PLL ピードモント・リチウム

アメリカとオーストラリアに上場するリチウムの開発会社。

旗艦プロジェクトは、アメリカ・ノースカロナイナ州で開発中のカロライナリチウム。

その他、サヨナ・マイニングやアトランティック・リチウムへの出資、アメリカでの水酸化リチウムプラントの建設計画もある。

 

各プロジェクトの開発状況は下の資料の通り。

サヨナ・マイニングの持つノース・アメリカン・リチウムプロジェクト(NAL)の進行が最も早い。2023年1Qに生産を開始する見込み。

 

・カロライナリチウム(持分100%)

スポジュメン鉱石の採掘から水酸化リチウムの生産まで行う垂直統合プロジェクト。

ノースカロライナ州では、1950~1980年代にかけて世界のリチウムのほぼ100%を生産していたそうだ。

 

カロライナリチウムの資源量は、44.2Mt@1.08%Li2Oと中規模。

年間242ktのスポジュメン精鉱と年間30Ktの水酸化リチウムを生産する計画となっている。

BFSは2021年末に出ている。

最新2022年3月のPEAによると、統合プロジェクトのCAPEXは988Mドル、生産コスト(AISC)は4,377ドル/トン、税引後NPV8%は2,843Mドル(水酸化リチウム22,000ドル/トン、スポジュメン精鉱1,200ドル/トンの前提)となっている。

 

このプロジェクトは、2020年にピードモント・リチウムがテスラへのスポジュメン精鉱の供給契約を締結したことで注目を浴びた。

しかし、その後は反対運動により計画が止まっている。州や郡の許可も不足している状態。

先のスケジュール表を見ても、カロライナリチウムの生産開始は最も遅い。

 

・LHP-2(持分100%)

テネシー州に建設予定の水酸化リチウム精製プラント。ノースカロライナに続いてアメリカで2か所目の計画となる。

PEAは2022年3月に出ている(下表)。

サヨナ・ケベックやアトランティック・リチウムらから196Ktのスポジュメン精鉱を購入し、年間30Ktの水酸化リチウムを生産する計画。

CAPEXは572Mドル、生産コスト(AISC)は10,630ドル/トン、税引きNVA8%は2,248Mドルとなっている(水酸化リチウム22,000ドル/トン、スポジュメン精鉱1,200ドル/トンの前提)。

2022年末にDFSが出る予定。

 

・ケベック

サヨナ・マイニングの14.4%、サヨナ・マイニングの子会社であるサヨナ・ケベックの25%を持つ。サヨナ・ケベックはNALの100%を持つ。

また、NALプロジェクトで生産したスポジュメン精鉱の50%、または113Ktのうち大きい方を500~900ドル/トンの固定価格で買い取る契約を結んでいる。

 

サヨナ・マイニングはオーストラリア上場のリチウム開発会社。

もともとはカナダ・ケベックでAuthierプロジェクトを進めている会社だった。Authierは資源量17.1Mt@1.01%Li2Oと規模が小さい。

サヨナ・マイニングは2021年8月に子会社のサヨナ・ケベック(サヨナ75%/ピードモント25%)を通してNALを買収した。

NALはAuthierから30kmほど離れた場所にある鉱山で、資源量は101.9Mt@1.06%Li2Oと大きい。

この鉱山と工場には前オーナーによって400Mドルが投資されており、2017年~2019年にかけてはスポジュメン精鉱の生産も行なっていたが、リチウム価格の低迷により操業停止に追い込まれた。

サヨナ・ケベックによるNALの再稼働は2023年1Qを予定している。生産能力は年間220Ktのスポジュメン精鉱とのこと。

 

なお、サヨナ・マイニングはAuthierとNALをまとめてAbitibi Hubとしている。

Abitibi Hubの計画は、AuthierとNALから採掘した鉱石をNALの選鉱場でスポジュメン精鉱にして、Bécancourに建設予定のプラントに送って水酸化リチウムを生産するというもの。

 

ピードモント・リチウムが結んだオフテイク契約は、現在の高騰したスポジュメン精鉱の市場価格を基準にすると、かなり有利な条件になっている。

スポジュメン精鉱の販売価格を6,000ドル、サヨナ・ケべックからの購入価格を900ドル、購入量を113Ktで単純計算すると、粗利益は約600Mドルにもなる。

また、ピードモント・リチウムの持つサヨナ・マイニングの株式(14.4%)は、現在のサヨナ・マイニングの時価総額2,697オーストラリアドル(≒1,834Mドル)を基準にすると264Mドルとなる。

サヨナ・マイニングは北ケベックにも開発プロジェクトを持っているが、現状では時価総額の多くはAbitibi Hubの分だと思うので、サヨナ・ケベックの持分25%もかなりの価値になりそう。

 

・ガーナ

アフリカのガーナでスポジュメン鉱山(EWOYAA)を開発しているアトランティック・リチウムの9.9%と、EWOYAAの50%の権益を持つ。

EWOYAAの資源量は30.1Mt@1.26%と中規模だが、探索による拡大が見込めるそうだ。

計画では年間300Ktのスポジュメン精鉱を生産する予定で、ピードモント・リチウムはそのうちの50%を購入する権利を持つ。

PFSは2022年3Qに出る予定。2024年の生産開始を目指している。

 

アトランティック・リチウムはロンドンに上場しており、現在の時価総額は265Mポンド(307Mドル)となっている。今月中にオーストラリアにも上場する。

ピードモント・リチムウの持つ株式の約10%と EWOYAAプロジェクトの半分は、市場価値ベースでは300Mドル以上の価値がありそう。

 

ピードモント・リチウムの現在の時価総額は1,125Mドルとなっている。

サヨナ・マイニング関連だけで時価総額くらいの価値はありそうなので、サム・オブ・ザ・パーツで見ると割安だと思う。

2023年1QにNALが稼働することで、実際に利益やキャッシュフローが発生するのもカタリストとして働きそう。

 

サヨナ・マイニングの時価総額は、同時期(2022年~2023年初め)にスポジュメン精鉱の生産を開始するシグマ・リチウムやコア・リチウムとそれほど変わらない。

このうちコア・リチウムは、安心感のあるオーストラリアの鉱山というプラス要因はあるが、現状で資源量がかなり小さいので他の2社と同レベルの時価総額というのは違和感がある。

サヨナ・マイニングは、NALの持分が75%なのと、不利な条件でオフテイク契約を結んでいるのがマイナス点となる。ただ、水酸化リチウムプラントの建設を視野に入れていることや、北ケベックでも鉱山を開発しているので、他の2社と単純に比較しにくい気もする。

3社の時価総額はピルバラ・ミネラルズの1/4程度となっている。

スポジュメン精鉱の生産量ではそこまでの差はついていないが、資源量、バランスシート、これまでの実績などを考慮するとそれくらいの評価となるようだ。

 

ピードモント・リチウムの今後の株価は、やはりスポジュメン鉱石の価格高騰がいつまで続くかによるだろう。

前回のリチウムブームでもスポジュメン鉱石の過剰供給によって需給が崩れたように、鉱石の生産は下流のリチウム化合物の生産に比べて容易とされる。今後何年も高値が続くとは考えないほうがいいと思う。

ただ、足元の環境が非常に良いだけに、短期的にでもスポジュメン鉱石の高値が維持されるならピードモント・リチウムの株価にも期待できるかもしれない。