日本とアメリカの景気拡張期・景気後退期の株式リターンを見てみる。
・景気循環について
日本では内閣府が景気基準日付を、米国ではNBERがUS Business Cycle Expansions and Contractionsを発表している。
ただ、両者とも景気拡張と後退の境目が少し分かりにくく感じた。
日本の景気基準日付によると直近の景気後退は2012年3月~2012年11月の8か月間となっている。しかし3月と11月の両月を含めると9か月になってしまう。定義には「一致指数の採用系列から作成したヒストリカルDIが50%を上回る直前の月が景気の谷,50%を下回る直前の月が景気の山に対応する」とあるので、素直に読めば景気の山の翌月から景気の谷までが景気後退となりそう。この記事でもそのようにしている。
アメリカの直近の景気後退は2007年12月~2009年6月の18か月だが、こちらも2007年12月と2009年6月の両月を含めると19か月になってしまう。2007年12月の山と2009年6月の谷については以下のように書かれており、山の月は拡張の終わりで後退の始まり、谷の月は後退の終わりで拡張の始まりとなっている。この記事では山と谷の月は景気拡張期・後退期の両方に含めた(ダブルカウントになる)。
The peak marks the end of the expansion that began in November 2001 and the beginning of a recession.
The trough marks the end of the recession that began in December 2007 and the beginning of an expansion.
・株価
日経平均プロフィルより日経平均株価の月足を、YahooFinanceよりS&P500の月足を取得した。日米ともに1950年1月から2018年12月の期間。配当は入っていない。インフレ調整の実質株価は消費者物価指数で調整した。
・日本
まずは景気拡張期。
下のグラフは1950年以降の15回の景気拡張期のリターン。グラフの横軸は景気の谷の月を表示している。それぞれの期間の長さはバラバラなのでリターンの大きさを単純に比較することはできない。一番右端に15回の景気拡張期の年率換算リターンを計算した。
グラフを見てわかるように景気が拡大しているときにマイナスリターンとなることはほとんどなく、バブル崩壊以後でも景気拡張期にはプラスリターンを維持している。
景気拡張期の年率換算リターンは名目12.4%、実質9.4%だった。
続いて景気後退期。
バブル崩壊以前は景気後退期でもマイナスリターンになるのは半々くらいの確率だったが、バブル崩壊以降では5回のリセッションのすべてでマイナスリターンになっている。マイナス幅も2012年のリセッションを除いて非常に大きい。
景気後退期の年率換算リターンは名目-3.2%、実質-6.5%だった。
・アメリカ
景気拡張期。
過去10回の景気拡張期の名目リターンはすべてプラスになっている。実質ではわずかなマイナスリターンもあるが配当を加えれば帳消しにできるレベル。
景気拡張期の年率換算リターンは名目10.1%、実質6.5%だった
景気後退期。
10回の景気後退期を平均すると株価は下げているが、名目リターンがマイナスになったのは全体の半分にとどまっている。株価が大きく下落したのはオイルショックとリーマンショックの時期。
景気後退期の年率換算リターンは名目-6.8%、実質-11.4%だった。
日米両国の結果を見ると、どちらも景気拡張期はプラスリターン、景気後退期にはマイナスリターンとなっている。
ただし、景気後退期にマイナスリターンになっているのは約半分であり、景気後退を正しく予測できたとしてもそれが必ず利益につながるというわけではなさそう。