3186 ネクステージ 2019年11月期3Q決算

中古車販売大手の会社。

3Q決算は引き続き好調だった。決算と同時に通期の経常利益の予想を+7%上方修正した。

売上高 1611億円(前年比+37%)
経常利益 477億円(前年比+65%)
純利益 343億円(前年比+73%)

 

3Q単体で見ても好調。4Qの経常利益は前年比-13%で会社予想を達成できる。

売上高 566億円(前年比+34%)
経常利益 158億円(前年比+54%)
純利益 114億円(前年比+46%)

 

四半期の業績推移。売上高は右肩上がり。

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経常利益は四半期ごとにややバラツキがあるが、ここ3~4年は売上高と同様に好調な伸び率となっている。

経常利益率は直近の3Qが3%。過去10年では2~3%の年が多い。最も良かったのは2011年の3.5%。

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3Qの出店は輸入車専門店1店舗、総合店3店舗、買取専門店6店舗。計画に沿って順調に進んでいる様子。

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ネクステージは店舗の大型化を進めており、中古車販売、車検、車両用品、保険、買取とすべてのサービスを総合的に提供することを目指している。

目標は2030年に総合店、SUVLAND、UNIVERSEの大型店160店舗とのこと。今期末で大型店は40店舗なので拡大余地はまだ大きそう。

 

問題は新規出店の費用が大きく資金調達が必要になってくるところ。

バランスシートにはネットの有利子負債が217億円あるのに対して、今期の予想純利益は41億円、営業キャッシュフローは3年連続でマイナス(大型店舗を作るのに売上債権や棚卸資産が先行する)となっている。

今年の2月には評判の悪いMSワラントによる資金調達をおこなった。

 

現在の株価は1,094円で今期予想PERは20倍程度。成長率の高さと進捗率の良さを考えると割高感はないと思う。ただ、増資の不安がつきまとうところがやや怖い。

 

証券市場の真実-101年間の目撃録

1900~2000年という超長期の世界各国の証券市場を分析した労作。

対象国はアメリカ・日本・イギリスを始めとした先進16カ国、分析対象は株式・債券・短期債・インフレ・為替。

証券市場の真実―101年間の目撃録

証券市場の真実―101年間の目撃録

  • 作者: エルロイ・ディムソン,ポール・マーシュ,マイク・ストーントン,山田香織,小沢光浩,田口智也
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2003/07/01
  • メディア: 単行本
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本書は2部構成となっている。

1部ではデータをもとに各資産の歴史的な値動きを解説している。各資産のリターンとリスク、為替と国際投資、株式の規模効果・割安株戦略・配当の効果、過去のリスクプレミアムと将来の見通しなど。

・長期では株式はすべての国で債券のリターンを上回っており、債券はドイツを除いてすべての国で短期債を上回った。

・株式の実質リターンはすべての国においてプラスであり、平均値5.1%から3ポイント以内に分布している。

・債券の実質リターンの平均値はわずか0.7%だった。高インフレの国ほどリターンが低く、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、日本の5カ国はマイナスとなった。ただしこれらの国は1950~2000年には最も良い成績を残した。

・ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、日本の5か国は短期債の実質リターンもマイナスとなった。ドイツの短期債は1923年に-100%を記録している。

・実質為替レートは短期的にはかなり変動が高いものの長期的には比較的安定している 。購買力平価が長期的には有効である傾向。

・ほとんどの国の投資家は世界に投資することにより報われた。多くの国の国際投資は10~20%のリスク低減効果を期待できるとの推定。

 

2部では各国と世界の株式・債券・短期債・通貨・インフレ率のデータが掲載されている。ただし10年単位の数字しか載っていない。

 

この本の素晴らしさは何と言っても101年という期間のデータを収集しているところ。超長期で各資産のリターンやリスクはどうなのか、世界大戦前後の非常時に各資産がどうなったのか、アメリカや日本以外の国のリターンはどうなのかという話がデータをもとに解説されているのでとても勉強になる。

一方で問題点は発行が古く2000年までのデータしか掲載されていないところ。しかし、クレディスイスが毎年発行しているグローバルインベストメントイヤーブックで著者らのデータが更新されている。

