中国の自動車株①

東風汽車の実績PERが2.85倍と異常に安かったので中国の自動車株を調べてみた。

 

まずは中国の自動車市場について。 

下のグラフは中国の自動車販売台数の推移(数字はOICA)。

販売台数は2017年まで右肩上がりに伸びた後に2年連続で減少している。2019年は前年比-8%の減少に終わった。

f:id:sapa21:20200407083022p:plain


中国、アメリカ、EU28か国、日本、インドを比べたのが下のグラフ。

すでに中国が圧倒的な世界一の自動車販市場になっているのが分かる。中国の2,576万台に対して、EU28か国1,831万台、アメリカ1,748万台、日本519万台、インド381万台。

f:id:sapa21:20200407083234p:plain

 

中国は販売台数では世界一だが人口あたりで見るとまだ低い。人口1,000人あたりの自動車販売台数はアメリカ57台、ドイツ46台、日本42台、中国21台と先進国の半分以下にとどまっている。所得を考えるとかなり大きいともいえそうだが。

もうひとつ、中国は自動車の保有率も低いそうだ。三井住友銀行の資料によると中国の自動車保有率は2割弱で、アメリカの8割や日本の6割と比べてかなり低い。

これら人口比や普及率から見ると中国の自動車販売台数はもう少し伸びる余地があるように思える。ちなみに2017年の自動車中期発展計画によると、販売台数の目標は2020年に3,000万台、2025年に3,500万台の計画とのことだ。

f:id:sapa21:20200130134736p:plain

 

次に月次の自動車販売台数。

景気減速の影響で前年比マイナスが続いていたが昨年末には前年比プラスまで戻していた。しかし、新型コロナウイルスの影響で2月は前年比-88%というひどい数字となった。

今後は新型コロナウイルスの影響がどれだけ早く収まるか、再流行が起きないか、政府の補助政策といった要因に左右されそう。一番怖いのが再流行だが、いまのところは状況を注視していくしかないと思う。

f:id:sapa21:20200407092538p:plain

 

なお、中国は2018年に新エネルギー車、2020年に商用車、2022年に乗用車の外資出資比率制限がなくなるとのこと。

自動車の外資出資比率制限を撤廃

 

3169 ミサワ 2020年1月期4Q決算

おしゃれ家具のUnicoを運営する会社。店舗数は50店舗程度。最近はECに力を入れている。

 

通期の決算は前年比で売上高+9.7%、経常利益+131.8%と好調だった。経常利益は期首の会社予想を+120%上振れて着地した。

年ベースの業績はこんな感じ。売上高は右肩上がり。経常利益は2017年を底にして2020年は売上高と並行したトレンドに戻った。経常利益率は7.5%に回復している(ピークは2013年の8.8%)。

f:id:sapa21:20200327093113p:plain

 

四半期の売上高の推移。4Qはやや落ち込んで見えるが、前年比では+2%の伸び率となっている。増税後としては悪くないように思える。

f:id:sapa21:20200327093423p:plain

 

四半期の経常利益の推移。2019年2Qから安定して黒字が続いている。

f:id:sapa21:20200327093531p:plain

 

業績好調の理由としては、適正在庫の維持に成功、ECの売上が好調、人気シリーズや新製品が堅調、増税前の駆け込み需要が反動を上回った、などを挙げている。

 

BSを見ると現預金は5億円に対して、有利子負債は5.3億円となっている。

 

今期は売上高+5%、経常利益-7%の減益を予想している。

中期経営計画によると今期は落ち込むものの来期と再来期に増益を見込んでいる。

株価は下げており、今期PERは6.1倍、配当利回りは1.9%となっている。

ひとまず利益率は以前の水準に回復したので、ここからの大幅な増益は期待しにくいのかなと思う。売上高の伸び率も1桁台と高くない。PERは低いがそれを訂正するようなカタリストが見当たらない。ただ、中期経営計画が実現できるなら割安だと思う。

 

中国のネット株の決算②

今回は、虎牙(HUYA)、闘魚(DouYu)、ビリビリ(BiliBili)の決算をチェックする。

 

・虎牙と闘魚

ゲーム動画の実況配信サイトの2強。

闘魚の筆頭株主はテンセント、虎牙はJOYYだがテンセントが議決権の過半数まで買い増す権利を持つためこちらもテンセント系となる。

規模も良く似ている。売上高は虎牙の方がやや大きい。4Qの前年比成長率は虎牙が+64%、闘魚が+78%と非常に高い。

f:id:sapa21:20200326174046p:plain

 

 営業利益の黒字化は虎牙が先行していたが、直近の4Qでは闘魚が上回っている。

f:id:sapa21:20200326174111p:plain

 

