リチウム銘柄ニュース

リチウム銘柄に関連する最近のニュースで気になったもの。

 

China’s electric vehicle sales are now declining by double digits

中国のEV販売は7月に前年比マイナスとなり8月は前年比-16%まで落ち込んだとのこと。補助金カットが原因だが、EV販売において中国のシェアは高いので影響が大きい。EV Salesによると、1月~7月の世界のEV販売が126万台なのに対して中国の販売は70万台となっている。政策主導で実需がわかりにくい中国市場がEVの主役になっているのは問題だと思う。中国のおかげでEVの販売台数は大きく伸びたが、どこまで実力で売れているのかが分かりにくい。

 

Chilean lithium producer SQM bullish on white gold demand; shares rise

SQMはリチウム需要について強気な見方を示したものの需要の数字は下方修正している。これまでは2025年に1,000KtLCEと言っていたが、今回の見通しは820Kt(744-914Ktレンジ)となっている。

 

独VW、戦略EV「ID.3」を初披露 350万円未満に

フォルクスワーゲンが低価格のEVを発表した。リーフと比べて価格は約2割安く走行距離は約2割長いとのこと。先行販売の納車は2020年夏から。

EVが本格的に普及するかはヨーロッパが試金石となりそう。

 

豪:Bald Hillリチウム鉱山を操業するAlita Resources社、経営再建手続きを開始

アリタリソーシズ(タワナリソーシズが合併により誕生した会社)が破綻。昨年オーストラリアで鉱山の操業を開始した会社のひとつで、スポジュメン精鉱を生産して中国に輸出するモデルを採用している。同業はピルバラミネラルズ、アルチュラマイニング、ギャラクシーリソーシズ。

現在スポジュメン鉱石は供給過剰になっており価格の下落が続いている。資産のクオリティやパートナーの弱い会社から破綻が始まったということだろう。

 

豪:Pilbara Minerals社、韓国で水酸化リチウム・炭酸リチウム製造工場建設に向けた基本合意書をPOSCO社と締結、Pilgangooraリチウム鉱山のパートナー募集プロセスは終了

ピルバラミネラルズのピルガングーラは規模的には一級品で、かつパートナーもガンフォンやポスコなど一流どころが揃っている。にもかかわらず鉱山権益の一部売却は実現できなかった。

 

Tianqi puts world’s biggest lithium plant expansion on hold

豪:Tianqi Lithium社、WA州Kwinanaの水酸化リチウム製造工場第2ステージの作業を中断

ティエンチがオーストラリアで進めているKwinanaプロジェクトのステージ2がストップした。Kwinanaはグリーンブッシュ鉱山のスポジュメン精鉱を使って48Ktの水酸化リチウムを生産するプロジェクト。現在はステージ1(キャパシティ24Kt)が試運転中。

これまでアルベマールが生産計画を下方修正しているが、アルベマールの計画はかなり将来の話でそもそもプロジェクトの実現性が疑問視されていた。今回のティエンチのプロジェクトは来年生産開始という予定だったのでインパクトは大きそう。

 

今後のリチウム市場だが、まず足元の中国のEV販売台数に注目だと思う。これまでのところ供給は過剰だが需要は問題ないという話が多かった。しかし中国の販売低迷が続くのであれば需要減でリチウム市場がさらに落ち込みそう。

ただ、需要が下振れれば更なるプロジェクトの延期や中止が出るだろうから将来の需給にはプラスになるかもしれない。

今後2~3年で見れば多数のEVモデルが発売されるヨーロッパ市場が鍵になりそう。ヨーロッパでEV市場が急速に立ち上がればプロジェクトの延期・中止と合わせて需給の好転が期待できると思う。楽観シナリオだが。

 

3169 ミサワ 2020年1月期2Q決算

おしゃれ家具のUnicoを運営する会社。

 

中間決算は期首予想の経常利益を2倍以上も上振れた。経常利益率は9.1%と大きく改善している。

売上高 557億円(前年比+8.4%)

