FMCからスピンオフされた会社。リチウム専業。アルゼンチンのオンブレ・ムエルト湖からリチウム化合物を生産している。
カンファレンスコールによると炭酸リチウムの生産コストは下位1/4、水酸化リチウムの生産コストは下位1/2に入るそうだ。戦略的にハイエンドの水酸化リチウムに注力している。
ライベントはかつてのビッグ3の一角だが、現在はアルベマール、SQM、ティエンチ、ガンフォンの4社と比べると規模が小さい。
2Qの売上高は前年比で-43%の減収。営業利益は1.9Mドルの赤字、純利益は0.2Mドルの赤字だった。EBITDAは3.8Mドル、調整EBITDAは6.4Mドルと黒字を維持した。
上半期の営業キャッシュフローは0.3Mドルのマイナス、調整営業キャッシュフローは3.4Mドルのプラスとなっている。
四半期の業績の推移はこんな感じ。1Qと比べると売上高の減少は続いているが、営業利益の赤字は横ばいとなっている。
・売上高のマイナスの内訳は数量が2/3、価格が1/3とのこと。数量減の影響が大きい。
・顧客は2020年の契約量は購入する意向だが、これを達成するには下半期の販売量が増加する必要がある。現在の状況からすると販売の多くは4Qになりそう。
・マージンの低下は、販売価格の下落とサードパーティーから購入した炭酸リチウムを使った水酸化リチウムを販売したため。サードパーティー製の炭酸リチウムの在庫は上半期に大部分を使用したものの下半期にも影響は残る。
・アルゼンチンの生産設備は2週間のシャットダウンのあとに再開した。2020年のアルゼンチンからの炭酸リチウムと塩化リチウムの生産量は2019年と同レベルになる。
・計画していた拡張プロジェクトはCOVID-19のためストップしている。長期の拡張計画は実行していくが現時点ではスケジュールの詳細は未定。COVID-19の影響が消え、十分なリターンを得られるリチウム価格になる必要がある。
バランスシートを見るとキャッシュは17.2Mドル、長期借入金は208.7Mドルとなっている。1Qと比較するとキャッシュがやや増えて、借入金がやや減った。
会社は6月に225Mドルの転換社債を発行した。利率4.125%、2025年が期限、転換価格は8.73ドル(発行時株価の30%上)から。ライベントの発行済株式数は1.47億株なので希薄化は2割を超えないくらいか?
決算後に株価は上げて現在は7.33ドル。
実績PERは21倍、予想PER(YahooFinanceのEPSを使用)は61倍になる。業績がピークだった2018年のEPSを基準にしたPERは7.4倍となる。
決算は相変らず悪かったが個人的にはポジティブな内容に感じた。
まずはほぼ最悪と言える状況の中でも損益・営業キャッシュフローともに損益トントンを維持していること。
また、転換社債で負債を借り換えたのも大きい。以前の借入はEBITDA倍率が基準になっており業績悪化による不安があった。
最悪の状況でも損益トントン、かつ転換社債による資金調達によってもしかしたら倒産してしまうのではないかといった不安は消えたと思う。
リチウム市場については相変らずひどい惨状だが、コストカーブの低い位置にいるライベントが利益を出せない状況が長期間続くとも思えない。EV市場の拡大が続くのであればいずれ業績は回復すると思う。本当にEVが一般に受け入れられるのかというリスクは残るが。
ライベントにとってプラスなのはEVの主戦場が中国からヨーロッパに移っていることだろう。6月のヨーロッパのEV販売台数は前年比2倍近くとなり中国の販売台数を超えた。ヨーロッパはニッケルメインの正極材の比率が高いため、今後の水酸化リチウムの需要増加はライベントの追い風になる。
ただし、テスラが中国の短距離レンジモデル3にLFP電池を採用したり、CATLがヨーロッパでLFP電池を拡大する意向を示したりと水酸化リチウムの需要が一本槍に急増していくかはまだ分からない。