月間アクティブユーザー数は闘魚が大きいものの虎牙も追い上げている。ただ、両社ともに成長率は鈍っている。

f:id:sapa21:20200326174151p:plain


有料ユーザー数ではここ1年虎牙が苦戦している。

f:id:sapa21:20200326174244p:plain

 

時価総額は虎牙32億ドル、闘魚21億ドルとなっている。

現金や有価証券は虎牙が約15億ドル、闘魚が約12億ドル保有している。両社とも有利子負債はない。

虎牙の実績PERは50倍を超えているが営業利益率が3%と低い。営業利益率が10%であればPER36倍、20%であれば18倍程度になる(YYやMOMOの営業利益率は20~30%出ていた)。売上高の成長が続き利益率が上がれば割安感が出ると思う。

ただ、両社ともMAUがそれほど伸びていないのはやや不安を感じる。また、ショートムービーの快手やビリビリが競争相手として浮上していることも心配な点となる。

 

・ビリビリ

中国のニコニコ動画。

ゲームやアニメ関連のリーディングカンパニーだが、ライフスタイルやエンターテインメントなどにも展開している。

4Qは売上高+74%、営業損失3.8億元の損失だった。

売上高の内訳を見るとモバイルゲームの比率が徐々に下がっている。モバイルゲームの4Qは前年比+22%の伸び率だった。

モバイルゲームに次ぐセグメントに育っているのがライブブロードキャスティング&バリュー・アド・サービスで前年比+183%という高い成長率だった。VASはプレミアム会員料、猫耳FM、コミックなど。ビリビリはeスポーツコンテンツにも注力しており、リーグ・オブ・レジェンド世界大会の3年間の独占放送権を獲得している。

広告はマクロ経済の逆風にもかかわらず前年比+81%増加した。Eコマースも前年比+244%という高い成長率となっている。

f:id:sapa21:20200323172841p:plain

 

月間アクティブユーザーは前年比+40%伸びて1.3億人、有料ユーザーは前年比2倍の880万人と順調に成長している。MAUのターゲットは2021年に2.2億人とのこと。

f:id:sapa21:20200323172253p:plain

 

ビリビリの強みは高いユーザーロイヤリティで12か月のリテンションレートは80%を超えているそうだ。

f:id:sapa21:20200323172321p:plain

 

バランスシートには現金と投資有価証券(短期・長期)が93億元あるのに対して、長期有利子負債は34億元となっている。

 

1Qのガイダンスは売上高が前年比で+56~60%とのこと。

 

現在の時価総額は75億ドルとなっている。

2019年の売上高が67億元(9.5億ドル)なので実績PSRは7.8倍。仮に2020年に売上高が+50%伸びればPSRは5.3倍になる。営業利益率が10%ならPER70倍、20%ならPER35倍というレベル。

 

3663 アートスパークホールディングス

2012年にセルシスとエイチアイが経営統合して誕生した会社。

イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオを主力とするクリエイターサポート事業とUI開発ソリューションなどのUI/UX事業を展開している。

 

売上高の推移を見るとクリエイターサポート事業が大きく伸びているのが分かる(2017年に大きく伸びているのはコンテンツソリューション事業をクリエイターサポート事業に統合したため)。

UI/UX事業は縮小傾向だったが、2019年にヨーロッパのカンデラ社を買収したことで売上高が大きく増加している。

f:id:sapa21:20200325101342p:plain

 

セグメント利益も見てもクリエイターサポート事業が順調に伸びている。

UI/UX事業は大きな利益を出したのが2016年のみ。2019年はのれん償却費が3.5億円あるがそれを差し引いても赤字となる。

f:id:sapa21:20200325111618p:plain

 

セグメントの業績を見てわかるようにこの会社の強みはクリップスタジオに尽きる。

クリップスタジオはエントリーユーザーからプロのクリエイターまで幅広く利用されており、プロのなかではディフェクトスタンダードとのこと。グローバル展開もしており日本語以外のバージョンが販売本数の50%を占める。サブスクリプションやipad・iphone版のサービスも提供している。

クリエイターサポート事業は2018年に売上高+24%・セグメント利益+57%、2019年に売上高+25%・セグメント利益+47%と好業績を出している。

 

一方でUI/UX事業は決算説明会資料を読んでいても内容が分かりにくい。

業績も減収減益でいまいちだったが、2019年1月にヨーロッパで車載向けに事業を展開しているカンデラ社を買収した。カンデラ社の2018年の業績は売上11.5億円・純利益1.6億円で3年連続で利益を出している。ただし、2018年3月期の業績は横ばい。アートスパークはこの会社を21.5億円で買収した。

