンフォン6.86%、CATL8.24%、ポスコ3.69%)。

ポスコとはJVで水酸化リチウムプラントを建設する計画も進行している(2023年後半に試運転の予定)。

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Pilgangoora でのスポジュメン精鉱の生産は2018年3Qに始まった。

リチウム市場の悪化を受けて2019~2020年にかけて生産が停滞したが、最近のリチウム市場の回復を受けて急回復している。

年間330Ktのキャパシティに対して、直近4四半期の合計は324Ktとフル生産に近い。

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2022年6月期の生産量は340~380Ktというガイダンス。

2022年7-9月四半期には Ngungaju の立ち上げとピルガンの改善により、キャパシティ560~580Ktへの拡張を見込んでいる。

なお、拡張計画は西オーストラリアの労働力不足により遅れが出ている。2021年11月のプレゼン資料では今期中に完了の予定だった。

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スポジュメン精鉱の市場価格は、底値から10倍となる4,000ドル前後まで急騰している。

ピルバラの販売価格も中国のスポット価格に素直に反応して大きく値上がりしている。

上半期のスポジュメン精鉱の販売価格は約1,300ドル/トン。1-3月の四半期にはさらに値上がりして2,600〜3,000ドル/トンになる見込み。さらに直近の契約価格は現在のスポット価格(3,750~4,500ドル)の下限に近付いているとのことだ。

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上半期のピルガンのコストはFOBベースで347ドル/トン、CIFベースで486ドル/トン。下半期のピルガンのコストは、ロイヤルティを除いたFOBベースで329~358ドル/トン(1豪ドル=0.7319米ドルで計算)となる見込み。

23年6月期は、Ngungaju を含めたFOBベース(ロイヤルティ除く)で388~417ドル/トンという予想。

安定的にキャパシティを達成できるようになれば、長期的にはCIFベースで350ドル/トン程度に戻るとの見方を示している。

 

中間の業績は、売上高が59.1Mドルから283.3Mドルに4倍以上に増加し、営業利益は135Mドルと黒字転換した。

純利益は84.2Mドルだが、買収費用や税金項目を調整すると114Mドルとなる。

営業キャッシュフローの116Mドルに対して、投資キャッシュフローは38Mドル。

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好調な業績の結果として、現金残高は前期末の99Mドルから191Mドルに増加した。出荷済みの取消不能の信用状を含めると245Mドルになる。

一方で有利子負債は176Mドル。ネットキャッシュはプラスとなった。

 

株価は2020年の底値からピークまで20倍以上に値上がりした。現在はピークの3.72豪ドルから下落して2.62豪ドルとなっている。時価総額は米ドル換算で5.6Bドル。

リチウム各社を見ると、アルベマール21.3Bドル、SQM17.7Bドル、オールケム4.4Bドル、ライベント3.4Bドルとなっている。ただ、ピルバラは下流のリチウム化合物を作っていないので他社と比較しにくい。

時価総額と上期の純利益の約100Mドルを比べると割高だが、販売価格2倍&コスト同じだと年間800Mドル程度の営業利益となるので割安感が出る。

ただ、スポジュメン精鉱は建設開始からフル生産まで2年程度と短く、リチウム化合物の生産と違って参入障壁も低いため、極端な高値が続くとは考えにくい。

2022年はシグマリチウム、コアリチウム、アルベマールのウォジナ再稼働くらいだが、2023~2024年には新規の鉱山が続々と稼働するはず。

スポジュメン精鉱の不足は少なくとも今年いっぱいは続きそうだし、来期のキャパシティ拡張やPOSCOとのJVというプラス要素はあるが、個人的には今の時価総額は十分に評価されているのではないかと思う。ただ、業績とスポット価格の連動が強い銘柄なので、リチウム価格の値動き次第ではまだ上があるかもしれない。