経常利益 50億円(前年比+147.7%)

経常利益率 9.1%(前年4%)

 

2Q単体で見ても非常に好調。

売上高 289億円(前年比+14%)

経常利益 36億円(前年比+121%)

経常利益率 12.5%(前年6.4%)

 

決算と同時に通期の経常利益も49%上方修正した。

今期の経常利益率は5.3%の予想。ピークの2013年1月期は8.8%あったのでもう少し改善が見込めるかもしれない。

株価は決算後に急騰したが今期予想PERは10.5倍と割高感はない。ただ、売上高の成長率が一桁なので割安というほどでもない。

 

四半期ごとに見ると売上高は緩やかに成長している。

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経常利益は一時の低迷から立ち直ってきている。

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懸念点は足元で円安気味になっているところ。

あとは売上高の成長率が低いのが残念。Unicoの店舗数は52と少ないがECに力を入れるということで出店をほとんどストップしている。おしゃれだが安くないという家具ではそこまで大きな需要が見込めないのかもしれない。

 

景気後退時の株価のドローダウン

景気後退時にどれくらいの損失が発生するのか、日足の株価を使ってドローダウンを調べてみた。

株価はYahooFinanceより取得した。S&P500は1950年から日経平均株価は1965年からのデータ。配当なしの名目株価。

 

・アメリカ

景気後退期の前後1年間を対象に最大ドローダウンを探した。

下表の期間損益は景気後退期間中の損益、一番右の日足DDが日足ベースのドローダウン。

景気の山 景気の谷 期間損益 株価の山 株価の谷 日足DD
1953年7月 1954年5月 20% 1953年1月5日 1953年9月14日 -15%
1957年8月 1958年4月 -13% 1956年8月3日 1957年10月22日 -21%
1960年4月 1961年2月 13% 1959年8月3日 1960年10月25日 -14%
1969年12月 1970年11月 -12% 1968年12月2日 1970年5月26日 -36%
1973年11月 1975年3月 -24% 1973年1月11日 1974年10月3日 -48%
1980年1月 1980年7月 11% 1980年2月13日 1980年3月27日 -17%
1981年7月 1982年11月 4% 1980年11月28日 1982年8月12日 -27%
1990年7月 1991年3月 3% 1990年7月16日 1990年10月11日 -20%
2001年3月 2001年11月 -13% 2000年3月24日 2002年10月9日 -49%
2007年12月 2009年6月 -37% 2007年10月5日 2009年3月9日 -57%

ITバブルを除いて株価のボトムは景気後退の期間に重なっている。

全体的に見ると株価の下落は景気後退の前に始まり、株価の底打ちは景気の谷に先行する傾向がある。平均的な先行期間は6.6か月と3.8か月。ただし1980年や1990年は景気後退が始まってから株価の下落が起きているし、2001年は景気回復が始まってから株価が上昇を開始するまで1年近くかかっている。

株価の下落率は直近10回の景気後退のうち5回が-14%~-21%という調整レベルの下げで済んでいる。-50%前後の大幅下落はオイルショック、ITバブル、リーマンショックの3回。アメリカの場合は景気後退が大きな株価下落につながるのは半々くらいの確率と言えそう。

 

・日本

バブル崩壊以降の日本市場は景気後退前の株価を回復しないままドローダウンが連続しているため、どこからどこまでをドローダウンにすればいいのか迷う。ここでは景気後退の期間に近い株価の山と谷をドローダウンとした。

景気の山 景気の谷 期間損益 株価の山 株価の谷 日足DD
1970年7月 1971年12月 26% 1970年4月6日 1970年5月27日 -24%
1973年11月 1975年3月 1% 1973年1月24日 1974年10月9日 -37%
1977年1月 1977年10月 2% 1977年9月6日 1977年11月25日 -13%
1980年2月 1983年2月 20% 1981年8月17日 1982年10月1日 -15%
1985年6月 1986年11月 42% 1986年8月20日 1986年10月22日 -17%
1991年2月 1993年10月 -25% 1989年12月29日 1992年8月18日 -63%
1997年5月 1999年1月 -28% 1996年6月26日 1998年10月9日 -43%
2000年11月 2002年1月 -32% 2000年4月12日 2003年4月28日 -63%
2008年2月 2009年3月 -40% 2007年7月9日 2009年3月10日 -61%
2012年3月 2012年11月 -6% 2011年2月21日 2011年11月25日 -25%

