YY JOYY 2020年3Q決算

中国のライブストリーミングサービス大手だったが、1週間ほど前に YY Live をバイドゥに売却することを発表した。

子会社だったゲームストリーミングのフヤもテンセントに売却しており(依然として16%程度を持つがこれも売却する予定とのこと)、今後は中国外でライブストリーミングサービスやショートムービーを展開する BIGO に集中することになる。

 

今四半期の業績には YY Live が含まれているのであまり意味がない。そこで BIGO のみの売上高と営業利益を抜き出すと下のグラフのようになる。

3Qの売上高は前年比で+121%と急成長を維持している。営業利益は赤字だが、Non-GAAPではわずかな黒字に転換した。

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インドを除いた(インドではアプリが禁止された)BIGO Live のMAUは2,650万人で前年比+58%、前四半期比+16%となった。

このアプリは主に先進国、中東、東南アジアが好調とのことだが、売上高で見ると先進国の比率が4割を超えるそうだ。ちなみに昨年3Qの比率が26%とのことだったので順調に先進国の売上高を拡大させている。

SensorTower によると BIGO Live は世界の売上高ランキング(10月)で10位に入っている。

 

Likee のMAU(インド除く)は9,700万人で前年比+147%、前四半期比+15.5%となった。

Likee は中国外のショートビデオアプリでは TikTok に次いで2番手とのことだが、TikTok に比べると影が薄い。過去の電話会議ではインド(禁止された)、ロシア、インドネシアなどで強いと言っていた。

Likee は依然として投資フェーズのため売上高は低い(2Q時点ではBIGO全体の1割以下とのこと)。

 

先日、空売り機関のマディ・ウォーターズがレポートを出したことで株価が乱高下している。

現在の時価総額は71.5億ドル。

バランスシートには現預金+短期投資の36億ドルと長期投資の12億があり、総負債の12億ドルを差し引いたネットの現金・投資は36億ドルある。

これに YY Live の売却代金36億ドルを加えると少なく見ても60億ドル以上の現金・投資資産を持つことになりそう。

 

BIGO の3Qの売上高は33億元(≒5億ドル)なので、単純に4倍すると20億ドルとなりPSRは3.5倍と低い。さらにネットの現金・投資資産の60億ドルを差し引くとPSRは0.55倍と非常に低い数値となる。

曲がりなりにも世界の売上高ランキングで10位に入るアプリがこの評価というのは低すぎると思う。

 

ただ、中国企業というリスクは大きい。インドではアプリが禁止されたし、アメリカでも TikTok が揉めている。

マディ・ウォーターズのレポートの是非は僕には判断できないが、JOYYの場合はキャッシュが大きいので、この金額に不正がない限り影響は限定的ではないかと思う(レポートではキャッシュバランスに関しても不正があるとしている)。