3663 アートスパークホールディングス 2020年4Q決算

イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオや車載向けのUI開発ソリューションを提供している会社。

クリップスタジオはアマチュアからプロのクリエイターまで幅広く利用されているソフトとのこと。累計出荷本数は1,000万本を突破しており、全体の60%以上が海外シェアとなっている。昨年は従来より利用可能だったiOS版に加えて windows・mac、andoroid でもサブスクリプション課金モデルの提供を開始した。

 

4Q累計の業績は前年比で売上高+18%の増収、経常利益+225%の増益だった。経常利益は期首の予想を大幅に上振れて着地した。

4Q単体だと売上高+28%の増収、経常利益-0.36億円→1.41億円の黒字転換となる。

 

セグメント別の業績。

クリエイターサポート事業は好調が続く。4Qは前年比で売上高+41%の増収、セグメント利益+207%の増益となった。

年間の累計だと売上高は前年比+33%の48億円、セグメント利益(営業利益)は前年比+111%の14.6億円。

f:id:sapa21:20210212214001p:plain

 

クリエイターサポート事業が好調な一方でUI/UX事業は赤字が続く。4Qは前年比で売上高-2%の減収、セグメント利益-1.75億円の赤字だった。3Qにカンデラ社ののれんを全額減損して償却費が減ったにもかかわらず赤字額は3Qより増えている。

年間の累計は売上高-11%減収の15.8億円、セグメント利益は赤字拡大の8.1億円の損失。

中期経営計画によるとこの事業の赤字はしばらく続く見込み。赤字額は21年に3億円、22年に2.4億円となっている。なお、のれん等の償却費も24年まで残る。21年~23年は1.2億円、24年に0.3億円の償却費。

f:id:sapa21:20210212214130p:plain

 

バランスシートには現金が29億円ある一方で有利子負債はゼロ、総負債は16億円。

 

今期の予想は売上高+5.7%増の67.3億円、営業利益+19.2%増の9.2億円、経常利益+17.3%増の8.7億円。

増収増益だが去年11月に発表した中期経営計画の売上高69.8億円、営業利益10.7億円より下振れしている。

決算と同時に発表した孫会社の売却により売上高6.7億円、経常利益0.31億円が消えるので売上高の下振れは説明がつきそうだが営業利益の下振れはよく分からない。

 

中期経営計画とのズレといった細かい点より気になるのが、クリエイターサポート事業の今期計画の弱さだと思う。

中期経営計画に記載されていた今期予想は売上高54.9億円・営業利益13.7億円だが、実績で売上高48億円・営業利益14.6億円も出ている。単純に比較すると今期は売上高+14%、営業利益は減益になってしまう。ここ2~3年の業績の伸びからするとかなり弱い。単に保守的な予想なのか、実績が巣ごもり特需でかさ上げされていたのか、UI/UX事業が予想以上に悪化しているのか、もう少し説明が欲しいところ。

 

現在の時価総額は165億円。今期PERは17倍だが孫会社売却による特別利益がある。経常利益×0.7で計算するとPERは27倍となる。

クリエイターサポート事業の実績のみで考えると、セグメントの営業利益14.6億円から税金30%を差し引いて10.2億円となりPERは16.5倍となる(この会社の営業利益と経常利益の違いは少ない。また、セグメントの調整額は1.22億円の利益だった)。

クリップスタジオの将来性やUI/UX事業の赤字をどう考えるかによって評価は変わるのだろうが、少なくとも割高感はないのかなと思う。