株価の下落率はバブル崩壊以前は-20%程度の小幅な下げが多かったが、バブル崩壊以後は4回連続で景気後退のたびに大幅下落が起きている。2012年の景気後退は久々に-24%という調整レベルの下げで終えた。

直近10回のうち半分が-13%~-25%という調整レベルの下げで済んでいるのはアメリカと同じ。ただバブル崩壊以降に大きな株価下落が連続しているのが気になる。金融市場が不安定かつバリュエーションが高かったのが原因かもしれないし、経済の地力が落ちて景気後退が大幅下落につながるようになったのかもしれない。

 

景気の山と谷での株価の動き

景気の変わり目である山と谷の前後1年の株価の動きを見てみる。

山と谷の月は内閣府の景気基準日付とNBERのUS Business Cycle Expansions and Contractionsを参照にした。

 

・日本

過去15回の景気の山の前後1年間(景気後退の始まり)の動きを平均化したのが下のグラフ。横軸の0が景気の山に当たる。-1は山の一か月前、1は山の一か月後となる。棒グラフは単月のリターン、線グラフは前後1年の累積リターン。

景気の山の周辺では若干右下がりのリターンになっているがそこまで明確な傾向があるようには見えない。

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同期間の四半期ごとのリターンもグラフにしてみる。青グラフは過去15回の平均リターン、赤グラフはバブル崩壊後の5回の平均リターン。

過去15回の平均では山周辺のリターンは全体的に小幅安といったところだが、バブル崩壊後に限れば前後1年のリターンは非常に悪くなっている。

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次に景気の谷周辺の動き。

こちらは景気の山よりはっきりしていて、景気の底打ち4か月前からのリターンが非常に良い。この期間の株価上昇率は平均で40%近くにもなる。

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四半期ごとに見ると、景気の谷を過ぎてから最初の四半期のリターンがずば抜けている。

過去15回の平均で見ると景気の谷の一四半期前からリターンがプラスになっているが、バブル崩壊後の過去5回の平均ではプラスに転換するのは谷を過ぎてからとなっている。

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・アメリカ

景気の山周辺では山の月から3か月後までのマイナスリターンが大きい。下落率は平均で-8%程度。

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続いて四半期ごとのリターン。日本と違い景気の山が景気拡張の終わりであり景気後退の始まりであることから山の月は他と分けた。

景気が山をつけた後の最初の四半期のリターンが極端に悪い。山の月とそれまでの半年もリターンは冴えない。

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景気の谷周辺。

景気が回復を始める2~3か月前からのリターンが高い。底からの上昇率は30%程度となる。

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四半期ごとの推移。

景気が底を打つ一四半期前のリターンが最も高い。谷の月もプラスでその後も半年は高いリターンが続いている。

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日米両国の結果を見ると景気の山周辺は株価がさえず、景気の谷周辺のリターンは非常に高いという傾向がある。

特に谷周辺のリターンの高さは特徴的。この期間に株を持っていないことは大きなリスクになる。日米ともに株価の底打ちは景気の谷に3か月ほど先行する傾向がある。

山周辺で株価が冴えないのはアメリカの方がはっきりしている。

 

景気循環と株式リターン

日本とアメリカの景気拡張期・景気後退期の株式リターンを見てみる。

 

