2021年の感想と2022年の投資スタンス

すでに1か月も過ぎてしまったが、昨年の感想と今年の投資方針を書いておく。

 

〇 昨年の感想

2021年のリターンはほどほどだった。

良かったのはリチウム株と日本の主力株で、特にリチウム株は大当たりした。

ただ、ひとつのセクターでポートフォリオの2割を超えないようにしていたことや、投機的なジュニア銘柄(すさまじい上昇だった)を避けていたため、リチウム株だけで全体のリターンを大幅に上げることはできなかった。

日本株はアートスパークやネクステージなど比較的大きく持っていた会社が上げてくれた。主力株の当たり外れは運次第なので、去年は運が良かったと思う。

 

一方でリターンの足を引っ張ったのが、キャッシュポジション、短期取引、中国ADR株だった。

キャッシュポジションは年間を通して3割くらいあったと思う。アメリカ株のバリュエーションが高く全力で買う気になれないことや、2~3年くらい前からリスク回避気味の運用を心掛けているため一定のキャッシュを持ち続けている。

短期取引は指数が下げたら売っていく行動を繰り返している。リーマンショック以降に株価が半値になるような本格的な暴落は起きていないので、この取引は長年にわたってかなり成績の足を引っ張っている。ただ、フルポジションで下げ相場を乗り切るのは自分には無理だと分かっているので、平常時に株のポジションを保つためのコストと割り切っている。

中国ADRは厳しい1年だった。持っていた株はほとんど暴落したし、特にヨウダオでは1日で株価が半減するという被害を受けた。ただ、もともと中国リスクは分かっていたことだし、長年中国株を持っていてあまり儲かっていないことから、中国ADRはポートフォリオの1割未満にとどめていた。現在は、バイドゥ、ビリビリ、アリババを少し残しているほか、H株のガンフォンリチウムのみ持っている。

中国株には2005年くらいから投資してるがあまり良い記憶がない。全体としてはGDPのように伸びないし、国有企業は株価に関心がないようだし、小型株は不正会計で突如取引停止になったりする。情報不足もあって、持っている会社の業績変動の理由もよく分からないことが多い。

唯一有望に思えたインターネット株も(政府の規制の前でも)競争の激しさから思うような成果は出なかった。ウェイボー、YY、MOMOなどは高成長・低PERでお買い得に見えたが、その後の業績が悪化したことで株価も低迷している。検索で絶対的な地位にあったバイドゥですら失速してしまった。業績も株価も一貫して良かったのはテンセントくらいではないだろうか。中国株は本当に難しいと感じる。

 

〇 今年の投資スタンス

年初から厳しい相場になっており、1月はかなりひどくやられてしまった。ただ、いまのところは調整+セクターローテーションの範囲かなと思っている。

グロース株や小型株の下げはきついものの、主要インデックスは調整レベルの下げだし、バリュー株は比較的持ちこたえている。

もちろんこの先に全面的な暴落が待っているかもしれないが、景気が大きく崩れない限りその可能性は低いのではないかと見ている。

 

景気については大した知識もないので適当な意見だが、今年も普通に拡大すると思っている。基本的に景気は拡大するものなので、よほど確信があるとき以外はリセッションに賭けるのは分が悪いと思う。

ましてや現在は新型コロナの落ち込みからの回復段階で勢いがある。

雇用はパンデミック前の水準まで戻っていない。

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Calculated Risk: Question #3 for 2022: What will the unemployment rate be in December 2022?

 

景気循環の先行指標である住宅市場も在庫が低水準なことから大きく崩れることはなさそう。

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Question #10 for 2022: Will inventory increase as the pandemic subsides, or will inventory decrease further in 2022?

 

アメリカ経済を主導する個人消費は、足元のインフレにより実質所得が下押しされているが、コロナ禍で積み上がった過剰貯蓄や住宅価格の上昇に伴う資産効果の下支えが期待できる。

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米国経済展望2022年1月

 

インフレについてはいまの水準が続くなら警戒する必要がありそう。厳しいリセッションにつながりかねないし、 インフレ時の株式リターンは悪いというデータがある。

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Global Investment Returns Yearbook 2012

 

ただ、12月のCPIは前年比+7%だが、食品とエネルギーを除いたコアは+5.5%、そこから自動車を除くと+3.6%になり、特殊要因を除くと異常なほど高いインフレになっているわけではない。エネルギーはずっと上がり続けるものではないだろうし、中古車価格もサプライチェーンの混乱が落ち着けば下がるという論調が多い。

