チリの化学メーカー。
チリ北部のアタカマ砂漠から採れるチリ硝石を使って硝酸ナトリウムやヨウ素を、アタカマ湖からリチウムやカリウムを生産している。
硝酸ナトリウムと塩化カリウムから硝酸カリウムも生産している。硝酸カリウムは特殊肥料セグメントの主力製品。
セグメントはリチウム、特殊肥料、ヨウ素、カリウム、工業化学品(集光型太陽熱発電向けの硝酸塩)の5つ。
会社によると2019年の世界シェアはリチウムが15%、特殊肥料が51%、ヨウ素が25%、工業化学品が41%だった。カリウムは1%以下。
3Qは前年比で大幅な増収増益となった。
売上高 661Mドル(前年比+46%)
粗利益 224Mドル(前年比+96%)
税前利益 152Mドル(前年比+1488%)
調整EBITDA 250Mドル(前年比+72%)
EPS 0.37ドル
四半期で見ても業績の改善が続いている。売上高は過去数年で最高となった。
セグメント売上高の前年比は、特殊肥料+31%、ヨウ素+47%、リチウム+94%、カリウム+35%、工業化学品+20%。
四半期の推移は下のグラフの通り。
特殊肥料の販売量は3Q累計で前年比+12%の増加だった。
3Qの硝酸カリウムの販売価格は前年比で+20%上昇したそうだ。現在の状況からして4Qもさらなる価格上昇を見込むが、すでに過去10年で最高の水準にあることから今後の価格を予想するのは難しいとのこと。
ヨウ素の需要はパンデミック前を回復しており、SQMの販売量も3Q累計で前年比+25%となった。
販売価格は比較的落ち着いているものの4Qは上昇を見込んでいる。
リチウムは今年の需要が前年比+50%近く伸びるとの見通し。来年も+20%~30%の成長が見込まれる。EVの年間販売台数は2020年が630~660万台、2021年が900万台になるとの予想。
SQMの販売量はキャパシティの拡張により大幅に増加している。3Q単体は22Ktで前年比+24%の増加、3Q累計では70Ktで前年比+80%の増加となっている。2021年の販売量は100Kt近くになる。
足元の生産能力は年間120Ktのペース。来年半ばには180Ktへの拡張が完了する予定。来年の生産量は140Kt程度とのこと。
販売価格は1Qが5,657ドル、2Qが6,736ドル、3Qが8,418ドル/トンと順調に上昇している。昨年の契約が切れることで4Qは12,000ドル以上、来年1Qはさらに高い価格が期待できるそうだ。
リチウムの販売数量と売上高から逆算した販売価格の推移が下のグラフになる。
セグメントごとの純利益の推移は下のグラフ。この会社はセグメント情報の開示が遅れるので2Qまでの数字になっている。
主力の3セグメントはそろって好調だが特にリチウムの伸びが大きい。リチウムは依然としてピークのかなり下にあることから今後も大きな上昇が期待できそう。
なお、3Qの粗利益の割合は、リチウム32%、特殊肥料29%、ヨウ素26%となっている。
決算は好調で今後の見通しも良かった。
YahooFinanceの予想EPSを使うと2020年の予想PERが38倍、2022年の予想PERが23倍となる。他のリチウム銘柄と違ってまともな数字。
時価総額で見てもSQMは17Bドルとアルベマールの33Bドルに比べて低い。
この会社はリチウム市場の低迷期にも投資を緩めなかったことからアルベマールなどよりも一足先にキャパシティの拡張に成功した。経営陣の判断が良かったにもかかわらず、株価は他社ほど上げていない。結果としてバリュエーションが割安になっている。
株価が上がらない理由はカントリーリスクかなと思う。南米諸国で資源ナショナリズムの動きが出ており、チリでもロイヤリティの引き上げが議論されている。SQMのリチウムビジネスはチリに集中しているのでカントリーリスクが大きい。
なお、チリでは昨日大統領選挙が行われた。報道によると現時点では極右の候補が極左の候補を上回っている模様。ただ、当選に必要な過半数を獲得できないことから12月19日の決選投票に進む見通しとのこと。