・景気循環について

日本では内閣府が景気基準日付を、米国ではNBERがUS Business Cycle Expansions and Contractionsを発表している。

ただ、両者とも景気拡張と後退の境目が少し分かりにくく感じた。

日本の景気基準日付によると直近の景気後退は2012年3月~2012年11月の8か月間となっている。しかし3月と11月の両月を含めると9か月になってしまう。定義には「一致指数の採用系列から作成したヒストリカルDIが50%を上回る直前の月が景気の谷,50%を下回る直前の月が景気の山に対応する」とあるので、素直に読めば景気の山の翌月から景気の谷までが景気後退となりそう。この記事でもそのようにしている。

アメリカの直近の景気後退は2007年12月~2009年6月の18か月だが、こちらも2007年12月と2009年6月の両月を含めると19か月になってしまう。2007年12月の山と2009年6月の谷については以下のように書かれており、山の月は拡張の終わりで後退の始まり、谷の月は後退の終わりで拡張の始まりとなっている。この記事では山と谷の月は景気拡張期・後退期の両方に含めた(ダブルカウントになる)。

The peak marks the end of the expansion that began in November 2001 and the beginning of a recession. 

The trough marks the end of the recession that began in December 2007 and the beginning of an expansion.

 

 ・株価

日経平均プロフィルより日経平均株価の月足を、YahooFinanceよりS&P500の月足を取得した。日米ともに1950年1月から2018年12月の期間。配当は入っていない。インフレ調整の実質株価は消費者物価指数で調整した。

 

 ・日本

まずは景気拡張期。

下のグラフは1950年以降の15回の景気拡張期のリターン。グラフの横軸は景気の谷の月を表示している。それぞれの期間の長さはバラバラなのでリターンの大きさを単純に比較することはできない。一番右端に15回の景気拡張期の年率換算リターンを計算した。

グラフを見てわかるように景気が拡大しているときにマイナスリターンとなることはほとんどなく、バブル崩壊以後でも景気拡張期にはプラスリターンを維持している。

景気拡張期の年率換算リターンは名目12.4%、実質9.4%だった。

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続いて景気後退期。

バブル崩壊以前は景気後退期でもマイナスリターンになるのは半々くらいの確率だったが、バブル崩壊以降では5回のリセッションのすべてでマイナスリターンになっている。マイナス幅も2012年のリセッションを除いて非常に大きい。

景気後退期の年率換算リターンは名目-3.2%、実質-6.5%だった。

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・アメリカ

景気拡張期。

過去10回の景気拡張期の名目リターンはすべてプラスになっている。実質ではわずかなマイナスリターンもあるが配当を加えれば帳消しにできるレベル。

景気拡張期の年率換算リターンは名目10.1%、実質6.5%だった

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景気後退期。

10回の景気後退期を平均すると株価は下げているが、名目リターンがマイナスになったのは全体の半分にとどまっている。株価が大きく下落したのはオイルショックとリーマンショックの時期。

景気後退期の年率換算リターンは名目-6.8%、実質-11.4%だった。

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日米両国の結果を見ると、どちらも景気拡張期はプラスリターン、景気後退期にはマイナスリターンとなっている。

ただし、景気後退期にマイナスリターンになっているのは約半分であり、景気後退を正しく予測できたとしてもそれが必ず利益につながるというわけではなさそう。

 

中国のクリーンエネルギー銘柄の中間決算

バリュエーションが非常に割安な中国のクリーンエネルギー銘柄の中間決算を見てみる。

 

まず現在のPERと配当利回り。

風力トップの龍源電力のPERは8倍と他の会社よりやや高い。親会社が非公開化を検討と発表した華能新能源は株価が急騰したことでバリュエーションが龍源電力並みに切り上がった。

その他の銘柄のPERは5倍前後とかなり低い。さらに京能清潔能源や新天緑色能源の前期基準の配当利回りは6%を超える。

コード 会社 株価 時価総額 実績PER 実績配当
0916 龍源電力 4.55 36,566 8.1 2.5%
0958 華能新能源 2.64 27,896 7.9 1.9%
0816 華電福新能源 1.36 11,435 5.0 4.8%
0579 京能清潔能源 1.26 10,388 4.1 6.1%
0956 新天緑色能源 2.07 7,690 5.4 6.9%
1798 大唐新能源 0.78 5,673 4.5 2.9%

