SQM ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ 2020年1Q決算

チリの化学メーカー。

チリ北部のアタカマ砂漠からチリ硝石を、アタカマ湖からリチウムやカリウムを採取している。

チリ硝石からは硝酸ナトリウムとヨウ素が採れる。この硝酸ナトリウムと塩化カリウムから硝酸カリウムも生産している。

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セグメントはリチウム、特殊肥料、ヨウ素、カリウム、工業化学品の5つに分かれている。

主力が硝酸カリウムなどの特殊肥料で世界シェアは51%となっている。リチウムとヨウ素の世界シェアもそれぞれ15%・34%と高い。この3つに比べるとカリウムと工業化学品の比率はやや低い。

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2009年からのセグメント別の純利益の推移をグラフにした。

特殊肥料は比較的安定しているが、ヨウ素は好不調の波が大きい。カリウムは利益が大きく減ってきている。リチウムを除くと長期の成長はあまり期待できなさそう。ただ、リーマンショック後の2009年でもすべてのセグメントで利益を出しているのは心強い。

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1Qの業績は前年比で売上高-22%、純利益-44%、調整EBITDA-21%だった。

四半期の推移を見ると2018年をピークに業績の悪化が続いている。

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セグメント別の売上高を見るとリチウムが-58%と大幅の減収となり、特殊肥料も-11%の減収だった。ヨウ素は+2%と増収を維持した。

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リチウムは価格・数量ともに下落。価格の下落は予想通りだが、数量は予想以上だったそうだ。中国の需要減が大きい。COVID-19の影響でリチウム需要は前年(312Kt)並みを予想している。

ヨウ素は平均販売価格の値上がりにより1Qの粗利益の大きな割合を占めるようになった。ただ、今年の需要は-6.1%の減少になるそうだ。ヨウ素の需要はX線が最も大きいが、COVID-19の環境下で皆が病院に行くのを避けている。その他、塗料、エレクトロニクス、医薬品なども景気やロックダウンの影響を受ける。

肥料は必要不可欠な製品なので景気の影響は大きくない。ただ、成長率は従来想定の5~6%に届かないだろうとのこと。

 

2019年4Qまでの数字しかないがセグメント純利益の推移。

2016年~2018年にかけて伸びたリチウムが大きく縮小しているのが分かる。

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現金同等物は1Q末で1.4Bドル(ただし4月に250Mドルの社債を支払った)。

BSを見ると借入金は短期が932Mドル、長期が1,712Mドルとなっている。

プレゼンテーション資料の債務返済スケジュールを見ると財務的には問題ないように見える。

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今年の資本支出は以前にアナウンスした450Mドルから350Mドルに減少する。従業員の安全を守るため必要不可欠でない活動を減らしたとのこと。

ただし、これは一時的な遅れでありリチウムの拡張プランは予定通り2021年末に完了する。SQMはリチウムの中長期的なファンダメンタルズに変更はなく、2025年の年間需要800Ktに向けて年率20%で成長すると予想している。

 

株価は低迷が続いており現在は23.22ドル。実績PERは21倍、YahooFinanceの今期EPSを使うと予想PERは20倍となる。SQMはアルベマールに比べても評価が高い。

リチウムに関してはマーケットシェアを取りに行く姿勢を明確にしており、積極的な拡張政策を維持している。今年の生産量も減らすことなく在庫を積み上げていくとのこと。ただ、SQMのトラックレコードは悪い。リチウムの販売数量はブーム前の2015年からほとんど増えていない。

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