REITの利回りが低くなってきたので代わりに株主還元の良さそうな銘柄を探してみる。
今回は損保の大手3社。損保業界は統合を経て東京海上ホールディングス、MS&ADホールディングス、SOMPOホールディングスの大手3社に集約されている。
・東京海上ホールディングス
修正純利益の35%以上を配当性向の目標としている。
今期PER11.9倍、予想配当利回り3.5%。ここ2~3年は自社株買いも積極的に行っている。
EPS | DPS | 配当性向 | 株式数 | |
---|---|---|---|---|
2011年3月 | 92.5 | 50 | 54% | -1.3% |
2012年3月 | 7.8 | 50 | 639% | -1.3% |
2013年3月 | 168.9 | 55 | 33% | 0.0% |
2014年3月 | 240.0 | 70 | 29% | 0.0% |
2015年3月 | 324.0 | 95 | 29% | -0.4% |
2016年3月 | 337.3 | 110 | 33% | -1.2% |
2017年3月 | 363.5 | 140 | 39% | -0.2% |
2018年3月 | 382.8 | 160 | 42% | -1.5% |
2019年3月 | 383.0 | 250 | 65% | -3.4% |
2020年3月 | 460.0 | 190.0 | 41% |
※株式数は純利益とEPSから逆算した。
・MS&ADホールディングス
修正利益の40%~60%を配当性向の目安にしている。
予想PER10.3倍、予想配当利回り4.2%。発行済み株式数は毎年1%弱減っている。
EPS | DPS | 配当性向 | 株式数 | |
---|---|---|---|---|
2011年3月 | 8.7 | 54 | 622% | |
2012年3月 | -272.5 | 54 | -0.4% | |
2013年3月 | 134.5 | 54 | 40% | 0.0% |
2014年3月 | 150.6 | 56 | 37% | -0.2% |
2015年3月 | 221.3 | 65 | 29% | -0.8% |
2016年3月 | 298.7 | 90 | 30% | -1.3% |
2017年3月 | 350.9 | 120 | 34% | -1.3% |
2018年3月 | 260.0 | 130 | 50% | -1.2% |
2019年3月 | 328.7 | 140 | 43% | -1.0% |
2020年3月 | 343.3 | 150 | 44% |
・SOMPO
修正連結利益の50%~100%を総還元性向の目標としている。また増配の継続を基本方針としている。
予想PER9.3倍、予想配当利回り3.6%。今期の会社予想純利益の50%還元で利回り5.4%、100%で10.7%となる。
EPS | DPS | 配当性向 | 株式数 | |
---|---|---|---|---|
2011年3月 | -31.1 | 80 | ||
2012年3月 | -222.3 | 80 | -0.1% | |
2013年3月 | 105.1 | 60 | 57% | 0.0% |
2014年3月 | 107.0 | 60 | 56% | -0.5% |
2015年3月 | 132.9 | 70 | 53% | -1.0% |
2016年3月 | 394.2 | 80 | 20% | -0.9% |
2017年3月 | 419.2 | 90 | 21% | -1.9% |
2018年3月 | 361.4 | 110 | 30% | -2.5% |
2019年3月 | 392.3 | 130 | 33% | -3.4% |
2020年3月 | 451.5 | 150 | 33% |
3社のなかではSOMPOが最も株主還元が高そうに思えた。MS&ADも配当利回りが高く自社株買いと合わせると5%を超えそう。東京海上は評価が高い分利回りが落ちる。
次に損保の収益構造を見てみる。
日本損害保険協会のHPでは会員会社の財務諸表が集計されているのでグラフにした。
経常利益はときとき落ち込みがあるが2008年を除いて黒字となっている。また、2014年以降は高水準の利益を維持している。
保険引受利益と資産運用粗利益を見ると、利益の大部分は資産運用粗利益になっている。
本業の保険引受は2004年~2013年までたびたび赤字になっており低迷していた。特に2011年は大きな損失となっている。ただ、2014年からは利益を出せるようになっている。
MS&ADの資料にあったコンバインドレシオの推移。このレシオが100%以下であれば保険料の収入のほうが支出よりも多く利益が出ていることを示すそうだ。
2008年~2012年まではレシオが100%を超えていたが、それ以降は100%を大きく下回る数値まで下がっており本業で利益が出せるようになっている。
資産運用利益の内訳。
利息及び配当金収入は安定した利益を出している。有価証券売却損益はプラス、有価証券評価損はややマイナスでおおむね安定している。ただ、2002年と2008年は他の年と比べて両者とも大幅な落ち込みとなっている。
以上を見ると、損保の損益はだいたいプラスだが市場の大きな落ち込み(2002年と2008年)や大災害(2011年)があった年は厳しくなるようだ。
なお有価証券含み益だが、BSに計上されている「その他有価証券評価差額金」は東京海上が1.67兆円、MS&AD1.27兆円、SOMPO0.76兆円となっている。
各社とも政策保有株式の削減を目標に挙げており含み益は年々減少している。