銅、金、ニッケルの資源開発と製錬、電子材料などの生産を行う会社。
銅権益生産量は世界20位の中堅、ニッケルメタルの生産量は世界5位の規模とのこと。
まずは2005年以降の当期純利益と主要生産物である銅・ニッケル・金価格をグラフにしてみる。
業績のブレは大きい。また、金価格はあまり業績に影響がなさそうなのが分かる。
セグメント別の利益。主要なセグメントは資源、製錬、材料の3つ。
資源は赤字にもなっておりブレが大きい。製錬は好不調はあるものの安定して黒字を計上している。材料は資源や製錬に比べると寄与度が小さい。
資源は銅と金。
2015年と2016年の赤字期間には銅価格が急落している。この時期に金価格は安定していたので、資源セグメントは銅価格に左右されそう。
製錬は銅とニッケルと金だがそれぞれの貢献度は不明。
セグメント利益と銅・ニッケル価格を比べても、銅とニッケルがおおむね連動して動いているためどちらの影響が強いのか分かりにくい。
材料では電池材料が売上の半分以上を占める規模に成長している。
住友金属鉱山の生産する正極材はパナソニックを通じてテスラに提供されている。テスラの使用するNCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム)はニッケルの比率の高い正極材で、世界的にEVの正極材はニッケルメインに移行することが予想されている。ニッケル素材から正極材までを手掛ける住友金属鉱山はユニークな立ち位置にある。
決算短信の補足情報に製品別の売上高が掲載されていたのでグラフにしてみる。
製錬銅の割合が一番大きく、材料、製錬ニッケル、製錬金が続くといった感じ。
製品別売上数量を見ると製錬銅はゆるやかに増加している。
権益別の銅の生産量を見るとモンレシー10万トン(鉱山全体の生産量40.1万トン)、セロベルデ8.1万トン(48.2万トン)、シエラゴルダ3.3万トン(10.4万トン)、カンデラリア1.9万トン(12万トン)となっている。なお、シエラゴルダは2021年に現状の2倍となる生産量20万トンが期待されるとのこと。
その他にはチリのケブラダ・ブランダの権益25%を取得した。生産開始は2021年で年間生産量24万トンの計画。
会社は長期ビジョンとして権益分の銅の生産量30万トンを目指すとしている。
製錬ニッケル(フェロニッケル含む)の製品別売上数量はやや低迷している。
タガニート、コーラルベイの6万トン体制が構築されたものの2018年は設備トラブルにより生産量が前年を下回った(なお、2015年はコーラルベイとタガニートが15か月決算のため大きくなっている)。
ニッケルの新規投資計画はインドネシアのポマラプロジェクトがある。2020年代半ばの操業でニッケル生産量4万トンが目標とのこと。会社は長期ビジョンとしてニッケル生産量15万トンを目指すとしている。
先に書いたようにニッケルはEVの普及により需要増加が期待されている。特にEVに使用されるクラス1ニッケルは主に硫化鉱から生産されているが新たな鉱山が不足している。住友金属鉱山は低品質の酸化鉱からクラス1ニッケルを作り出すHPALを2カ所も成功させている実績を持つ。このHPALは技術的に難しいようで失敗プロジェクトが多い(HPAL:Upping The Pressureにこれまでのプロジェクトの一覧がある)。
現在の株価は3,479円で予想PERは16倍程度となる。好調時にはEPS300円以上を出しているので、それを基準にすれば割高感はないと思う。
住友金属鉱山はEV関連株として面白そうだが、実際の業績はニッケルよりも銅に左右されそうなのが残念。