アルベマールのプレゼンテーション

インベスターズデイのプレゼンテーションでリチウム市場について詳しく解説していた。

プレゼンテーション資料(PDF)

トランスクリプト

 

■需給

・2019年の需要は275Kt(以下リチウムの単位は炭酸リチウム換算)の見通し。

・2025年の需要は800~1,200Ktとなる予想。ベースケースは1,000Ktで年間24%の成長率。EVのシェアは3%から18%に増加し、EVのリチウム需要に占める割合は現在の35%から最大で70%まで上がるという想定。

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■テクノロジー

・ニッケルメインの正極材への移行によって水酸化リチウムの需要が増加するという予想。現在の炭酸リチウム75:水酸化リチウム25という割合がベースケースでは2025年には炭酸リチウム40:水酸化リチウム60になる。

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・さらに次世代の全個体電池などでは負極材やセパレーターにもリチウムが使用されることで使用量の増加が期待できる。

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■サプライチェーン

・現在の供給はかん水由来が145Kt、鉱石由来が180Kt。これが2025年にかん水400Ktと鉱石650Ktになるとの予想。

・リチウム化合物の割合は2025年に炭酸リチウム410Kt、水酸化リチウム525Kt、スペシャリティ105Ktとの予想。

・鉱石はかん水より増加が大きく、水酸化リチウムは炭酸リチウムよりも増加が大きい。

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〇かん水

・かん水からの供給量は145Ktで、そのうち炭酸リチウムが80%、水酸化リチウムが20%。

・会社別だとアルベマール40kt、SQM47kt、ライベント20Kt、オロコブレ12kt、その他26Kt。かん水からリチウム化合物を生産しているのはすべて垂直統合された会社。

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〇鉱石

・鉱石からの供給は180Ktで、そのうち炭酸リチウム65%、水酸化リチウム35%。

・会社別だとアルベマール50-55Kt、ティエンチ50-55Kt、ガンフォン40-45Kt、その他30Kt。アルベマール、ティエンチー、ガンフォンの一部のみが垂直統合されている。

・オーストラリアで鉱石を採掘している会社(ギャラクシー、ピルバラ、アルチュラ他)はリチウム化合物を生産していない。

・オーストラリアの鉱石を原料にリチウム化合物を生産しているのはほとんどが中国のコンバーターだが、キャッシュコストが価格を下回っている会社が存在する。そのため設備稼働率が低く、実際の生産量はキャパシティを大きく下回る。

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■需給と価格

・現在は供給過剰の状態。水酸化リチウムよりも炭酸リチウムで供給過剰が大きい。

・炭酸リチウムのコストカーブは水酸化リチウムよりも険しい。かん水が鉱石よりもコストアドバンテージを持つため。水酸化リチウムではかん水のコストアドバンテージが少ない。炭酸リチウムから水酸化リチウムのコンバートは1~2ドル/kgくらい。

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・鉱石の生産や中国のコンバーターの商品化は予想より早かった。鉱石は生産までがかん水より容易。

・中国の限界生産者のキャッシュコストは7ドル/Kg。

・2025年のベースラインの予想では、水酸化リチウムの価格は炭酸リチウムよりも高い。需要が大きく高コストの水酸化リチウムも必要になるため。技術の進展が遅く水酸化リチウムへのシフトが進まない場合は炭酸リチウムが不足する。

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■アルベマールのリチウム部門

・アタカマとグリーンブッシュズというかん水と鉱石で最もグレードの高い資産を持つ。グレードが高いことは通常はローコストを意味する。

・アタカマ→チリLa Negra →炭酸リチウム44Kt。2021年に向けて40Ktの拡張を予定。

・グリーンブッシュズ(49%の持ち分と50%のオフテイク)→中国Jiansu&Sichuan→水酸化リチウム。中国のキャパシティは35Kt。オーストラリアKemerton(キャパシティ50Kt)を建設開始。グリーンブッシュのスポジュメン精鉱160Ktは240Ktまで拡張できる能力を持つ。

・Wodginaはティア1資産。グレードは普通だが資源量が大きい。

・現在使用しているのは利用可能キャパシティの25%以下。2021年に175ktへの拡張を完了しても利用可能キャパシティの60%にとどまる。

 

■アルベマーレの業績

・2024年の目標は、調整EBITDA1.5B~1.8Bドル(年間成長率14%)、EBITDAマージン32%~36%、フリーキャッシュフロー800M~1Bドル。

・臭素ビジネスの売上高成長率は年率1.5~2.5%、EBITDAマージンは28~32%のレンジ。

・触媒ビジネスの売上成長率は年率3~5%、EBITDAマージンは26~28%レンジ。

・リチウムの売上高成長率は年率12~17%、EBITDAマージンは40~45%レンジ。価格の上昇がなくともこの数字を達成できる。2020年は底の年となる。

・リチウムの売上高の6割がエナジーストレージ向けで、そのうち9割が長期契約(3~5年)。