なおこのイヤーブックでは2009年~2016年にかけて著者らが毎年2本の記事を書いていた。どの記事でも幅広い国を対象に長期のデータを使ってさまざまな検証がされている。市場について真剣に学びたい投資家には必読の内容だと思う。

個人的に良かった記事は、2010年のEconomic growth(経済成長率と株式リターンの短期の相関が調べられている)、2011年のThe quest for yield(配当の有効性)、2012年のThe real value of money(インフレと各種資産価格)、2012年のCurrency matters(為替ヘッジやキャリートレードの効果など)、2013年のMean revertion(バリュエーションとマーケットタイミング)、2014年のThe growth puzzle(長期の経済成長率と株式リターン)2016年のCycling for the good of your wealth(金利サイクルと株式・債券のリターン)。

 

各国株価のトレンドとバリュエーション 2019年9月末

MSCIインデックスを使って9月末の先進国・新興国の株価指数のトレンドとバリュエーションをチェックする。

・株価データはMSCIから配当込みのGROSS指数を、CAPEやPERはStarCapital、為替は日銀より取得した。

・株価チャートは2007年末を100として作成。月足・配当込み・現地通貨ベース。

・円ベースの損益は、各国のMSCI指数のドルベースのリターンを日銀のドル円レート(月末値)で円換算した。データの取得先が違うので多少の誤差が出る。

 

先進国と新興国

第3四半期の株式リターンは先進国が+0.7%、新興国が-4.1%と新興国がやや大きく下落した。円ベースのリターンは先進国+1.1%、新興国-3.7%。

直近1年間のリターンは先進国+2.4%に対して新興国-1.6%と先進国の優勢が続く。円高に振れていることから、円ベースでは先進国-2.4%、新興国-6.2%とマイナスリターンになっている。

バリュエーションは新興国の方が割安感がある。先進国のCAPEレシオは25倍に対して新興国は15倍と低い。PERも先進国の18倍に対して新興国は14倍程度。

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  CAPE PER 配当 3か月損益 円ベース 1年損益 円ベース
全世界 23.3 17.6 2.5% 0.1% 0.6% 1.9% -2.8%
先進国 24.7 18.4 2.4% 0.7% 1.1% 2.4% -2.4%
新興国 15.0 13.8 3.2% -4.1% -3.7% -1.6% -6.2%
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利回りの高いREIT 9月末

JapanREITの利回りランキング上位のうち物件売却益や利益超過分配金を差し引いても利回りの高い銘柄をピックアップする。

これまでは5%以上を目安にしていたが、全体的な値上がりで高利回りの銘柄が少なくなったため今回は4.5%以上を対象にした。

 

下表の予想利回りは会社発表の予想分配金を使った利回り、調整利回りはそこから物件売却益と利益超過分配金を引いた利回り。調整利回りの高い順に並べている。インフラファンドはREITと分けて下に並べた。 

コード 投資法人 決算月 株価 時価総額 予想利回り 調整利回り
2971 エスコンジャパンリート 1/7 121,800 28,914 5.7% 5.7%
3463 いちごホテルリート 1/7 127,900 32,815 6.0% 5.3%
3473 さくら総合リート 6/12 96,700 32,068 5.3% 5.3%
8963 インヴィンシブル 6/12 65,600 403,001 5.2% 5.2%
3451 トーセイ・リート 4/10 134,900 38,688 5.2% 5.2%
3472 大江戸温泉リート 5/11 92,000 21,652 5.1% 5.1%
3468 スターアジア 1/7 116,200 63,060 4.8% 4.8%
3470 マリモ地方創生リート 6/12 124,200 16,543 5.5% 4.7%
3453 ケネディクス商業リート 3/9 272,500 135,759 4.7% 4.7%
3492 タカラレーベン 2/8 117,300 54,159 7.0% 4.6%
8964 フロンティア 6/12 457,500 236,664 4.6% 4.6%
8985 ジャパン・ホテル・リート 6/12 81,700 359,665 4.5% 4.5%
             
9281 タカラレーベン・インフラ 5/11 122,000 17,142 5.7% 5.1%
9284 カナディアン・ソーラー 6/12 113,800 26,333 6.4% 4.9%

 
REITに詳しくないため表面的な数字しか分からないのだが気になった銘柄はこちら。

 

