AKE.AX オールケム・リミテッド 2022年6月期4Q決算

オロコブレとギャラクシー・リソーシズの合併によって誕生した会社。リチウム準大手。オーストラリア上場。

アルゼンチンの Olaroz から炭酸リチウムを、オーストラリアの Mt Cattlin からスポジュメン精鉱を生産している。

開発中の資産は、アルゼンチンの Sal de Vida、カナダの James Bay。

 

2022年6月期はリチウム価格の高騰を背景に黒字化を果たした。

売上高も前年の86Mドルから770Mドルまで大幅に増加している。

 

PLを見ると、粗利益605Mドルで粗利益率79%、税前利益430Mドル、株主に属する純利益305Mドル、希薄化EPS0.51ドルとなっている。

上半期(2021年7-12月)の売上高が192Mドル、純利益が16Mドルだったので、2022年の半年間で売上高577Mドル、純利益289Mドルを稼いだことになる。

 

営業キャッシュフローは475Mドル。

投資キャッシュフローは-72Mドル(合併により取得した現金が+209Mドルあった)。

現金同等物は663Mドルで、前年の258Mドルから大きく増加した。

有利子負債は311Mドルで、手元キャッシュを大きく下回る水準になった。

 

次に各プロジェクトの稼働・開発状況を見ていく。

 

・Mt Cattlin(持分100%)

2022年6月期の売上高は452Mドル、EBITDAIXは336Mドル、純利益197Mドルだった(2021年8月25日~2022年6月30日の期間)。

グループ全体に占める比率は、売上高が59%、EBITDAIXが65%で Olaroz を大きく上回る。

 

四半期のスポジュメン精鉱の生産量と販売価格の推移は下のグラフの通り。

販売価格は4-6月期に5,000ドル近くまで急騰している。2021年1Qと比べると15倍近い値上がりとなる。

一方で4-6月期の生産量は大幅に減少した。生産コストも1-3月期の349ドル/トンから803ドルまで一気に上がっている。

 

2023年6月期のガイダンスは、生産量140-150Kt(前年同期193Kt)、生産コスト~900ドル/トンと非常に悪い数字が出てきた。

採掘場の移行中に地質上の問題が出たとの話だ。経営陣はこの問題を今期中に解決し、24年6月期には180Ktの生産量に戻せると考えているようだ。

一方で、生産量の減少という問題を最小限にするために、2023年1Hに130Ktの低品位(1.1~1.3%)のスポジュメン精鉱を既存顧客に販売するとのこと。この製品は既存の備蓄品と工場からの製品の組み合わせでこれまでは販売していなかった。

販売価格は500~600ドル。この価格であれば収益性があるそうだ。

 

Mt Cattlin の鉱山寿命を延ばすための拡張採掘プログラムも進んでいる。資源量は前年から2割ほど増加して13.3Mt@1.2%となった。

ただ、Mt Cattlin はもともと資源量が少ない鉱山であるし、今回のようなトラブルがあると先行きは大丈夫なのかなと疑ってしまう。

足元ではスポジュメン鉱石の価格が急騰しているだけに、今期の生産量が落ちるのはかなり残念な話だと思う。

 

・Olaroz(持分66.5%)

2022年6月期の売上高は293Mドル、EBITDAIXは220Mドル、純利益96Mドルとなった。

年間生産量は12,863トン。2017年からほぼ横ばいで推移している。このうちバッテリーグレードの比率は54%となっている。

生産コストは4,282ドル/トン。こちらも多少の変動はあるが4,000ドル前後で横ばいが続いている。

 

四半期の生産量と販売価格の推移は下のグラフの通り。

生産量はほぼ横ばいで推移している。

一方で4-6月期の販売価格は41,033ドルまで急騰した。底値の3,623ドルから10倍以上に上昇している。

 

ステージ2の拡張プロジェクトは建設の91%が完了した。最初の生産は2022年12月を予定している。

ステージ2では年産25Ktのテクニカルグレードの炭酸リチウムを生産する。

この炭酸リチウムの一部は、現在立ち上げ中の楢葉のプラント(持分75%)に供給されて、バッテリーグレードの水酸化リチウムが生産される。楢葉のキャパシティは年産10Ktで、最初の生産物は2022年12月になる予定。

 

Olaroz は資源量のアップデートもされている。精測・概則・予測資源量は6.4Mtから16.2Mtに大幅に増加した。

Olaroz に隣接する Cauchari(買収したアドバンスド・リチウムの資産)を含めると22.5Mtという膨大な資源量となる。

 

・Sal de Vida(持分100%)

アルゼンチンの塩湖プロジェクト。隣ではライベントが炭酸リチウムを生産している。6.8Mt@752mlと十分な資源量。

今年の1月に年産15Ktの炭酸リチウムを生産するステージ1の建設が始まった。2023年の下半期に稼働する予定。

 

・James Bay(持分100%)

カナダの鉱山。資源量は40.3Mt@1.3%。現時点では中規模だが、探査によってさらなる資源量の拡大も見込めるそうだ。

2021年12月にフィージビリティスタディが発表されている。

スポジュメン精鉱の年間生産量は321Kt、販売価格が約1,000ドル/トンで、税引前のNPVが1.42Bドルとなる。鉱山寿命は19年。CAPEX286Mドル。OPEX333ドル/トン。

建設開始は2023年1Q、試運転が2024年上半期という計画。前回よりも建設開始が半年遅くなっている。

 

 

オールケムの株価は2020年に底を打ち、現在は13.91豪ドルと前回2018年のピークをはるかに超える水準まで上昇している。ボラティリティが大きいが、ここ1年で見ても値上がりしている。

現在の時価総額は8.87B豪ドル(≒6.1Bドル)。

2022年の1-6月に300Mドル近い純利益を稼いでいるので、足元の勢いが続けばPER10倍前後の水準になりそう。

炭酸リチウムやスポジュメン精鉱の販売価格が値上がりすることで業績のさらなる改善も期待できる。

オールケムの販売価格は、炭酸リチウムが1Q27,236ドル、2Q41,033ドル、スポジュメン精鉱が1Q2,178ドル、2Q4,992ドルだった。市場価格と比べると価格の上昇余地が残っている。リチウムの高値がいつまで続くのかという問題はあるが。

ただ、利益の6割を稼ぐ Mt Cattlin にトラブルが発生していること、Olaroz もステージ2の立ち上げ期に当たることから、今期の業績についてはやや不透明感がある気がする。

 

中長期で見るとオールケムの生産量は大幅増加が見込まれている。

2025年に Mt Cattlin が生産停止しても、Sal de Vida や James Bay の稼働により2026年の生産キャパシティは現在の3倍に増える計画。