イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオと主に車載向けのUI開発ソリューションを提供している会社。
クリップスタジオはアマチュアからプロのクリエイターまで幅広く利用されているそうだ。イラストSNSの pixiv での使用率はNo.1とのこと。
2021年12月末の累計出荷本数は1,659万本で、うち73.6%が海外向けとなっている。
4Q累計の売上高は前年比+8%の増収、経常利益+90%の増益だった。
4Q単体だと売上高-1%の減収、経常利益+103%の増益となる。
3Qの業績に失速感があったため上方修正後の会社予想から下振れるかなと思っていたが、売上高こそ下だったものの営業利益と経常利益は予想数字を達成した。
セグメント売上高の年ベースの推移が下のグラフ。クリエイターサポートが右肩上がりに伸びているのがわかる。
※2017年にコンテンツソリューションをクリエイターサポートに統合している。
セグメント利益の推移を見ると、クリエイターサポートが利益を出す一方で、UI/UXが赤字を続けている。
続いてクリエイターサポートの四半期業績の推移。
2021年の通期では前年比で+21%の増収増益だったが、4Q単体は売上高+7%、セグメント利益+20%と減速している。売上高は2四半期連続で、セグメント利益は3四半期連続の下落となる。
ただ、2019年以前を見ると、セグメント利益は1Qをピークに下がる傾向があるので季節性もあるようだ。売上高については新型コロナ特需の反動があるのかもしれない。
クリップスタジオのサブスクリプションは順調に伸びている。
売上高に占めるサブスクの割合は3Q(7月~9月の平均)が37%、4Q(10月~12月の平均)が40%になっている。直近の1月は41.2%。季節性はあるが順調に上がっている。
サブスクリプションの3か月ARRも順調に伸びている。
とはいえ、今期のクリエイターサポート事業の売上高が63億円の予想に対して、直近のARRは18.3億円なので、セグメント売上高に占めるサブスクリプションの割合はまだまだ低い。
UI/UXの4Qは、売上高-26%の減収、セグメント利益0.8億円の赤字だった。
カンデラ社ののれんを償却したことで赤字は減ってはいるものの、依然として損失が続く。2021年通期では約5億円の赤字。今期も2.2億円の赤字予想。
2022年の会社予想は、前年比で売上高+12%の増収、経常利益+33%の増益。
うちクリエイターサポートは、売上高+9.6%の増収、営業利益+21.7%の増益となっている。
多少のブレはあるものの、おおむね中計の数字に沿った予想が出てきた。
株価はピークの1,279円から694円まで大幅に下がっている。現在の時価総額は239億円。
今期の予想PERは17.6倍。赤字のUI/UXを除いてクリエイターサポートの営業利益×0.7で計算すると15.8倍となる(この会社は営業外の損益もセグメント間の調整も少ない)。
PERは一時に比べてずいぶん低くなったものの、クリエイターサポートの売上高成長率も1桁に落ちているため、PEGで見ると割安感が増したとは言えないかもれない。
今後はクリエイターサポートが元の高成長に戻るかどうかが問題になりそう。
単に新型コロナ特需の反落だとすれば時間が経てば戻るかもしれない。2018年と2019年は前年比+25%の売上高成長率だった。ただ、クリップスタジオの市場規模がどれくらいあるのか見当がつかないのでいまいち確信が持てない。
あるいはサブスクへの移行で売上高が下押しされているという話もある。ただ、プロ版に関してはダウンロード価格5,000円に対してサブスク月額480円なのでそれほどマイナスの影響があるようには見えない。EX版だとダウンロード価格23,000円に対してサブスク月額980円なのでマイナスになりそうだが。