SQM ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ 2020年3Q決算

チリの化学メーカー。

チリ北部のアタカマ砂漠からチリ硝石を、アタカマ湖からリチウムやカリウムを採取している。

チリ硝石からは硝酸ナトリウムとヨウ素が採れる。この硝酸ナトリウムと塩化カリウムから硝酸カリウムも生産している。

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セグメントはリチウム、特殊肥料、ヨウ素、カリウム、工業化学品の5つに分かれている。

主力が硝酸カリウムなどの特殊肥料で世界シェアは51%とのこと。リチウムとヨウ素の世界シェアもそれぞれ15%・34%と高い。この3つに比べるとカリウムと工業化学品の比率はやや低い。

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3Qは前年比で売上高-4%の減収、調整EBITDA-6%の減益、純利益-97%の減益だった。

純利益が大きく落ち込んだのは一度限りの訴訟費用が62.5百万ドル計上されたためだが、税前利益に訴訟費用を足し戻しても前年比で-17%の減益となる。

 

セグメント売上高は、特殊肥料が前年比+4%、ヨウ素が-19%、リチウムが-15%だった。

四半期比で見るとリチウムは2四半期連続で増収だが、ヨウ素は3Qに大きく落ち込んでいる。ヨウ素の減収は新型コロナウイルスによるX線需要の落ち込みが大きい。これは新型コロナウイルスが落ち着けば元に戻るとのこと。

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セグメント別の粗利益の割合は、特殊肥料35%、ヨウ素36%、リチウム16%となっている。特殊肥料とヨウ素の2部門で粗利益の7割以上を稼いでいる。

下のグラフはセグメント別の純利益の推移(2020年2Qまで)。リチウムが大きく減少する中でヨウ素の比率が増えている。

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リチウムの販売数量と平均販売価格(売上高÷販売数量)をグラフにした。

販売数量は1Qを底に2四半期連続で大幅に増加している。SQMの販売数量はここ数年40~50Ktで推移していたが、キャパシティを年70Ktに拡張した成果がようやく数字に出てきたようだ。

一方で販売価格は下落が続いており3Qの平均販売価格は5,384ドル/トンとなった。これはfastmarketの発表するバッテリーグレードの炭酸リチウムのスポット価格(中国国内41,000元≒6,150ドル、cif中国・日本・韓国6,750ドル)を下回っている。

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会社はEV販売の増加を背景に堅調なリチウム需要を見込んでおり、2021年の販売数量は前年比で+30%以上となるそうだ。

SQMはマーケットシェアを取りに行く戦略でチリの大規模拡張計画も進行している。

2021年2Hに炭酸リチウム70→120Kt、水酸化リチウム13.5→21.5Kt。CAPEX240Mドル。

2023年に炭酸リチウム120→180Kt、水酸化リチウム21.5→30Kt。CAPEX150Mドル。

ただし、過去の拡張計画は遅れが目立つのでスケジュールはあてにならないと思う。

なお、SQMが半分を出資するオーストラリアの Mt Holland は2021年1月に最終的な投資判断を行うとのこと。

 

バリュエーションは、YahooFinanceによる今期のEPSを使うとPER51倍となる。2018年のピークのEPSを使うとPER27倍という水準。SQMのPERはアルベマールに比べると高めになっている。