LTHM ライベント 2021年3Q決算

アルゼンチンのオンブレ・ムエルト湖からリチウム化合物を生産している会社。

会社によると炭酸リチウムの生産コストは下位1/4、水酸化リチウムの生産コストは下位1/2に入るそうだ。

戦略的にハイエンドの水酸化リチウムに注力しており、2020年の販売の55%が水酸化リチウムになっている(炭酸リチウム&塩化リチウムは4%)。

アルゼンチンの生産能力の拡張により今後は炭酸リチウムの販売も増やしていくとのこと。

 

3Qは前年比で売上高+43%の増収、営業利益-13.2Mドル→3.8Mドルの黒字転換、調整EBITDA0.9Mドル→14.9Mドルの増益だった。

前年比では大幅な増収増益だが、2Q比で見ると減益となっている。前回の決算で下半期は上半期に比べて販売価格の上昇加速が期待できると言っていたので、減益というのはネガティブサプライズだった。

減益の理由として挙げられているのは販売数量の減少とコスト増加。サプライチェーンの混乱や中国では電力不足による操業停止があったとこのこ。販売価格の上昇はこれらのマイナス要因によって打ち消された。

ただし、コスト増加の大部分は一時的で(どれくらい続くかは不明としながら)4Qにはかなり解消されると見ているようだ。

また、アルゼンチンの炭酸リチウムの生産量は減っていないことから、3Qに減少した販売数量は今後の四半期で取り返すことができる見込み。中国の水酸化リチウムプラントが操業停止したため、4Qは炭酸リチウムの販売比重が高まるとのこと。

3Qの数字は悪かったものの通期のガイダンスは売上高390-410Mドル、調整EBITDA62-72Mドルに引き上げている。

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なお、足元でリチウムの市場価格が大幅に値上がりしているが、ライベントは昨年のうちに販売数量の大半を年間ベースで契約しているため業績への影響は限定的となっている。

業績への影響が本格化するのは2022年で、来年は販売数量の100%が現在の市場環境の下で価格設定されるそうだ。電話会議のコメントによるとこれまでに合意した最も低い値上げ幅で+20%以上とのこと。

 

販売形態に関しては、水酸化リチウムの大部分は複数年の固定価格契約となる。

炭酸リチウムはいまのところ販売数量が少ないため特に明確な方針を示さないようだ。

 

拡張計画については変更なし。

ベッセマーシティ(5Ktの水酸化リチウム)は2022年3Qまでに商業生産開始。

アルゼンチンのフェーズ1(10Ktの炭酸リチウム)は2023年の1Qまでに、フェーズ2(10Ktの炭酸リチウム)は2023年4Qまでに商業生産開始という目標。

あとはネマスカについて今後数週間で重要な決定が下されるとのこと。

 

決算後に株価は時間外で大幅に下がったが、翌日はやや上げて31.33ドルとなった。業績悪化の理由がきちんと説明されたのと、そもそもこの会社は今期の業績に何も期待されていないためだと思う。

業績が低迷中なので今期のPERは参考にならない。2018年のピーク業績とその後の希薄化株式数で計算するとPERは50倍くらいになりそう。割高な数字。

なお、電話会議で現在の環境でなら2018年のピーク業績も達成可能というコメントが出ている。

アルゼンチンのフェーズ1・2がフル稼働してキャパシティが倍増すればPERも半分に下がるが、それが実現するのは2025年くらいになりそう。

 

ライベントには正直あまりいい印象はない。決算では悪い材料が出てくることが多いし、キャパシティの拡張や資本調達も他社よりも動きが遅かった。結果としてリチウム事業の規模はアルベマール、SQM、ガンフォンと大きな差がついてしまった。リン酸鉄リチウムバッテリーのシェア拡大によって水酸化リチウムへ集中する戦略にも逆風が吹いている。

ただ、来年は販売数量の100%が価格改定されると言っているし、2年後にはキャパシティも倍増する。拡張計画はもともと40Ktだったのでさらなる積み増しも期待できる。業績的には来年以降に大きく伸びることが期待できる。