 

次に中間決算の売上高、営業利益、純利益、一株利益の前年比と税前利益率。

増収増益は華能新能源、華電福新能源、新天緑色能源の3社。特に華能新能源が好調な数字だった。華電福新能源と新天緑色能源の営業利益は3割以上伸びたが純利益や一株利益の伸びは営業利益の伸びをかなり下回っている。

龍源電力、京能清潔能源、大唐新能源は横ばいか微減益でいまひとつの決算だった。

税前利益率は華能新能源の52%が頭抜けている。その他は20~30%程度となっている。

コード 会社 売上高 営業利益 純利益 一株利益 税前利益率
0916 龍源電力 5% 3% 0% 0% 31%
0958 華能新能源 13% 20% 35% 32% 52%
0816 華電福新能源 11% 35% 16% 8% 24%
0579 京能清潔能源 0% -2% 4% -13% 21%
0956 新天緑色能源 31% 33% 18% 15% 23%
1798 大唐新能源 3% -1% -7% -7% 27%

  

各社の筆頭株主とセグメント別の売上・利益の比率は以下のとおり。

 

・0916 龍源電力

風力最大手。筆頭株主は国有石炭大手の神華集団。

中間決算では風力発電が売上高の69%、セグメント利益の95%を占めている。石炭発電は売上高の26%。

 

・0958 華能新能源 

中国5大発電企業の中国華能集団が筆頭株主。太陽光発電も手掛けているがほぼ風力の会社。

 

・0816 華電福新能源

中国5大発電企業の中国華電集団が筆頭株主。

中間決算の売上高の比率は風力37%、太陽光7%、水力16%、石炭火力28%、天然ガス12%。営業利益の比率は風力56%、太陽光11%、水力24%、石炭火力6%、天然ガス3%。

風力の営業利益が-11%と減益だったが、水力と石炭火力の大幅増益でカバーした。

 

・0579 京能清潔能源

北京市政府傘下の北京能源集団が筆頭株主。

中間決算の売上高の比率は天然ガス火力と熱エネルギー77%、風力13%、太陽光8%。セグメント利益の比率は天然ガス火力と熱エネルギー57%、風力22%、太陽光20%。

 

・0956 新天緑色能源

民営の大手建設会社の河北建設集団が筆頭株主。

中間決算の売上高の比率は天然ガス67%、風力と太陽光33%。セグメント利益の比率は天然ガス28%、風力と太陽光72%。前年比では天然ガスの利益が倍増している。

 

・1798 大唐新能源

中国5大発電企業の中国大唐集団が筆頭株主。太陽光発電も手掛けているがほぼ風力の会社。

 

過去数年の成長率を見ると、京能清潔能源と新天緑色能源は大幅増収増益になったり減収減益になったりあまり安定していない。他の会社も年によって成長率にばらつきがあって一定のペースで安定して伸びているとは言えなさそう。

業績がいつ大きく伸びるかは会社を詳しく調べる必要がありそうだし、あと補助金の問題もあるので大きく投資するのは業界の知識がないと怖いかなと感じる。

数字的には新天緑色能源のバリュエーションや成長率が申し分ない。他社と違って親会社が民営企業なのが少し不安な点。

ネットの有利子負債は華電福新能源と大唐新能源がやや多く営業利益の20年分くらいある。その他は10~12倍程度となっている。

 

2593 伊藤園 2020年4月期1Q決算

緑茶最大手。子会社にタリーズコーヒーを持つ。

 

1Qは前年比で売上高-7%の減収、営業利益+2%の増収、経常利益-8%の減益だった。営業利益と経常利益の差は為替差損が大きい。

中間予想は売上高横、営業利益+1%の増益、経常利益+1%増益。

今期予想EPSは114.21円。株価5,010円で予想PERは48倍になる。

 