・2971 エスコンジャパンリート投資法人

今年の2月に上場した銘柄。不動産売却益や利益超過分配金を差し引いて5%台後半の利回りを維持しているのはこの銘柄のみ。

 

・3492 タカラレーベン不動産投資法人

エスコンジャパンと並んで最も利回りの高いREITだったが、分配金の上方修正を受けて大幅に値上がりしてしまった。

物件売却や公募増資があるので分かりにくいのだが巡航速度の分配金は3,000円弱になるのかなと思う。利回りは5%弱となる。会社は内部成長のみで3,300円、外部成長を合わせて3,500円を目指すとしている。

 

・8963 インヴィンシブル投資法人

利回り上位のREITは時価総額が1,000億円以下の小型銘柄が多いのだが、この会社は時価総額4,000億円と大きいうえ格付けもA+を取得している。

 

・3470 マリモ地方創生リート

利益超過分配金を除くと4%台の利回りだが毎年安定的に利益超過分配金を出している。土地に比べて建物の比率が大きい地方レジデンス系は減価償却費が大きいため利益超過分配金を出せるという理屈みたい。利益超過分配金を加えると5.5%と高利回りになる。

 

・3453 ケネディクス商業リート

時価総額が1,000億円を超えており格付けA+を取得している。

 

・8964 フロンティア不動産投資法人

格付けAAのREIT。他社が全体的に値上がりしている中でこの銘柄は横ばいで推移しているため、結果として利回り上位の銘柄になってしまった。

 

・9284 カナディアン・ソーラー 

高利回りのREITが少なくなってきたためインフラファンドの魅力が増している。利益超過分配金込みとはいえ6.4%という利回りは魅力的に見える。

 

リチウム銘柄ニュース

リチウム銘柄に関連する最近のニュースで気になったもの。

 

China’s electric vehicle sales are now declining by double digits

中国のEV販売は7月に前年比マイナスとなり8月は前年比-16%まで落ち込んだとのこと。補助金カットが原因だが、EV販売において中国のシェアは高いので影響が大きい。EV Salesによると、1月~7月の世界のEV販売が126万台なのに対して中国の販売は70万台となっている。政策主導で実需がわかりにくい中国市場がEVの主役になっているのは問題だと思う。中国のおかげでEVの販売台数は大きく伸びたが、どこまで実力で売れているのかが分かりにくい。

 

Chilean lithium producer SQM bullish on white gold demand; shares rise

SQMはリチウム需要について強気な見方を示したものの需要の数字は下方修正している。これまでは2025年に1,000KtLCEと言っていたが、今回の見通しは820Kt(744-914Ktレンジ)となっている。

 

独VW、戦略EV「ID.3」を初披露 350万円未満に

フォルクスワーゲンが低価格のEVを発表した。リーフと比べて価格は約2割安く走行距離は約2割長いとのこと。先行販売の納車は2020年夏から。

EVが本格的に普及するかはヨーロッパが試金石となりそう。

 

豪:Bald Hillリチウム鉱山を操業するAlita Resources社、経営再建手続きを開始

アリタリソーシズ(タワナリソーシズが合併により誕生した会社)が破綻。昨年オーストラリアで鉱山の操業を開始した会社のひとつで、スポジュメン精鉱を生産して中国に輸出するモデルを採用している。同業はピルバラミネラルズ、アルチュラマイニング、ギャラクシーリソーシズ。

現在スポジュメン鉱石は供給過剰になっており価格の下落が続いている。資産のクオリティやパートナーの弱い会社から破綻が始まったということだろう。

 

豪:Pilbara Minerals社、韓国で水酸化リチウム・炭酸リチウム製造工場建設に向けた基本合意書をPOSCO社と締結、Pilgangooraリチウム鉱山のパートナー募集プロセスは終了

ピルバラミネラルズのピルガングーラは規模的には一級品で、かつパートナーもガンフォンやポスコなど一流どころが揃っている。にもかかわらず鉱山権益の一部売却は実現できなかった。

 

