ALB アルベマール 2020年1Q決算

リチウム、臭素、触媒などを生産している化学メーカー。

リチウムでは最大手の一角でチリのアタカマ湖とオーストラリアのグリーンブッシュ鉱山(持分49%)からリチウム化合物を生産している。アタカマ湖とグリーンブッシュ鉱山はかん水と鉱石でベストの資産。

 

1Qは前年比で売上高-11%、営業利益-20%、調整EBITDA-13%、調整希薄化EPS-19%だった。希薄化EPSは1.01ドル。臭素とリチウムの販売が予想より良かったことやコスト削減効果で調整EBITDAはガイダンスを上回った。

セグメント別では、リチウムが売上高-19%、調整EBITDA-32%、臭素が売上高-7%、調整EBITDA+6%、触媒が売上高-18%、調整EBITDA-21%となっている。

 

四半期ごとの売上高の推移が下のグラフ。リチウムは前四半期比で大きく減少している。

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四半期ごとのセグメント別のEBITDAの推移。リチウムと触媒が落ち込んだが臭素は堅調。落ち込んだリチウムと触媒もそれなりの黒字額を維持している。

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リチウムは数量、価格ともに前年比で-10%の下落だった。数量は顧客の過剰在庫のため、価格は4Qにアナウンスした通り1度かぎりの価格譲歩を行ったため(アルベマールは長期契約が基本なので例外的な措置)。

2Qの調整EBITDAは前年比ではマイナスも前四半期比ではわずかなプラスになるとの見通し。売上高の6割を占める電池向けが底堅い。スペシャリティとテクニカルグレードは弱いとのこと。

会社は連続増配(26年)と格付けの維持を優先事項とするため資本支出を削るそうだ。これに伴い最も大きな資本支出である La NegraⅢ&Ⅳ と Kemerton の開発に遅れが出るとのこと。

 

リチウム市場は相変らず厳しい環境が続いており開発計画の停止や延期が相次いでいる。

直近の最も大きなニュースは天斉リチウムがグリーンブッシュ鉱山(51%)と Kwinana の水酸化リチウムプラントの売却を検討しているというものだろう。天斉リチウムは積極的な拡張やSQMへの投資がたたって資金繰りが悪化しているそうだ。

普通に考えればグリーンブッシュ鉱山の49%を保有するアルベマールが買収の筆頭候補となる。アルベマールも関心を持っているというコメントを出している。ただ、アルベマールは昨年にオーストラリアの鉱山 Wodgina を買収しており、これがスポジュメン価格の急落を受けて休鉱となっている。現在の状況でさらなる買収を行えるかは分からない。

 

臭素セグメントは堅調だったが、COVID-19の影響は2Qから始まり下半期も続くそうだ。2Qの調整EBITDAは~-20%との見通し。

臭素の販売は難燃剤(エレクトロニクス、自動車、建設など)が50%程度、続いて油田の採掘向けが10%程度となっている。後者は2021年により悪化するとのこと。

臭素ビジネスは2009年に売上高-30%減、EBITDAマージン16%まで落ち込んだこともあるが、過去20年間で赤字になったことはないそうだ。

 

触媒セグメントの2Qの調整EBITDAは~-50%の下落という見通し。

アルベマールの触媒はガソリン製品を得るためのFCCとディーゼルや石油精製処理のHPCに分かれている。原油価格が落ち込むと通常はFCCが伸びてHPCが落ちる。2008~2009年と2014~2015年はFCCがややアップしたのに対してHPCはそれぞれ-30%と-50%落ちたそうだ。しかし今回は交通量の減少からどちらも落ち込むとのこと。

 

バランスシートを見ると現金同等物553Mドルに対して短期借入金は35Mドル、長期借入金3,105Mドルとなっている。

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債務返済金額は2020年35Mドル、2021年433Mドルに対してキャッシュと融資枠で1.7Bドルを確保しているそうだ。

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アルベマールのここ数年の営業利益は600Mドル程度となっている。長期で見るとリーマンショックの2009年でも黒字を維持している。

財務的には鉄壁ではないが、収益の安定性と債務返済スケジュールの余裕から当面の問題はなさそうに思える。

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2Qのガイダンスは売上高700-775Mドル、調整EBITDA140-190Mドル。中央値の前年比は売上高-17%、調整EBITDA-37%となる。

なお、会社は2020年通期のガイダンスを取り下げている。

 

PERは実績10.6倍、予想(YahooFinanceの予想EPSを使用)14.9倍となる。景気が回復するとともにリチウム市場が強気に転じるという見通しであれば割安感のある水準だと思う。