伊藤園の長期の売上高と経常利益を見てみる。

売上高は右肩上がりに伸びているが、成長率が10%を超えることはまれでここ3年は2%→4%→2%と微増にとどまっている。

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経常利益は売上高と違って凸凹がある。また、ここ10年以上は横ばいが続いている。2019年にようやく最高益を更新したが、それまでは2007年の利益を超えることができずにいた。

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経常利益か成長していないにもかかわらず2013年以降の株価は右肩上がりに上げ続けいてる。結果としてPER50倍近くの割高株となった。

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なお、伊藤園は優先株を発行しているがこちらは2,284円と普通株の半額以下となっている。

優先株の方が配当が高いのでお買い得に思えるが、過去5年の株価の推移を見ると普通株の上昇に大きく見劣りする。

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会社は年に1~2%ではあるが2017年と2018年に優先株の自社株買いをしている。

しかし2019年の6月に行った自社株買いは普通株が対象だった。同じ金額であれば割安な優先株を買った方が株式数は減らせるしスプレッドも縮まると思うのだが、会社は優先株の株価にはほとんど関心がなさそう。

日付 種類 発表株式数 上限金額 発行済株式数
に対する割合
取得株式数
2017年1月26日 優先株 350,000 7億円 1.03% 341,500
2018年1月26日 優先株 450,000 10億円 1.33% 369,600
2018年6月1日 普通株 220,000 10億円 0.25% 196,800
2018年6月1日 優先株 215,000 5億円 0.64% 144,400
2018年12月3日 優先株 400,000 10億円 1.20% 203,600
2019年6月3日 普通株 380,000 20億円 0.43% 380,000

 

割高な普通株と割安な優先株を見るとペアトレードが有効なのではと思ってしまう。しかしスプレッドは開き続けており、会社も本格的な対策をしないので差が縮まる気配がない。

下げ相場になったら割高な普通株が下がることによってスプレッドが縮小するのではと思っていたのだが、株価が軟調なここ1~2年で見ても普通株の優位が続いている。

普通株はPER50倍近い割高株なのだが非常に底堅く押し目があってもすぐ戻してきた。ここ数か月は久しぶりにやや大きく下げたのだが今回の決算で大きく反発している。この割高株を誰が買っているのだろうと不思議になる。

僕は以前は普通株売り-優先株買いのロングショートを組んでいたのだがどうにもスプレッドが縮まらないのであきらめてしまった。

 

1772.HK ガンフォンリチウム 2019年2Q決算

中国のリチウム大手。中国では天斉リチウムと並ぶ2強。

 

中間決算は前年比で売上高+25%の増収、税前利益-54%の減益、純利益-59%の減益だった。EPSは0.23元。

2Q単体だと売上高+23%の増収、税前利益-83%の減益、純利益-90%の減益となる。リチウム価格の下落の影響を受けて大きく業績が悪化した。

地域別の売上高では海外向けが増加している。前年上半期の海外向けの比率は24%だったが今年上半期は37%まで増えている。金額ベースでは倍増となる。

株価は9.18香港ドル。実績PERだと7.8倍と低いが今期は大幅減益が見込まれるのであまり参考にならない。

 

上半期に上流リチウム資源への投資をいくつか行っている。

・マウントマリオンを運営する RIM の持ち分を50%に引き上げた。

・ピルバラミネラルズの新株を引き受けてる。持ち分8.37%の筆頭株主。

・カウチャリ・オラロスを開発中の Minera Exar の持ち分を50%に引き上げた。

・バカノラリチウムとソノラプロジェクトへの出資を発表。完了すればバカノラの持ち分は~29.99%になり、ソノラプロジェクトの持ち分は~22.5%となる。

  

バランスシートは現金同等物2,963百万RMB、短期借入金2,809百万RMB、長期借入金654百万RMB、転換社債737百万RMBとなっている。

 

リチウム価格の下落を受けて各社とも厳しい環境が続いている。ただ、アルベマール、SQM、ライベントらが依然としてそれなりの利益率を確保しているのに比べるとガンフォンの業績悪化の具合は大きい。