Tianqi puts world’s biggest lithium plant expansion on hold

豪:Tianqi Lithium社、WA州Kwinanaの水酸化リチウム製造工場第2ステージの作業を中断

ティエンチがオーストラリアで進めているKwinanaプロジェクトのステージ2がストップした。Kwinanaはグリーンブッシュ鉱山のスポジュメン精鉱を使って48Ktの水酸化リチウムを生産するプロジェクト。現在はステージ1(キャパシティ24Kt)が試運転中。

これまでアルベマールが生産計画を下方修正しているが、アルベマールの計画はかなり将来の話でそもそもプロジェクトの実現性が疑問視されていた。今回のティエンチのプロジェクトは来年生産開始という予定だったのでインパクトは大きそう。

 

今後のリチウム市場だが、まず足元の中国のEV販売台数に注目だと思う。これまでのところ供給は過剰だが需要は問題ないという話が多かった。しかし中国の販売低迷が続くのであれば需要減でリチウム市場がさらに落ち込みそう。

ただ、需要が下振れれば更なるプロジェクトの延期や中止が出るだろうから将来の需給にはプラスになるかもしれない。

今後2~3年で見れば多数のEVモデルが発売されるヨーロッパ市場が鍵になりそう。ヨーロッパでEV市場が急速に立ち上がればプロジェクトの延期・中止と合わせて需給の好転が期待できると思う。楽観シナリオだが。

 

3169 ミサワ 2020年1月期2Q決算

おしゃれ家具のUnicoを運営する会社。

 

中間決算は期首予想の経常利益を2倍以上も上振れた。経常利益率は9.1%と大きく改善している。

売上高 557億円(前年比+8.4%)

経常利益 50億円(前年比+147.7%)

経常利益率 9.1%(前年4%)

 

2Q単体で見ても非常に好調。

売上高 289億円(前年比+14%)

経常利益 36億円(前年比+121%)

経常利益率 12.5%(前年6.4%)

 

決算と同時に通期の経常利益も49%上方修正した。

今期の経常利益率は5.3%の予想。ピークの2013年1月期は8.8%あったのでもう少し改善が見込めるかもしれない。

株価は決算後に急騰したが今期予想PERは10.5倍と割高感はない。ただ、売上高の成長率が一桁なので割安というほどでもない。

 

四半期ごとに見ると売上高は緩やかに成長している。

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経常利益は一時の低迷から立ち直ってきている。

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懸念点は足元で円安気味になっているところ。

あとは売上高の成長率が低いのが残念。Unicoの店舗数は52と少ないがECに力を入れるということで出店をほとんどストップしている。おしゃれだが安くないという家具ではそこまで大きな需要が見込めないのかもしれない。

 

景気後退時の株価のドローダウン

景気後退時にどれくらいの損失が発生するのか、日足の株価を使ってドローダウンを調べてみた。

株価はYahooFinanceより取得した。S&P500は1950年から日経平均株価は1965年からのデータ。配当なしの名目株価。

 

・アメリカ

景気後退期の前後1年間を対象に最大ドローダウンを探した。

下表の期間損益は景気後退期間中の損益、一番右の日足DDが日足ベースのドローダウン。

景気の山 景気の谷 期間損益 株価の山 株価の谷 日足DD
1953年7月 1954年5月 20% 1953年1月5日 1953年9月14日 -15%
1957年8月 1958年4月 -13% 1956年8月3日 1957年10月22日 -21%
1960年4月 1961年2月 13% 1959年8月3日 1960年10月25日 -14%
1969年12月 1970年11月 -12% 1968年12月2日 1970年5月26日 -36%
1973年11月 1975年3月 -24% 1973年1月11日 1974年10月3日 -48%
1980年1月 1980年7月 11% 1980年2月13日 1980年3月27日 -17%
1981年7月 1982年11月 4% 1980年11月28日 1982年8月12日 -27%
1990年7月 1991年3月 3% 1990年7月16日 1990年10月11日 -20%
2001年3月 2001年11月 -13% 2000年3月24日 2002年10月9日 -49%
2007年12月 2009年6月 -37% 2007年10月5日 2009年3月9日 -57%

ITバブルを除いて株価のボトムは景気後退の期間に重なっている。

全体的に見ると株価の下落は景気後退の前に始まり、株価の底打ちは景気の谷に先行する傾向がある。平均的な先行期間は6.6か月と3.8か月。ただし1980年や1990年は景気後退が始まってから株価の下落が起きているし、2001年は景気回復が始まってから株価が上昇を開始するまで1年近くかかっている。

