LTHM ライベント 2022年1Q決算

リチウム準大手。

アルゼンチンのオンブレ・ムエルトから炭酸リチウムを生産し、アメリカや中国で水酸化リチウムに加工している。

生産コストは低く、会社によると炭酸リチウムでは下位1/4、水酸化リチウムでは下位1/2に入るそうだ。

戦略的にバッテリー向けの水酸化リチウムに注力しており、2021年の売上高の49%が水酸化リチウムになっている。炭酸リチウム&塩化リチウムは17%。

用途別では電池向けが売上高の57%を占めている。

 

1Qの業績は、前年比で売上高+56%の増収、営業利益1.7Mドル→46Mドルの大幅増収、調整EBITDA+380%の増益だった。

売上高 144Mドル(前年比+56%)

営業利益 46Mドル(前年比+2,612%)

純利益 53Mドル(前年赤字)

調整EBITDA 53Mドル(前年比+380%)

調整希薄化後EPS 0.21ドル

 

大幅な増収は販売価格の値上がりのため。ライベントは主力製品である水酸化リチウムの3/4を複数年・固定価格で販売しているが、今年は販売量のすべてが2021年末の改定価格もしくは市場価格での販売となるため、リチウム価格の上昇が本格的に業績に反映されるようになった。

 

四半期の売上高、営業利益、調整EBITDAの推移が下のグラフになる。

2020年3Qを底に業績の回復が続いており、1Qの営業利益と調整EBITDAは過去最高を更新した。

 

決算と同時に通期ガイダンスが大幅に引き上げられた。

新たなガイダンスは、売上高755~835Mドル(中央値で前年比+89%)、調整EBITDA290~350Mドル(中央値で前年比+360%)。調整EBITDAは過去のピーク(2018年)の183Mドルを大きく超える。

前回のガイダンスと比較すると、売上高は+39%、調整EBITDAは+78%の上方修正となる。

 

上方修正の内訳は会社資料に掲載されている。

水酸化リチウム/炭酸リチウムが130Mドルの上振れ、ブチルリチウム/リチウムメタル等が95Mドルの上振れとなっている。後者は原材料のコスト上昇を価格転換したとのこと。

 

生産キャパシティの拡張計画もアップデートされた。

これまでの計画は、アルゼンチンの炭酸リチウムのキャパシティ20Ktを2023年に40Kt、2025年に60Ktに拡張し、アメリカの水酸化リチウムプラントに5Kt追加するというものだった。

 

今回は以下の計画が追加された。

・2025年に追加される炭酸リチウムキャパシティは従来より10Kt多い30Ktとなる。

・2023年末までに15Ktの水酸化リチウムの生産施設を中国に建設する。

・ネマスカの持ち分を25%から50%に引き上げる。ネマスカはスポジュメン鉱石から水酸化リチウム34Ktを生産する垂直統合プロジェクト。Whabouchi の資源量は44Mt@1.47%で中規模クラス。2025年に稼働する計画。出資の引き上げにあたって17.5M株の新株が発行される(希薄化10%弱)。現在の株価をもとにすると取得価格は500Mドル、プロジェクト全体では2Bドルとかなり割高感がある。

・水酸化リチウム10Ktのリサイクル工場の建設。場所は米国か欧州の可能性が高い。完成は早ければ2025年末。

 

これらのアップデートにより、2025年末の(ネマスカを除く)キャパシティは、炭酸リチウム70Kt、水酸化リチウム55Ktに拡張される。なお、リサイクルを除く水酸化リチウム45Ktの原材料にはアルゼンチンで生産する炭酸リチウム40Ktが使用される。

また、長期的な目標として、2030年までに炭酸リチウム100Kt、水酸化リチウム89Ktにキャパシティを拡大させるそうだ。

 

設備投資は2022~2024年にかけて1Bドルの見込み(ネマスカを除く)。

2022年の資本支出は中間値で320Mドル。

これら資金の大部分は事業が生み出すフリーキャッシュフローで賄う。今後2年間は増資の可能性は低いとのこと。

 

決算が良かったことから翌日に株価は+30%も上げた。現在の株価は28.55ドルで時価総額は4.6Bドルとなる。

1Qの調整EBITDA53Mドル、通期の調整EBITDAのガイダンス320Mドル(中央値)、1Qの調整希薄化EPS0.21ドルから単純に計算すると、今期の調整希薄化EPSは1.26ドルくらいになる。このEPSで計算すると今期PERは23倍程度。

割安な数字ではないが、今後4年で炭酸リチウムのキャパシティが3.5倍になり、ネマスカやリサイクルが加わればかなり割安になりそう。あくまでもリチウム価格の高値が続くことが前提の話だが。