深センと香港に重複上場している中国のリチウム大手企業。川下のリチウム資源開発から川上のバッテリー製造やリサイクルまで手掛けている。中国では天斉リチウムと並ぶ2強となる。
1Qは前年比で売上高-19%、営業利益-92%、純利益-97%と大幅な減収減益だった。営業キャシュフローもマイナスになっている。
純利益は2017年~2018年の上半期をピークに右肩下がりに落ちている。
バランスシートを見ると現金同等物2,669M人民元に対して、短期借入金2,112M人民元、長期借入金1,954M人民元、社債768M人民元となっている。フリーキャッシュフローのマイナスから借入金が徐々に増加している。
1Qは数字の報告だけで情報が少ない。少し前に2019年のアニュアルレポートも出ていたのでそちらも見てみる。
2019年は前年比で売上高+8%、純利益-68%だった。純利益は2年連続の減益。EPSは0.28人民元。
セグメントの内訳はリチウム化合物・リチウムメタルが売上高の79.1%、粗利益の88%を占めている。リチウムバッテリーは2018年の7.5%から2019年の11.5%に大きく増加した。会社は全固体電池の開発に注力している。
地域別の売上高は中国本土が65%、海外が35%となっている。ただし粗利益では海外が半分以上を占める。
フリーキャッシュフローは2年連続の大幅マイナス。営業キャッシュフローの669M人民元に対して投資キャッシュフローが-2,822M人民元と大きい。
リチウム化合物の生産キャパシティーや生産量は下の表のとおり。
2019年はキャパシティの増加は少なかったが、利用率の向上によりリチウム化合物の生産量は42Kt LCEから54Kt LCEに大きく増えた。
今後の拡張計画だが、年間生産量25Ktの水酸化リチウムのラインを2020年3Qに稼働させる予定となっている。
さらに2021年にアルゼンチンの Cauchari-Olaroz が生産を開始する計画。ステージ1の生産量は年間25Ktでガンフォンは生産量の75%を購入する。
会社は近い将来に炭酸リチウム・水酸化リチウムの生産量を110Ktまで増やすとしている。
なお、会社によるとガンフォンは水酸化リチウムの生産で世界シェア2位とのこと。水酸化リチウムの顧客にはLG化学、テスラ、サムスンSDIといった世界的な名前が並ぶ。
水酸化リチウムの2019年の需要は79Ktで、そううちバッテリーが62Ktを占めるそうだ。ガンフォンは2025年までの水酸化リチウムの年間成長率を38.65%と見積もっている。
ガンフォンの持つ上流権益は下のマップに示されている。
主力の Mt Marion は持分を50%に引き上げた。年間キャパシティはスポジュメン精鉱400Kt。現在はガンフォンが生産量のすべてを購入しているが、2020年以降は購入量が50%に減る。
これを埋めるのがピルバラとアルチュラの Pilgangoora になる。ピルバラからは(フェーズ1のうち)年間160Ktまでの購入、アルチュラからは最低で年間70Ktの購入という契約になっている。なおガンフォンはピルバラに6.86%出資している。
Cauchari-Olaroz は持ち分を50%に引き上げたほかリチウムアメリカズの株式16.7%を保有する。
新たな投資はバカノラリチウムへの25.8%の出資とバカノラの開発する Sonora への22.5%の投資。Sonora はクレイからの生産となるが現状でクレイからリチウム化合物を生産している会社はない。
株価の方は2019年秋の10香港ドルを割れを底に3倍近くに値上がりしている。他のリチウム会社が低迷する中での独歩高という状況。
原材料のスポジュメン精鉱の価格が下落する一方で、販売価格の高い国際的な顧客を獲得することでマージンの向上が期待されるのかなと思う。ただ、業績は低迷している。
ガンフォンの強みは垂直統合にこだわらないことで無理なくスピーディーに生産能力を拡大しているところかと思う。一方で垂直統合の会社に比べるとコスト競争力では劣るはず。
ガンフォンのドル換算の時価総額は8.2Bドルでアルベマールの6.8BドルやSQMの6.1Bドルを大幅に上回っている。リチウム専業でかつ大手の一角という貴重な会社だがバリュエーションはやや割高感があるように思う。