マーケットタイミング戦略を検証している記事

いくつか見つけたのをメモします。

 

Combine Market Trend and Economic Trend Signals?

株価のトレンドと失業率を組み合わせたマーケットタイミング戦略を検証しています。以下の戦略が比較されています。

① SPY - 配当調整したS&P500ETFのバイアンドホールド。

② SPY:SMA10 - 月末のSPYが10か月移動平均線を上回っていたらSPY、下回っていたらTビル。

③ UR:SMA12 - 失業率が12か月移動平均を上回っていたらSPY、下回っていたらTビル。

④ Either - ②と③のどちらかがSPYを指定していたらSPY、両方がTビルを指定していたらTビル。

⑤ Both - ②と③の両方がSPYを指定していたらSPY、片方がTビルを指定していたらTビル。

1993年以降の期間の年率リターンは、Either 13% > UR:SMA12 11.3% > SPY:SMA10 10.8% > バイアンドホールド 9.4% > Both 9.2%となっています。バイアンドホールド以外の戦略は大きなドローダウンを回避しています。

なお、失業率の先読みバイアスを避けるために失業率と株価の移動平均に1か月のラグを取ると Either のリターンは13%から11.4%に、ラグを5日にすると12%に下がるそうです。

さらにこの記事ではシラー教授のデータを使って1950年からの検証もしていますが、1950~2000年の期間に限るとマーケットタイミングは明確な優位性を持っていないとの結果です(成績の良い② 株価トレンドや④ Either でもバイアンドホールドと同レベルのリターン)。

 

Profitable Market Timing With The Unemployment Rate, Backtested To 1974

失業率が3か月前よりも高ければ債券ETF、低ければ株式ETFに投資するという戦略を検証しています。

・1973年~2016年の期間では、マーケットタイミングのリターンは13.3%で、S&P500の10.4%を上回った。

・2001年~2016年の期間では、マーケットタイミングのリターンは13%でベンチマークの5.2%を大きく上回り、最大ドローダウンも18%と低く抑えられた。

・1973年~2001年の期間では、モデルとベンチマークのリターンは同じ13.4%だった。

失業率のデータが発表されるまでのタイムラグをどう処理しているのかは不明です。

 

Using PMI Data For Tactical Asset Allocation

PMIが50より上のときにS&P500のETF、50より下のときに1~3年米国債のETFにするとリターンもドローダウンも良いとの結果です。

ただ、検証期間は2003年からと短いです。コメント欄には80年代からは良いけれど、50~70年代は有効でないと書かれています。

2000年代のアメリカ株は景気と株価が完全に一致しているうえにトレンドが明確なのでマーケットタイミング戦略の成績が良くなりがちだと思います。

 

Do Stocks Perform Better When Manufacturing Is Booming?

1948年~2018年の期間でISM製造業景気指数とS&P500のリターンを調べています。

ISM製造業景気指数が上位10%(景気が非常に良い)だったとき、その後1年のS&P500のリターンは+5.5%と低く、また7年先まで平均リターンを下回っています。

逆に下位10%だったとき、その後1年のS&P500のリターンは+25.6%と高く、7年先まで平均リターンを上回っています。

ISM製造業景気指数が50を上回った(景気が拡大している)ときだけS&P500を持つマーケットタイミングシステムの年率リターンは7.7%で、バイ&ホールドの11.5%を大きく下回ります。

ISM製造業景気指数の前年比がプラスのときだけS&P500を持つシステムも年率リターンは7%とバイ&ホールドを大きく下回ります。

 

Sentiment Is Not A Strategy

センチメント指標の有効性を調べています。

AAⅡsentiment survey (1987年~)の上位・下位5%を Greed(極端な楽観)と Fear(極端な恐怖)にしたときのその後3か月・6か月・9か月・12か月のリターンが掲載されています。

Greed はすべての期間でマイナスリターン、Fear はすべての期間で平均を上回っています。

さらに Sentiment and the Holy Grail では、上位・下位10%を Greed と Fear に設定して検証しています。

こちらでも Fear は平均以上のリターンと勝率、Greed は平均以下のリターンと勝率になっています。

 

Lumber: Worth Its Weight in Gold

木材価格と金を使ったマーケットタイミング戦略です。

木材価格を使うのは、景気循環の先行指標である住宅市場の活動に対して敏感に反応するという理由です。

・過去13週で木材価格が金価格を上回ったら、よりアグレッシブなスタンスをとる。

・過去13週でゴールドが木材を上回ったら、よりディフェンシブなスタンスをとる。

・週次で判断しなおす。

・期間は1986年11月から2015年1月。

S&P500 と BofA Merrill Lynch 5-7 Year Treasury Index を使った場合は、年率リターン11.2%でバイアンドホールドの10.1%より高く、最大ドローダウンは-14.5%に抑えられています。

さらにカバードコール、低ボラティリティ株、小型株、高ベータ株、シクリカル株を使った戦略も検証しています。

小型株-債券やシクリカル株-債券の組み合わせは、バイアンドホールドに比べて年率4%前後のリターンの向上とボラティリティや最大ドローダウンの低下を達成しています。

 

Macro Timing with Trend Following

景気の局面ごとのトレンドフォローの有効性を検証。1948年1月~2019年9月の期間。

・失業率とPMIの3か月移動平均と12か月移動平均を使って景気循環を好況(Expansion)、後退(Slowdown)、不況( Contraction)、回復( Recovery)に分ける。分け方は①短期移動平均が長期移動平均より良いか②スピードが加速しているか減速しているか。

・トレンドフォロー(12か月移動平均だと思う)は不況フェーズで有効。

・後退フェーズでは失業率とPMIの両方ともトレンドフォローのリターンが悪い。好況フェーズの後なので持ち合いでだましが多いのではとの考察。

 

In Search of the Perfect Recession Indicator

マクロ指標とトレンドフォロー。

失業率が12か月移動平均を上回っているときに株価(トータルリターンインデックス)が10か月移動平均を下回っていた場合に安全資産にする。

期間1930年1月~2016年1月でタイミングモデルはS&P500を年1.5%上回る。ボラティリティもドローダウンも低い。

マクロ指標を小売売上高や鉱工業生産指数なども調べているが失業率が最も良い。