LTHM ライベント 2020年3Q決算

FMCのリチウム部門のスピンオフにより誕生した会社。リチウム専業。アルゼンチンのオンブレ・ムエルト湖からリチウム化合物を生産している。

会社によると炭酸リチウムの生産コストは下位1/4、水酸化リチウムの生産コストは下位1/2に入るそうだ。戦略的にハイエンドの水酸化リチウムに注力している。

ライベントはかつてのビッグ3の一角だが、現在はアルベマール、SQM、ティエンチ、ガンフォンの4社と比べると規模が小さい。

 

3Qの売上高は前年比で-26%の減収、営業利益は-13.2百万ドルと赤字だった。調整EBITDAは0.9百万ドルとぎりぎり黒字を維持している。

業績は相変わらず悪いが売上高は2Qから反発した。水酸化リチウムの販売量が増加したとのこと。ただし中国への販売量の増加から価格はやや下落した。

EBITDAの減益は、他社から購入した炭酸リチウムを原料とした水酸化リチウムの販売増加とCOVID19に対応する追加コストを要因に挙げている。

ライベントは今年の販売量増加に備えて他社から炭酸リチウムを購入していた。この炭酸リチウムを原料にした高コストの水酸化リチウムの大部分を今四半期に処理したそうだ。

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4Qのガイダンスはなかったが、顧客が今年の数量契約を達成するため販売数量は増加するとのこと。その他、他社から購入した炭酸リチウムの大部分を処理したのは追い風になりそう。一方で4Qにアメリカのプラントを2か月間閉鎖する費用がかかる。プラント閉鎖は生産調整と顧客の仕様を満たすための機能を追加するため。

 

アルゼンチンの拡張計画はCOVIDと財務的な制限のためストップしている。拡張は必ず行うと言っているものの現時点で2021年に再開する予定はないようだ。投資に当たっては顧客からの数量と価格の保証が必要とのこと。

 

その他、決算と同時にテスラへの水酸化リチウム供給契約の延長と旧ネマスカリチウム買収への参加を発表した。

ネマスカリチウムはカナダ・ケベックで鉱石からリチウム化合物を生産するプロジェクトを運営していた。いったんは資金調達もクリアしたのだが、リチウム市場の悪化とコストオーバランによって破綻した。

ライベントは Pallinghurst Group とともに新会社の半分を保有するそうだ。残りの半分は国有会社の Investissement Quebec。

会社によると2021年後半までに求められる資金は1,000万ドルに限られる。この期間にネマスカの採算性を精査するようだ。

 

決算は相変わらず悪かったが、テスラ・ネマスカのニュースのおかげか株価は大幅高となった。リチウム市況の反転を見越してかライベントの株価は上昇を続けており、4月の底から約3倍に値上がりしている。

今期の業績が悪いのでまともなPERが計算できないが、業績ピークの2018年のEPSを使うとPERは13~14倍程度になる。

ライベントの業績は底打ち感があるものの、アルゼンチンの拡張計画のストップにより近いうちの数量増加が期待薄なのが残念。当面はリチウム価格の回復による業績改善に期待するしかなさそう。

アルベマール、SQM、ガンフォンが投資を継続してキャパシティを積み増しているのに対して、ライベントは財務的にリスクを取れないのが厳しい。