株価の下落率は直近10回の景気後退のうち5回が-14%~-21%という調整レベルの下げで済んでいる。-50%前後の大幅下落はオイルショック、ITバブル、リーマンショックの3回。アメリカの場合は景気後退が大きな株価下落につながるのは半々くらいの確率と言えそう。

 

・日本

バブル崩壊以降の日本市場は景気後退前の株価を回復しないままドローダウンが連続しているため、どこからどこまでをドローダウンにすればいいのか迷う。ここでは景気後退の期間に近い株価の山と谷をドローダウンとした。

景気の山 景気の谷 期間損益 株価の山 株価の谷 日足DD
1970年7月 1971年12月 26% 1970年4月6日 1970年5月27日 -24%
1973年11月 1975年3月 1% 1973年1月24日 1974年10月9日 -37%
1977年1月 1977年10月 2% 1977年9月6日 1977年11月25日 -13%
1980年2月 1983年2月 20% 1981年8月17日 1982年10月1日 -15%
1985年6月 1986年11月 42% 1986年8月20日 1986年10月22日 -17%
1991年2月 1993年10月 -25% 1989年12月29日 1992年8月18日 -63%
1997年5月 1999年1月 -28% 1996年6月26日 1998年10月9日 -43%
2000年11月 2002年1月 -32% 2000年4月12日 2003年4月28日 -63%
2008年2月 2009年3月 -40% 2007年7月9日 2009年3月10日 -61%
2012年3月 2012年11月 -6% 2011年2月21日 2011年11月25日 -25%

株価の下落率はバブル崩壊以前は-20%程度の小幅な下げが多かったが、バブル崩壊以後は4回連続で景気後退のたびに大幅下落が起きている。2012年の景気後退は久々に-24%という調整レベルの下げで終えた。

直近10回のうち半分が-13%~-25%という調整レベルの下げで済んでいるのはアメリカと同じ。ただバブル崩壊以降に大きな株価下落が連続しているのが気になる。金融市場が不安定かつバリュエーションが高かったのが原因かもしれないし、経済の地力が落ちて景気後退が大幅下落につながるようになったのかもしれない。

 

景気の山と谷での株価の動き

景気の変わり目である山と谷の前後1年の株価の動きを見てみる。

山と谷の月は内閣府の景気基準日付とNBERのUS Business Cycle Expansions and Contractionsを参照にした。

 

・日本

過去15回の景気の山の前後1年間(景気後退の始まり)の動きを平均化したのが下のグラフ。横軸の0が景気の山に当たる。-1は山の一か月前、1は山の一か月後となる。棒グラフは単月のリターン、線グラフは前後1年の累積リターン。

景気の山の周辺では若干右下がりのリターンになっているがそこまで明確な傾向があるようには見えない。

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同期間の四半期ごとのリターンもグラフにしてみる。青グラフは過去15回の平均リターン、赤グラフはバブル崩壊後の5回の平均リターン。

過去15回の平均では山周辺のリターンは全体的に小幅安といったところだが、バブル崩壊後に限れば前後1年のリターンは非常に悪くなっている。

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次に景気の谷周辺の動き。

こちらは景気の山よりはっきりしていて、景気の底打ち4か月前からのリターンが非常に良い。この期間の株価上昇率は平均で40%近くにもなる。

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四半期ごとに見ると、景気の谷を過ぎてから最初の四半期のリターンがずば抜けている。

過去15回の平均で見ると景気の谷の一四半期前からリターンがプラスになっているが、バブル崩壊後の過去5回の平均ではプラスに転換するのは谷を過ぎてからとなっている。

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・アメリカ

景気の山周辺では山の月から3か月後までのマイナスリターンが大きい。下落率は平均で-8%程度。

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続いて四半期ごとのリターン。日本と違い景気の山が景気拡張の終わりであり景気後退の始まりであることから山の月は他と分けた。

