中国の自動車株②

前回は自動車市場について書いたが今回は香港市場に上場している自動車株を見てみる。現在のところ大手では以下の銘柄が上場している。

0175 吉利汽車

0489 東風汽車

1958 北京汽車

2238 広州汽車

2333 長城汽車

1211 BYD

 

BYDを除く各社の自動車販売台数を見ると東風汽車が最も多い。次いで広州汽車→北京汽車→吉利汽車→長城汽車という順になっている。

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・0489 東風汽車

2019年の販売台数は前年比-4%の293万台で市場シェアは11.4%となっている。2008年の市場シェアが11.3%だったので中国の自動車市場と並行して成長している会社かと思う。

2008年~2019年のEPSと販売台数の推移は以下のとおりおおむね連動している。

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EPSは伸びている一方で株価は長期にわたって低迷している。バリュエーションの低下が原因。

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東風汽車の特徴としては商用車(トラックとバス)の販売が比較的多い。2019年は47万台の販売台数で市場シェアは10.8%とのこと。

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ブランド別で販売台数が多いのは日産とホンダで合計200万台程度。ホンダは自動車市場が低迷する中で販売台数を順調に増やしている。以前はPSAの販売台数も多かったがここ数年で激減している。

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2019年は自動車各社が減益になった中で-1%の減益で終えている。

セグメント別では商用車が28億元の利益で前年比+21%の増益、乗用車が39億元の赤字だった。関連会社やジョイントベンチャーからの利益は155億元で前年比+6%の増益となっている。

業績が底堅いのは、他社と比べて商用車部門が大きいことや好調な日本車との合弁を主力にしていることが理由だと思う。

実績PERは2.8倍、実績の配当利回りは8.4%とバリュエーションは低い。ただ、東風汽車の本社は湖北省にあることから新型コロナウイルスの被害が甚大になりそう。

 

・2238 広州汽車

2019年の販売台数は前年比-4%の206万台だった。

販売台数とEPSの推移を比べると2012年以降は販売台数に沿ってEPSが上がっていたが、2019年は大幅な減益となった。

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海外との合弁はホンダとトヨタがメイン。2019年は自社ブランドやフィアットが不調な中でホンダとトヨタは販売台数を増やしている。

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2019年は前年比で-39%の減益だった。実績PERは8.7倍、実績の配当利回りは3.5%。

この会社は日系メーカーのトヨタとホンダに期待という銘柄だと思う。

 

・1958 北京汽車

2019年の販売台数は前年比-2%の142.5万台だった。

販売台数と純利益(EPSのデータが少ない)を比べると純利益の変動がかなり大きい。

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ブランド別の販売台数を見ると2017年からヒュンダイが苦戦している。代わりに好調なのがベンツ。自社ブランドは2017年と2018年に大きく販売を落としたが2019年は増加に転じている。

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2019年は-8%の減益だった。実績PERは5.3倍、実績の配当利回りは6.4%。

セグメント別に見ると北京ブランドが47億元の赤字に対して北京ベンツは422億元の黒字となっている。

北京汽車の強みはベンツを持っているところだと思う。会社はダイムラーとの関係強化を狙って株式を買い増すそうだ。ただ、ダイムラーは筆頭株主の吉利汽車とスマートEVの合弁を設立とのニュースも出ている。

中国の北京汽車が独ダイムラー株買い増し、筆頭株主狙う=関係筋

吉利とダイムラー、「スマート」合弁に約840億円投資 2022年にEV投入

 

もうひとつ北京汽車の特徴として新エネルギー車に注力していることがある。2019年の自社ブランドの販売台数16.7万台のうち新エネルギー車が10.4万台を占める。

北京汽車のEUブランドは2019年の中国EV販売でトップを獲得した。ただ、2020年は他車に後れを取っているので何か特別な強みがあるわけではなさそう。

 

・0175 吉利汽車

2019年の販売台数は前年比-9%の136万台だった。トータルの販売台数では他社に後れを取っているが、乗用車ブランド別の販売台数ではフォルクスワーゲンとGMに次いで3位とのこと。

販売台数とEPSの推移を見ると2016年から一気に業績が良くなっている。理由はよくわからない。ボルボ買収の成果という記事を見た。

「ボルボ買収」でトップメーカに上り詰めた吉利汽車の投資効果は

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2019年は-39%の減益だった。実績PERは11.1倍、実績の配当利回りは2.2%。

ボルボ(親会社が筆頭株主)と合併を検討とのニュースが出ている。

吉利、香港子会社とボルボ合併へ 成長取り込む

 

・2333 長城汽車

SUVトップの自動車会社。長城汽車の Haval H6 は2019年のモデル別販売台数で2位に入っている。上位10モデルでは Haval H6 以外はすべて外資系モデル。

2019年の販売台数は前年比+1%増加の106万台だった。

EPSと販売台数は下のとおり。販売台数は2016年からは横ばい、EPSは2017年から半減している。

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2019年は-14%の減益だった。実績PER9倍、配当は未定だが2018年ベースだと5.8%となる。

長城汽車は自社ブランドのみを生産していたが、2019年末にBMWと共同で工場を作ることを発表した。ミニを生産するとのこと。

BMWと長城汽車、中国で電気自動車向け工場建設へ