LTHM ライベント 2022年2Q決算

リチウム準大手。

アルゼンチンのオンブレ・ムエルト塩湖から炭酸リチウムを生産し、アメリカや中国で水酸化リチウムに加工している。

生産コストは低く、会社によると炭酸リチウムでは下位1/4、水酸化リチウムでは下位1/2に入るそうだ。

戦略的にバッテリー向けの水酸化リチウムに注力しており、2021年の売上高の49%が水酸化リチウムになっている。炭酸リチウム&塩化リチウムは17%。

用途別では電池向けが売上高の57%を占めている。

 

2Qの業績は、前年比で売上高+114%の増収、営業利益5.4Mドル→84.7Mドルの大幅増収、調整EBITDA+494%の増益だった。

売上高 218.7Mドル(前年比+114%)

営業利益 84.7Mドル(前年比+1,469%)

純利益 60Mドル(前年比+823)

調整EBITDA 95Mドル(前年比+494%)

調整希薄化後EPS 0.37ドル

 

四半期の売上高、営業利益、調整EBITDAの推移が下のグラフになる。

業績は2020年3Qを底に回復が続いている。1Qに営業利益と調整EBITDAが過去最高を更新したが、2Qはそれを8割前後も上回る大幅な増益となった。

好調な業績は販売価格の上昇が原因。未契約だった水酸化リチウム(全体の1/4)と炭酸リチウムの値上がりが反映されたそうだ。また、ブチリチウムとリチウムメタルの販売価格も年間ベースからより短期にシフトしたとのこと。

ただ、ライベントは主力製品である水酸化リチウムの3/4を複数年・固定価格で販売しているので、2Qがこれほど伸びたのはやや意外だった。

販売数量はわずかに減少。これはCOVIDによる中国での物流混乱などが原因で需要の減少ではないそうだ。

 

リチウム市場の供給不足が少なくとも2023年前半まで続くという見通しから、通期のガイダンスが再び上方修正された。

新たなガイダンスは、売上高800~860Mドル(中央値で前年比+97%)、調整EBITDA325~375Mドル(中央値で前年比+404%)。

 

今後の拡張計画には変更なし。

・ベッセマーシティの水酸化リチウム年産5Ktの拡張は、2022年3Qに完了し、4Qに商業生産に入る。業績に貢献するのは2023年の初めからとなる(原料となる炭酸リチウムの拡張が必要)。

・アルゼンチンにおける炭酸リチウムの拡張は、最初の年産10Ktが2022年末に完成し、2023年の1Qに商業生産を開始する。次の年産10Ktは2023年末までに完成する予定。 

・2023年末までに中国で年産15Ktの水酸化リチウム生産設備を追加する。

・ライベントが50%出資するネマスカは3Qに最終投資決定を行う予定。ネマスカは水酸化リチウム年産34Ktの垂直統合プロジェクト。生産開始は2025年の後半という計画。

 

2022年の設備投資は300~320Mドルで変更なし。2Qまでに132Mドルを支出した。

ライベントは2022~2024年にかけてネマスカを除き1Bドルを投資する計画を発表している。この投資資金は事業からのキャッシュフローで賄う予定。

2022年の営業キャッシュフローの予想は280~340Mドルに引き上げられている。今後も生産量の増加によってさらにキャッシュフローが改善されるそうだ。

 

今四半期のビッグニュースとしてゼネラルモーターズとの長期契約の締結がある。ライベントは2025年から6年間にわたり水酸化リチウムを供給する。

特筆すべきは、2022年に前払いとして198Mドルが支払われること。ライベントは財務的な余裕がないので、投資資金が事前に得られるというのはかなり助かると思う。

なお、販売価格については市場ベースの変動要素が含まれるが、両社の収益を守るためのメカニズムも導入されるそうだ。

 

決算は好調だったが、翌日の株価は大きく下げた。好決算が織り込み済み+決算前日に株価が上げていたこともありそう。

現在の株価は24.66ドル、時価総額は4.4Bドルとなっている。過去1年程度で見ると横ばいのレンジが続いている。

PERは、2Qの調整希薄化EPS0.37ドルを単純に年換算すると16.6倍となる。同業の10倍前後と比べると高い。

ただ、ライベントの生産キャパシティは来年2倍、3年後に3.5倍(ネマスカを入れると5倍超)になるので、数量の伸びは他社よりも大きくなると思う。

リチウム価格の高値が続けば、前年末に複数年・固定価格で契約した水酸化リチウム3/4の値上がりも期待できそう。

この会社は過去に期待を裏切ることが多かったので個人的にはあまり評価していないが、先行きの業績には期待できるのかなと思う。

他の新興企業の時価総額を見ると、ピルバラ6.2Bドル、オールケム5.4Bドル、リチウムアメリカズ3.7Bドルとなっている。長い生産実績があり、大幅な拡張計画も発表しているのを考えると、ライベントの評価は低いのではないかという気がする。