景気が山をつけた後の最初の四半期のリターンが極端に悪い。山の月とそれまでの半年もリターンは冴えない。

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景気の谷周辺。

景気が回復を始める2~3か月前からのリターンが高い。底からの上昇率は30%程度となる。

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四半期ごとの推移。

景気が底を打つ一四半期前のリターンが最も高い。谷の月もプラスでその後も半年は高いリターンが続いている。

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日米両国の結果を見ると景気の山周辺は株価がさえず、景気の谷周辺のリターンは非常に高いという傾向がある。

特に谷周辺のリターンの高さは特徴的。この期間に株を持っていないことは大きなリスクになる。日米ともに株価の底打ちは景気の谷に3か月ほど先行する傾向がある。

山周辺で株価が冴えないのはアメリカの方がはっきりしている。

 

景気循環と株式リターン

日本とアメリカの景気拡張期・景気後退期の株式リターンを見てみる。

 

・景気循環について

日本では内閣府が景気基準日付を、米国ではNBERがUS Business Cycle Expansions and Contractionsを発表している。

ただ、両者とも景気拡張と後退の境目が少し分かりにくく感じた。

日本の景気基準日付によると直近の景気後退は2012年3月~2012年11月の8か月間となっている。しかし3月と11月の両月を含めると9か月になってしまう。定義には「一致指数の採用系列から作成したヒストリカルDIが50%を上回る直前の月が景気の谷,50%を下回る直前の月が景気の山に対応する」とあるので、素直に読めば景気の山の翌月から景気の谷までが景気後退となりそう。この記事でもそのようにしている。

アメリカの直近の景気後退は2007年12月~2009年6月の18か月だが、こちらも2007年12月と2009年6月の両月を含めると19か月になってしまう。2007年12月の山と2009年6月の谷については以下のように書かれており、山の月は拡張の終わりで後退の始まり、谷の月は後退の終わりで拡張の始まりとなっている。この記事では山と谷の月は景気拡張期・後退期の両方に含めた(ダブルカウントになる)。

The peak marks the end of the expansion that began in November 2001 and the beginning of a recession. 

The trough marks the end of the recession that began in December 2007 and the beginning of an expansion.

 

 ・株価

日経平均プロフィルより日経平均株価の月足を、YahooFinanceよりS&P500の月足を取得した。日米ともに1950年1月から2018年12月の期間。配当は入っていない。インフレ調整の実質株価は消費者物価指数で調整した。

 

 ・日本

まずは景気拡張期。

下のグラフは1950年以降の15回の景気拡張期のリターン。グラフの横軸は景気の谷の月を表示している。それぞれの期間の長さはバラバラなのでリターンの大きさを単純に比較することはできない。一番右端に15回の景気拡張期の年率換算リターンを計算した。

グラフを見てわかるように景気が拡大しているときにマイナスリターンとなることはほとんどなく、バブル崩壊以後でも景気拡張期にはプラスリターンを維持している。

景気拡張期の年率換算リターンは名目12.4%、実質9.4%だった。

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続いて景気後退期。

バブル崩壊以前は景気後退期でもマイナスリターンになるのは半々くらいの確率だったが、バブル崩壊以降では5回のリセッションのすべてでマイナスリターンになっている。マイナス幅も2012年のリセッションを除いて非常に大きい。

景気後退期の年率換算リターンは名目-3.2%、実質-6.5%だった。

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・アメリカ

景気拡張期。

過去10回の景気拡張期の名目リターンはすべてプラスになっている。実質ではわずかなマイナスリターンもあるが配当を加えれば帳消しにできるレベル。

景気拡張期の年率換算リターンは名目10.1%、実質6.5%だった

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景気後退期。

10回の景気後退期を平均すると株価は下げているが、名目リターンがマイナスになったのは全体の半分にとどまっている。株価が大きく下落したのはオイルショックとリーマンショックの時期。

景気後退期の年率換算リターンは名目-6.8%、実質-11.4%だった。

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日米両国の結果を見ると、どちらも景気拡張期はプラスリターン、景気後退期にはマイナスリターンとなっている。

ただし、景気後退期にマイナスリターンになっているのは約半分であり、景気後退を正しく予測できたとしてもそれが必ず利益につながるというわけではなさそう。

 

中国のクリーンエネルギー銘柄の中間決算

バリュエーションが非常に割安な中国のクリーンエネルギー銘柄の中間決算を見てみる。

 