三井住友信託銀行調査月報のレポートでは、コアCPIの前年比上昇率は今年1Qにピークを迎えて、その後は年末の3%まで低下することを予想している。

ただし、中古車価格と並んでコア指数を押し上げている家賃については、住宅価格の値上がりを背景に2022年末ごろまで上昇ペースが加速すると見込んでいる(家賃は住宅価格に1年半程度遅行する傾向があるそうだ)。

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住宅価格だが、ケースシラー指数やモーゲージ金利の推移を見る限りピークを超えたようにも見える。

・ケースシラー指数

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・30年物固定金利

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インフレの原因としてはもうひとつ労働力不足が挙げられている。失業率の低下に比べて労働参加率の戻りが鈍いのが問題視されているようだ。新型コロナの影響で早期リタイアした高齢者が労働市場に帰ってこないのではないかという話。

ただ、下の記事に掲載されている年齢別の Missing Workers (失業率に反映されない求職をしていない人)の2019年12月と2021年12月の比較を見ると、20代や40代もかなり多いため労働力が戻ってくる余地は大きそう。

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Calculated Risk: Question #4 for 2022: Will the overall participation rate increase to pre-pandemic levels (63.4% in February 2020)?

 

そんなわけでインフレについては中長期的なものは別として、短期的には徐々に落ち着いていくのではと思える。

仮に予想より高めの3〜4%で止まったとしても、その水準であればバリュエーションを壊すほどではなさそう。

・インフレ率とPERの散布図

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RELATIONSHIP OF INFLATION & PRICE/EARNINGS RATIOS (1900 - 2021)

 

インフレと共に話題になっている金利については、それほど気にする必要はないと思っている。もともとの出発点が超低金利なので、多少の上昇で経済や市場が壊れるとは思えない。

もちろん利上げを過小評価することはできない。Global Investment Returns Yearbook 2016 によると、利上げ期間のリターンは平均よりかなり悪いという結果になっている(マイナスリターンではない)。世界的(先進国中心の21か国)に見ても利下げ期間の方が利上げ期間よりもリターンが圧倒的に良いそうだ。

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ただし、2000年以降は政策金利と株価の関係が明確ではなくなっており、2004年~2007年、2015年~2019年の2つの利上げ期間でも株価は上昇しているし、逆に2000年と2007年から始まる利下げによって株価の下落を止めることもできなかった。FRBの政策金利も重要ではあるが、絶対的な基準にはならなさそう。

 

アメリカ外の世界経済に関しては、パンデミックの落ち着きや中国の金融緩和の開始といったプラス材料がある。中国の不動産バブルといったマイナス材料もあるが。

 

景気以外にもうひとつ心配なのはアメリカ株のバリュエーションの高さだろう。CAPEレシオはITバブルに次ぐ水準だし、予想PERでもやや割高感がある。

ただ、CAPEレシオに関してはバリュエーションを過大評価している面もあると思う。

CAPEレシオが最も役に立つのは、業績が景気に左右され、利益成長のない会社だと思う。一方で景気にかかわらず業績が右肩上がりに伸びていく会社に関してはどうしてもCAPEレシオが高く出てしまう。

現代は昔に比べて景気後退の数が少なくなっているし、主力株も景気の影響を受けにくいIT銘柄になっているし、株主還元が配当から自社株買いにシフトしているので(自社株買いはEPS成長率が上がる)、何十年も前の数字と単純に比較することはできないと思う。

GAFAMの22年の予想PERを見ると、アップル29倍、マイクロソフト33倍、アマゾン60倍、アルファベット24倍、メタプラットフォーム22倍となっている。アップルやマイクロソフトは割高感を感じるがバブルとまでは言えないと思うし、アルファベットやメタプラットフォームは妥当か割安な数字だと思う。

 

アメリカ以外の地域になると、予想PERは過去の平均レンジからそれほど外れておらず割高感はない。

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Guide to the Markets | J.P.モルガン・アセット・マネジメント

 

インフレの過熱、利上げ開始、アメリカ株のバリュエーションの高さ、中国の不動産バブルといった話はどれも無視できない大きなリスクだと思う。ただ、経済や株は右肩上がりという基本に反して暴落に賭けるのは現状では分が悪いと考えている。

今年も去年並みに株のポジションを保つのを基本にして、ナスダックにつられて売り込まれた日本の割安成長株の反発に期待しようと思う。