中国のリチウム大手。川上のリチウム資源開発から川下のバッテリー製造やリサイクルまで手掛けている。中国では天斉リチウムと並ぶ2強。世界でもトップクラス。深セン(002460)と香港(01772)に上場している。
2Q決算は大幅な増収増益だった。
税前利益には金融資産の評価益が543M人民元含まれているが、それを除いても大幅な増益となる。
売上高 4,025M人民元(前年比+69%)
粗利益 1,405M人民元(前年比+205%)
税前利益 1,638M人民元(前年191M人民元)
純利益 1,415M人民元(前年157M人民元)
EPS 1.04人民元
2Q単体で見ても業績の改善が加速している。特に売上高は過去最高を大きく更新した。
セグメントの売上高と利益はリチウムメタル・化合物がメインだが、リチウムバッテリーも売上高が9割近く伸びて黒字転換した。
年間の生産キャパシティは40.5Ktのバッテリーグレード炭酸リチウム、81Ktのバッテリーグレード水酸化リチウム、2Ktのリチウムメタルとのこと。
2020年末に50Ktの水酸化リチウムを追加した Xinyu は1Qにフル操業を達成した。また、Ningdu の17.5Ktの炭酸リチウムラインは改修により20Ktとなった。
今後の生産能力だが、2025年に少なくとも200Kt LCE、長期的には少なくとも600Kt LCEを目指すそうだ。
拡張計画で挙げられているプロジェクトは以下のとおり。
・46.7%の権益を持つ Cauchari-Olaroz は2022年に稼働。フェーズ1では40Ktの炭酸リチウムを生産する計画。
・88.9%の権益を持つアルゼンチンの Mariana は2021年に建設を開始する。フェーズ1では20Ktの塩化リチウムを生産する計画。
・Fengcheng City で年間50Ktのリチウム化合物を生産する。フェーズ1は25Ktの水酸化リチウム。
・Yichun City に年間7Ktのリチウムメタル・リチウム材料。
上流権益への投資も活発に行っている。
・Bacanora Lithium の買収。Bacanora の持つメキシコの Sonora はクレイからリチウム化合物を生産するプロジェクト。概測・精測・予測資源量は8.8Mtと非常に大きい。2023年に生産開始を目標にしている。
・マリにある鉱石プロジェクトの Goulamina の権益を50%取得。概測・精測・予測資源量は108.5Mt@1.45%と大型。DFSが完了している。
・Millennial Lithium を買収。アルゼンチンの Pastos Grandes が旗艦プロジェクト。概測・精測資源量4.1Mt(427mg/L)。そのほかに Cauchari-Olaroz に隣接するCauchari East を保有している。
ガンフォンの株価は絶好調で今年に入ってからも大幅に値上がりしている。
A株とH株を合計した現在の時価総額は45Bドルになる。アルベマールの28BドルやSQMの15Bドルよりも大幅に高い。
ガンフォン、アルベマール(リチウムセグメント)、SQM(リチウムセグメント)の2Qの売上高はいずれも300Mドル台で大差はない。足元と2025年(計画)の生産キャパシティもそれほど大きな差はなさそう。アルベマールとSQMはリチウム以外のセグメントの割合も大きいことを考えると、余計にガンフォンの時価総額の大きさが際立つ。
ガンフォンの評価が高いのは生産能力の拡大に成功した実績があるのかなと思う。上流資源の自社開発にこだわらずコンバーター能力に注力することで他社を大きく上回るスピードでキャパシティを積み上げてきた。
一方でガンフォンの問題は上流権益が少ないところかと思う。最近は立て続けに投資を行っているものの、現時点で稼働している自社保有の資源はマウントマリオンのみとなっている。マウントマリオンの生産キャパシティは炭酸リチウム換算で年間25Kt程度(ガンフォンの持分)にすぎない。これに加えて6.3%出資しているピルバラミネラルズとの契約もあるが、両者を合わせても炭酸リチウム換算で年間50Ktに満たない。足りない分はどこからか調達する必要があるが、十分に確保できるのか、原材料が値上がりしたときにマージンを確保できるかといったところに不安を感じる。
バリュエーションは、他のリチウム会社と同じく推測するのが難しい。
好調時のガンフォンのEPSは2018年の1.17人民元(2017年の方が高いがその他の収入が大きかった)。2018年の生産量は炭酸リチウム16.3Kt、水酸化リチウム14.7Kt、リチウムメタル1.5Ktだった。仮に生産量が3倍になり業績が3倍になったとしてもPERは依然として非常に高い。
アルベマールなどの他社との比較で見てもガンフォンは割高に感じる。