まず現在のPERと配当利回り。

風力トップの龍源電力のPERは8倍と他の会社よりやや高い。親会社が非公開化を検討と発表した華能新能源は株価が急騰したことでバリュエーションが龍源電力並みに切り上がった。

その他の銘柄のPERは5倍前後とかなり低い。さらに京能清潔能源や新天緑色能源の前期基準の配当利回りは6%を超える。

コード 会社 株価 時価総額 実績PER 実績配当
0916 龍源電力 4.55 36,566 8.1 2.5%
0958 華能新能源 2.64 27,896 7.9 1.9%
0816 華電福新能源 1.36 11,435 5.0 4.8%
0579 京能清潔能源 1.26 10,388 4.1 6.1%
0956 新天緑色能源 2.07 7,690 5.4 6.9%
1798 大唐新能源 0.78 5,673 4.5 2.9%

 

次に中間決算の売上高、営業利益、純利益、一株利益の前年比と税前利益率。

増収増益は華能新能源、華電福新能源、新天緑色能源の3社。特に華能新能源が好調な数字だった。華電福新能源と新天緑色能源の営業利益は3割以上伸びたが純利益や一株利益の伸びは営業利益の伸びをかなり下回っている。

龍源電力、京能清潔能源、大唐新能源は横ばいか微減益でいまひとつの決算だった。

税前利益率は華能新能源の52%が頭抜けている。その他は20~30%程度となっている。

コード 会社 売上高 営業利益 純利益 一株利益 税前利益率
0916 龍源電力 5% 3% 0% 0% 31%
0958 華能新能源 13% 20% 35% 32% 52%
0816 華電福新能源 11% 35% 16% 8% 24%
0579 京能清潔能源 0% -2% 4% -13% 21%
0956 新天緑色能源 31% 33% 18% 15% 23%
1798 大唐新能源 3% -1% -7% -7% 27%

  

各社の筆頭株主とセグメント別の売上・利益の比率は以下のとおり。

 

・0916 龍源電力

風力最大手。筆頭株主は国有石炭大手の神華集団。

中間決算では風力発電が売上高の69%、セグメント利益の95%を占めている。石炭発電は売上高の26%。

 

・0958 華能新能源 

中国5大発電企業の中国華能集団が筆頭株主。太陽光発電も手掛けているがほぼ風力の会社。

 

・0816 華電福新能源

中国5大発電企業の中国華電集団が筆頭株主。

中間決算の売上高の比率は風力37%、太陽光7%、水力16%、石炭火力28%、天然ガス12%。営業利益の比率は風力56%、太陽光11%、水力24%、石炭火力6%、天然ガス3%。

風力の営業利益が-11%と減益だったが、水力と石炭火力の大幅増益でカバーした。

 

・0579 京能清潔能源

北京市政府傘下の北京能源集団が筆頭株主。

中間決算の売上高の比率は天然ガス火力と熱エネルギー77%、風力13%、太陽光8%。セグメント利益の比率は天然ガス火力と熱エネルギー57%、風力22%、太陽光20%。

 

・0956 新天緑色能源

民営の大手建設会社の河北建設集団が筆頭株主。

中間決算の売上高の比率は天然ガス67%、風力と太陽光33%。セグメント利益の比率は天然ガス28%、風力と太陽光72%。前年比では天然ガスの利益が倍増している。

 

・1798 大唐新能源

中国5大発電企業の中国大唐集団が筆頭株主。太陽光発電も手掛けているがほぼ風力の会社。

 

過去数年の成長率を見ると、京能清潔能源と新天緑色能源は大幅増収増益になったり減収減益になったりあまり安定していない。他の会社も年によって成長率にばらつきがあって一定のペースで安定して伸びているとは言えなさそう。

業績がいつ大きく伸びるかは会社を詳しく調べる必要がありそうだし、あと補助金の問題もあるので大きく投資するのは業界の知識がないと怖いかなと感じる。

数字的には新天緑色能源のバリュエーションや成長率が申し分ない。他社と違って親会社が民営企業なのが少し不安な点。

ネットの有利子負債は華電福新能源と大唐新能源がやや多く営業利益の20年分くらいある。その他は10~12倍程度となっている。