SQM ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ 2022年2Q決算

チリの化学メーカー。

チリ北部のアタカマ砂漠から採れるチリ硝石を使って硝酸ナトリウムやヨウ素を、アタカマ塩湖から炭酸リチウムや塩化カリウムを生産している。

硝酸ナトリウムと塩化カリウムから硝酸カリウムも生産しており、硝酸カリウムは肥料セグメントの主力製品となっている。

 

セグメントはリチウム、特殊肥料、ヨウ素、カリウム、工業化学品(工業用の硝酸カリウムなど)の5つ。

会社によると2020年の世界シェアはリチウムが19%、特殊肥料(硝酸カリウム)が51%、ヨウ素が31%、カリウムは1%以下となっている。

 

2Qの業績は、前年比では大幅な増収増益だが、1Q比で見ると売上高こそ伸びたものの利益はそれほど伸びていない。

売上高 2,598Mドル(前年比+342%)

粗利益 1,297Mドル(前年比+598%)

純利益 859ドル(前年比+857%)

調整EBITDA 1,325Mドル(前年比+531%)

EPS 3.01ドル

 

四半期の業績の推移は下のグラフの通り。

2Qの利益の伸びが緩やかなのが分かる。

 

セグメント売上高の前年比は、特殊肥料+52%、ヨウ素+41%、リチウム+1,033%、カリウム+209%、工業化学品+243%。

軒並み大幅増収となったが、とりわけリチウムの伸びがものすごい。リチウムは1Q比でも+28%の増収となっている。

 

セグメント純利益の四半期の推移は下のグラフの通り。

なお、この会社はセグメント純利益(Unallocated amountsの前の数字で粗利益に近い金額)の開示が遅く、いまのところ1Qまでの数字しか取得できない。多少のズレが出るが2Qの数字に粗利益を使ったのが下のグラフになる。

前年比では、特殊肥料+153%、ヨウ素+92%、リチウム+1,536%、カリウム+683%、工業化学品+166%。

特殊肥料やヨウ素も好調だが、リチウムとカリウムの伸びがものすごい。

ただし、リチウムは1Q比では+8%といまいちの数字になる。

カリウムは1Q比でも+47%の増益で、利益の金額もヨウ素に並ぶほど大きくなっている。

 

続いてセグメント別に見ていく。

特殊肥料セグメントは長らく横ばいで推移していたが、前年4Qからレンジを上抜けした。2Qも1Q比で2桁の増収増益となった。

業績好調の原因は販売価格が上昇したため。販売価格は1Q比でも+10%の上昇となった。

一方で販売数量は前年比で減少している。歴史的な高値のために需要が減少しており、2022年の販売数量は前年比で約-10%の減少となるそうだ。

 

カリウムセグメントは、1Q比で売上高+60%の増収、粗利益+47%の増益となった。

販売価格は1Q比でも+28%上昇した。前年上半期と比べると3倍以上の値上がりとなる。

販売数量は前年比で減少している。今年の販売は750Ktの予想。前年の893Ktから大きく減少する見込み。

 

ヨウ素セグメントは1Q比で2桁の増収増益。X線などの需要は堅調で、供給がタイトな状況が続いているそうだ。

販売価格は1Q比で+9%の上昇となった。前年の35ドル/kgから足元55ドルまで急騰している。

販売数量は前年比でわずかな増加を見込むそうだ。

 

リチウムセグメントの業績はものすごい伸びとなっている。ただし、2Qは売上高に比べると利益の伸びが低い。

 

売上高の伸びは販売価格の上昇のため。販売数量は1Q比で-10%減少した。

2Qの販売価格は54,000ドル/トンで、1Qの38,000ドルから大幅に上昇した。2020年4Qの底値5,300ドルと比較すると、わずか1年半で10倍以上に急騰している。

なお、足元の中国の炭酸リチウムのスポット価格は、トン当たり40万元台後半(6万ドル後半~7万ドル程度)となっている。販売価格とスポット価格の差はかなり縮まった。

2022年の販売数量は14.5万トンを予想する。前回の14万トンからやや上ブレとなる。

 

SQMの販売契約は、70%がベンチマーク連動の変動価格、15%が再交渉中、15%が固定価格もしくは天井とフロアのある変動価格契約とのこと。

前回は、20%が固定価格またはフロアと天井のある変動価格、50%がベンチマークに連動する変動価格、30%が未定との話だった。

もともとSQMはアルベマールやライベントに比べて変動価格の割合が大きかったが、ここにきてさらに変動価格の割合を増やしている。

 

決算の数字は良かったものの、翌日に株価は急落した。

リチウムの販売価格が大幅に上がったにもかかわらず、利益がそれほど増えなかったのが失望されたのかなと思う。

ただ、この点についてはロイヤルティの影響なのではないかという記事が Seeking Alpha に書かれていた。

記事によると、Corfo へのロイヤルティはチリを出荷する時点で計上されるのに対して、売上高は現地で引き渡された時点に計上されるとのこと。2Qは販売量が34Ktだったのに対して、輸出は53Ktもあった。両者のギャップが会計上の影響を与えたとの話。

SQM: Royalty Overpayments May Have Distorted Q2 EBITDA

実際に電話会議でも販売数量と輸出数量の違いについて言及がされている(ただし、業績への影響についての解説はない)。

 

現在の株価は104ドル。2QのEPSが3ドルなので、単純に年換算するとPERは10倍を切る水準となる。

リチウムの販売数量は、今年14.5万トン、来年が18万トン+αで、2023年には生産キャパシティが年産21万トンに増え、2024年にはMt Holland(年産5万トン)が稼働する。

今後何年かは堅調な販売数量の伸びが期待できるので、現在の販売価格が続くという前提であればかなり割安になると思う。

ただ、足元の極端に高騰したリチウム価格が何年も続くと予想するのはあまりに楽観的だろう。問題は高値がどれくらい続くか、下落幅がどれくらいになるかというところだが、いろいろな要素があるだけにこれを予想するのはちょっと不可能だと思う。

とりあえず、今年いっぱいは新規の供給が少なくリチウム価格の高値が維持されそう、先に見たロイヤルティの過剰支払いが正しければ3Qにかなりの好決算が期待できる、他社と比べてバリュエーションが低い、といった理由からまだ利確には少し早いかなという気はしている。