今後はスポジュメン精鉱の価格下落が心配になりそう。ピルバラミネラルズやアルチュラマイニングとのオフテイク契約には下限価格が付いている。アルチュラマイニングの場合は契約期間が2020年末までで下限価格は550ドル/トンとなっている。Fastmarkets によると現在の価格は585-650ドルとなっているためこれ以上下がると下限価格に達してしまう。

 

中国ネット系ADR銘柄のチェック 2019年2Q

ウォッチしている中国ネット系ADE銘柄の2Qの決算が出そろったのでバリュエーションと成長率をチェックしてみる。 

 

ティッカー 会社 株価 今期PER 来期PER 増収率 増益率
BABA アリババ 167.48 24.4 19.4 42% 204%
BIDU バイドゥ 103.59 23.0 16.3 1% -96%
JD JD.com 30.3 34.8 25.9 23% 黒転
NTES ネットイース 250.49 19.5 18.2 15% 49%
WB ウェイボー 40.76 14.9 13.1 1% -2%
SINA シナ 40.5 17.1 13.5 -1% -7%
YY YY 55 13.8 10.3 67% -90%
MOMO モモ 34.93 12.9 10.6 32% 4%
BZUN バオズン 42.78 36.3 23.4 47% 47%
WUBA 58.com 53.57 15.5 15.3 21% 30%
TME テンセントミュージック 13.03 34.3 25.1 31% 7%

※今期と来期PERはYahooFinanceのアナリスト予想の平均EPSを使って計算。

※増収率と増益率は直近四半期の実績。増益率は営業利益。

 

株価の方は各社とも低迷している。ただ、昨年末の暴落からはある程度は戻している会社が多い。

個人的に好みなのは以下の銘柄。

 

・モモ

成長率が高い一方で今期の予想PERは10倍台前半と割安感がある。

ショートビデオアプリの流行で業績が悪化する銘柄も多いなかでモモのライブストリーミング事業は安定して成長している。2Qはモモアプリとタンタンが規制を受けたにもかかわらず堅調な決算だった。

マッチングアプリで首位、中国のティンダーという成長ストーリーも良い。

 

・バオズン

直近の決算は5割近い増収増益と非常に成長率が高い。今期PERに割安感はないが来期PERは20倍台前半となる見通し。

この会社は中国の Shopify と言われているが Shopify の赤字&PSR30倍超というバリュエーションに比べると割安さを感じる。

ただし現状でバオズンが行っているのは海外グローバルブランドのEC代行運営なので Shopify の事業内容とはやや異なる気がする。

また、トランプ大統領のアメリカ企業への撤退要求がエスカレートした場合に影響が大きそうな会社に思える。

 

・ウェイボー

売上高の成長率が70~80%から0%まで急降下したため株価は大きく売られている。

ただ、ウィーチャットと並ぶSNS2強というウェイボーの存在価値は変わっていないと思う。経済が回復したときに成長軌道に戻ると考えるなら今期予想PER15倍割れは割安感があると思う。

あとウェイボーの売上高はかなり小さいため成長余地が大きそうに感じる。直近四半期の売上高は32億RMB程度でテンセントの888億RMB(広告部門は160億RMB)などと比べると桁がひとつ小さい。

 

・アリババ

直近四半期の売上高成長率は42%とこの規模になっても非常に高い。一方で今期の予想PERは25倍程度と手頃感がある。

クラウド事業が黒字化して、エンタメ事業の赤字がなくなれば業績もさらに良くなることが期待できる。

 

株主還元が良さそうな大企業 損保大手3社

REITの利回りが低くなってきたので代わりに株主還元の良さそうな銘柄を探してみる。

今回は損保の大手3社。損保業界は統合を経て東京海上ホールディングス、MS&ADホールディングス、SOMPOホールディングスの大手3社に集約されている。

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日本損害保険代理業協会

 

