3Q決算が終わったので大手各社の来年のリチウム供給計画をチェックしてみる。
〇アルベマール
パイプラインは下の図のとおり。
2022年に稼働するのは La NegraⅢ&Ⅳ(炭酸リチウム4万トン)、KemertonⅠ(水酸化リチウム2万トン)、QinzhouⅠ(炭酸リチウム換算2.5万トン)となる。
・La NegraⅢ&Ⅳ の商業生産は2022年の上半期から。年末のランレートは3万トン。
・KemertonⅠの商業生産は2022年の下半期から。KemertonⅡの売上は来年。
・QinzhouⅠの売上は2022年の上半期から。
以前会社がコメントしていたように初年度40~50%稼働とすると、来年は4万トンくらいの生産量の増加になるのではないかと思う。ただ、トーリングによる生産・販売もあるようなので正確な数字は不明。
〇SQM
2021年の販売量は10万トン近くで、2022年の生産量は14万トンとのガイダンスがあった。販売量は4万トン程度の増加になりそう。
チリの炭酸リチウムのキャパシティは今年末が12万トン、来年末が18万トンという計画。
〇ガンフォンリチウム
この会社は四半期の情報開示が少ないのでわかりにくい。
2020年末のネームプレートキャパシティは、炭酸リチウム4.05万トン、水酸化リチウム8.1万トン、リチウムメタル0.2万トンだった。2020年の実際の生産量は炭酸リチウム1.46万トン、水酸化リチウム2.73万トン、リチウムメタル0.16万トン。
2Qのコメントによると、2020年末に追加された5万トンの水酸化リチウムプラントは1Qにフル操業を達成したそうだ。水酸化リチウムの稼働率が高まっているのであれ2022年の上積み余地は大きくなさそう。
パイプラインは Fengcheng City の年間5万トンが大きいが、タイムラインについてはコメントがない。
リチウムアメリカズとのJVである Cauchari-Olaroz(炭酸リチウム4万トン)は2022年3Qに稼働する計画。2022年の貢献はほとんどないと思われる。
〇天斉リチウム
オーストラリアの Kwinana のトレイン1(水酸化リチウム2.4万トン)が稼働した。22年末までにフルキャパシティに達するとのこと。トレイン2の2.4万トンは2024年に稼働予定。
初年度50%の稼働とすれば2022年の生産量は1.2万トンになる。
〇ライベント
2022年の拡張はない。2023年に2万トンの拡張を見込む。
〇オロコブレ
ステージ2の拡張(炭酸リチウム2.5万トン)が22年上半期に完成し、下半期に生産開始という計画。2022年の影響は限定的と思われる。
楢葉の水酸化リチウムプラント(1万トン)は22年中にフル操業に達するとの話だが、原材料がオラロスの炭酸リチウムのなので全体の供給量は増えない。
以上の状況から、詳細がいまいちわからないガンフォンを除いても2022年の生産量は10万トン前後は増加しそう。
ガンフォンについては、上に書いたように水酸化リチウムプラントの稼働率が高まっているならば上積み余地はそれほど大きくないのではないかと思う。また、ガンフォンは原材料を他社から調達する必要があるが、足元のスポジュメン鉱石のひっ迫状況を見ると仮にキャパシティに余裕があっても大幅に生産量を増やすのは難しいのではないかと思う。
大手以外には中国のコンバーターや中国青海省の塩湖があるが、中国のコンバーターはガンフォンと同様にスポジュメン鉱石の不足がネックになると思う。青海省は報道を見る限りはある程度の増加はありそう。
そんなわけで各社の数字を積み上げていくと10万トンは増えるだろうが15万トンは厳しいのではないかという印象を受けた。
なお、2022年は計画遅れやトラブルの多いかん水からの生産量増加が大きいので不確実性は高いように思う。
ガンフォンや中国コンバーターの原材料であるスポジュメン鉱石は、ピルバラミネラルズの増産やシグマリチウムとコアリチウムの新規稼働が見込まれている。
ピルバラミネラルズはプラント改修や買収したアルチュラの鉱山稼働により、足元のスポジュメン精鉱33万トンのキャパシティが2022年の半ばに58万トンまで拡張される見込み。
今年の販売量は年換算で31.7万トンというペース。ほぼフル稼働に近い。来年のガイダンスは46~51万トン。炭酸リチウム換算で2万トン前後の増加になりそう。
シグマリチウムとコアリチウムは計画通りに稼働しても2022年下半期となるので来年の影響は限定的だと思う。キャパシティはそれぞれスポジュメン精鉱22万トンと17.3万トン。