証券市場の真実-101年間の目撃録

1900~2000年という超長期の世界各国の証券市場を分析した労作。

対象国はアメリカ・日本・イギリスを始めとした先進16カ国、分析対象は株式・債券・短期債・インフレ・為替。

証券市場の真実―101年間の目撃録

証券市場の真実―101年間の目撃録

  • 作者: エルロイ・ディムソン,ポール・マーシュ,マイク・ストーントン,山田香織,小沢光浩,田口智也
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2003/07/01
  • メディア: 単行本
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本書は2部構成となっている。

1部ではデータをもとに各資産の歴史的な値動きを解説している。各資産のリターンとリスク、為替と国際投資、株式の規模効果・割安株戦略・配当の効果、過去のリスクプレミアムと将来の見通しなど。

・長期では株式はすべての国で債券のリターンを上回っており、債券はドイツを除いてすべての国で短期債を上回った。

・株式の実質リターンはすべての国においてプラスであり、平均値5.1%から3ポイント以内に分布している。

・債券の実質リターンの平均値はわずか0.7%だった。高インフレの国ほどリターンが低く、ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、日本の5カ国はマイナスとなった。ただしこれらの国は1950~2000年には最も良い成績を残した。

・ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、日本の5か国は短期債の実質リターンもマイナスとなった。ドイツの短期債は1923年に-100%を記録している。

・実質為替レートは短期的にはかなり変動が高いものの長期的には比較的安定している 。購買力平価が長期的には有効である傾向。

・ほとんどの国の投資家は世界に投資することにより報われた。多くの国の国際投資は10~20%のリスク低減効果を期待できるとの推定。

 

2部では各国と世界の株式・債券・短期債・通貨・インフレ率のデータが掲載されている。ただし10年単位の数字しか載っていない。

 

この本の素晴らしさは何と言っても101年という期間のデータを収集しているところ。超長期で各資産のリターンやリスクはどうなのか、世界大戦前後の非常時に各資産がどうなったのか、アメリカや日本以外の国のリターンはどうなのかという話がデータをもとに解説されているのでとても勉強になる。

一方で問題点は発行が古く2000年までのデータしか掲載されていないところ。しかし、クレディスイスが毎年発行しているグローバルインベストメントイヤーブックで著者らのデータが更新されている。

なおこのイヤーブックでは2009年~2016年にかけて著者らが毎年2本の記事を書いていた。どの記事でも幅広い国を対象に長期のデータを使ってさまざまな検証がされている。市場について真剣に学びたい投資家には必読の内容だと思う。

個人的に良かった記事は、2010年のEconomic growth(経済成長率と株式リターンの短期の相関が調べられている)、2011年のThe quest for yield(配当の有効性)、2012年のThe real value of money(インフレと各種資産価格)、2012年のCurrency matters(為替ヘッジやキャリートレードの効果など)、2013年のMean revertion(バリュエーションとマーケットタイミング)、2014年のThe growth puzzle(長期の経済成長率と株式リターン)2016年のCycling for the good of your wealth(金利サイクルと株式・債券のリターン)。