・東京海上ホールディングス

修正純利益の35%以上を配当性向の目標としている。

今期PER11.9倍、予想配当利回り3.5%。ここ2~3年は自社株買いも積極的に行っている。

  EPS DPS 配当性向 株式数
2011年3月 92.5 50 54% -1.3%
2012年3月 7.8 50 639% -1.3%
2013年3月 168.9 55 33% 0.0%
2014年3月 240.0 70 29% 0.0%
2015年3月 324.0 95 29% -0.4%
2016年3月 337.3 110 33% -1.2%
2017年3月 363.5 140 39% -0.2%
2018年3月 382.8 160 42% -1.5%
2019年3月 383.0 250 65% -3.4%
2020年3月 460.0 190.0 41%  

※株式数は純利益とEPSから逆算した。

 

・MS&ADホールディングス

修正利益の40%~60%を配当性向の目安にしている。

予想PER10.3倍、予想配当利回り4.2%。発行済み株式数は毎年1%弱減っている。

  EPS DPS 配当性向 株式数
2011年3月 8.7 54 622%  
2012年3月 -272.5 54   -0.4%
2013年3月 134.5 54 40% 0.0%
2014年3月 150.6 56 37% -0.2%
2015年3月 221.3 65 29% -0.8%
2016年3月 298.7 90 30% -1.3%
2017年3月 350.9 120 34% -1.3%
2018年3月 260.0 130 50% -1.2%
2019年3月 328.7 140 43% -1.0%
2020年3月 343.3 150 44%  

 

・SOMPO

修正連結利益の50%~100%を総還元性向の目標としている。また増配の継続を基本方針としている。

予想PER9.3倍、予想配当利回り3.6%。今期の会社予想純利益の50%還元で利回り5.4%、100%で10.7%となる。

  EPS DPS 配当性向 株式数
2011年3月 -31.1 80    
2012年3月 -222.3 80   -0.1%
2013年3月 105.1 60 57% 0.0%
2014年3月 107.0 60 56% -0.5%
2015年3月 132.9 70 53% -1.0%
2016年3月 394.2 80 20% -0.9%
2017年3月 419.2 90 21% -1.9%
2018年3月 361.4 110 30% -2.5%
2019年3月 392.3 130 33% -3.4%
2020年3月 451.5 150 33%  

 

3社のなかではSOMPOが最も株主還元が高そうに思えた。MS&ADも配当利回りが高く自社株買いと合わせると5%を超えそう。東京海上は評価が高い分利回りが落ちる。

 

次に損保の収益構造を見てみる。

日本損害保険協会のHPでは会員会社の財務諸表が集計されているのでグラフにした。

経常利益はときとき落ち込みがあるが2008年を除いて黒字となっている。また、2014年以降は高水準の利益を維持している。

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保険引受利益と資産運用粗利益を見ると、利益の大部分は資産運用粗利益になっている。

本業の保険引受は2004年~2013年までたびたび赤字になっており低迷していた。特に2011年は大きな損失となっている。ただ、2014年からは利益を出せるようになっている。

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MS&ADの資料にあったコンバインドレシオの推移。このレシオが100%以下であれば保険料の収入のほうが支出よりも多く利益が出ていることを示すそうだ。

2008年~2012年まではレシオが100%を超えていたが、それ以降は100%を大きく下回る数値まで下がっており本業で利益が出せるようになっている。

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資産運用利益の内訳。

利息及び配当金収入は安定した利益を出している。有価証券売却損益はプラス、有価証券評価損はややマイナスでおおむね安定している。ただ、2002年と2008年は他の年と比べて両者とも大幅な落ち込みとなっている。

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以上を見ると、損保の損益はだいたいプラスだが市場の大きな落ち込み(2002年と2008年)や大災害(2011年)があった年は厳しくなるようだ。

 

なお有価証券含み益だが、BSに計上されている「その他有価証券評価差額金」は東京海上が1.67兆円、MS&AD1.27兆円、SOMPO0.76兆円となっている。

各社とも政策保有株式の削減を目標に挙げており含み益は年々減少している。