リチウム株への投資 ⑤リチウム資源と化合物の生産

リチウム資源はかん水系と鉱石系に分かれる。

かん水系は初期の開発コストが高く時間がかかる一方で生産コストは低い、鉱石系は初期の開発コストが低く時間も短い一方で生産コストは高いとされてきた。

しかし水酸化リチウムの需要が高まったことでこの構造が変わっている。鉱石からは直接水酸化リチウムを生産するのに対してかん水からは炭酸リチウムを経て水酸化リチウムを生産するため、水酸化リチウムに関しては両者のコスト差が大きくないためだ。

水酸化リチウムの需要が増えているのはNCM811やNCAといったニッケル系の正極材への移行が予想されているため。ニッケル系の正極材はエネルギー密度が高く航続距離を延ばすことができる。

コスト面での優位性が低くなったこと、開発や生産の容易さ、カントリーリスクといった点から現在のリチウム資源開発はオーストラリアの鉱山へのシフトが鮮明になっている。

ただし、ニッケル系の正極材への移行がどれくらいのスピードで進むのかには異論もある。技術的に難しく予想より進まないのではという見方もある。

 

・かん水系の資源

チリのアタカマ湖(アルベマール、SQM)が有名。他にはアルゼンチンのオンブレ・ムエルト湖(ライベント)、同じくアルゼンチンのオラロス湖(オロコブレ)から生産が行われている。

いずれも鉱石系に比べると資源量が大きく、炭酸リチウムの生産コストも4,000ドル/トン程度と競争力がある。

f:id:sapa21:20190812133047p:plain

Neo Lithium Presentation

 

・鉱石系の資源

グリーンブッシュ(ティエンチ&アルベマール)の資源量とグレードが高い。資源量では Wodgina(アルベマール&ミネラルリソーシズ)やピルガングーラ(ピルバラミネラルズ)も大きい。

マウントマリオン(ガンフォン&ミネラルリソーシズ)の規模はそれらよりやや劣る。マウントキャトリン(ギャラクシーリソーシズ)やボルドヒル(タワナリソーシズ)は小規模。

f:id:sapa21:20190812125305p:plain

 

上で見たようにリチウム資源というのは数多く存在する。ただ、実際にリチウム化合物を生産している会社はそれほど多くない。アルベマール、SQM、ティエンチ、ガンフォン、ライベント、オロコブレ、それに中国のコンバーターといったところだ。

リチウムは炭酸リチウムや水酸化リチウムといった化合物を生産する川下部分では特殊化学品としての特徴を持つため単なるコモディティ商品ではない。化合物の生産は顧客の要望に合わせて行われるため品質への信頼性や供給の確実性が求められる。したがってリチウム市場には誰もが簡単に参入できるわけではない。