買収に伴って2019年は3.5億円ののれん償却費が計上されている。

 

四半期の売上高をグラフにするとこんな感じになる。クリエイターサポートも滑らかな成長ではないが、UI/UX事業は凸凹が大きい。

f:id:sapa21:20200325120013p:plain

 

セグメント利益も両事業とも凸凹が大きく安定していない。クリエイターサポート事業はほとんど黒字だが、UI/UX事業は頻繁に赤字になっている(2019年はのれん償却費を差し引いても赤字)。

f:id:sapa21:20200325120036p:plain

 

バランスシートにはネットの現金が20億円近くある。時価総額38億円の半分程度。

今期は売上高+8%、経常利益+18%の予想。

株価471円に対するPERを単純に計算すると15倍になるが税金の負担が軽い。税金30%で計算するとPERは20倍程度となる。のれん等償却費を除いた営業利益を使って税率30%で計算するとPERは7.4倍で割安感がある。

 

3020 アプライド

パソコン小売店のアプライドを展開する会社。子会社で雑貨店も運営する。

前期末の店舗数は、アプライド26店舗、雑貨店のハウズ6店舗。

 

売上高はほぼ横ばいで推移している。

経常利益は2016年3月期に大幅に増加して、その後も緩やかな増加傾向にある。

f:id:sapa21:20200324151826p:plain
 

セグメント別の売上高の推移。

主力のパソコン・ゲーム事業は横ばいが続く。今期は3Qまでで-3%の減収。

化粧品・雑貨事業は2016年3月期に大幅に増加しており、今期も前年比+70%の増収となっている。

f:id:sapa21:20200324152610p:plain

 

セグメント別の利益の推移。

2016年3月期以降のパソコン・ゲーム事業が好調で、今期中間も前年比+33%の増益となっている。

化粧品・雑貨事業は長らく赤字が続いていたが今期は黒字化した。

f:id:sapa21:20200324152659p:plain


セグメント別の利益率を見ると、パソコン・ゲーム事業が右上がりに利益率を向上させている。直近の中間決算では6.8%だった。

f:id:sapa21:20200324152812p:plain

 

この会社の最近の好業績はパソコン・ゲーム事業によるものだが、IR資料が乏しいので原因はいまいちわからなかった。

日経新聞では法人向けの販売が好調という記事が多い。

化粧品・雑貨事業は赤字が続いていたが、直近で黒字化しているのはプラス材料だと思う。売上高はパソコン・ゲーム事業の4割に近づいている。

 

3Q決算は売上高+8%、経常利益+43%と好調だった。経常利益の進捗率は94%に達する。

中間の経常利益は期首予想を+37%上振れている。 

 

バランスシートには現金7億円に対して有利子負債が30億円あるが、ネットの流動資産は36億円ある。

 

現在の時価総額は33億円とかなり小さい。予想PERは3.6倍と非常に低い。

業績は良いし、雑貨事業が利益に貢献するようだと面白いと思う。

好調の理由がいまいち分からなかったこと、増税前の駆け込み需要やwindows7終了の特需の反動、評判の悪いサポートサービスなどがリスクに感じた。

 

9707 ユニマット リタイアメント・コミュニティ

介護施設を運営している会社。

2019年9月時点では291拠点・616事業所、うち関東エリアが189拠点を占めている。

提供しているサービスは以下のとおり。主力のデイサービス、ショートステイ、グループホームは大手のようだ。

f:id:sapa21:20200324102725p:plain

なお、この会社は飲食事業も手掛けている。2019年の売上高は全体の13%ほどを占めるが、利益での貢献はほとんどない。

 

過去の売上高と経常利益の推移か下のグラフ。

売上高は低迷している時期もあるが、長期で見ると右上がりに伸びている。成長率は高くないが、良い年で10%弱の伸び率となっている。

経常利益はブレがあり2008年と2009年には赤字になっている。ただ、こちらも長期で見れば成長している。

f:id:sapa21:20200324103019p:plain

 

セグメント別の売上高の推移。

過去6年で見るとショートステイの伸び率が最も高く2013年比で+75%増加している。続いてデイサービスの+26%、有料老人ホームの+18%となる。

過去3年ではショートステイと有料老人ホームの増加が大きく共に+17%。デイサービスの伸び率は+5%に留まる。

f:id:sapa21:20200324104141p:plain

 

セグメント別の営業利益。

安定して利益を出しているのはデイサービスとグループホーム。

ショートステイは2017年に黒字化して(2015年以前は不明)利益率を向上させている。有料老人ホーム&サ高住も2019年に黒字化した。とはいえ利益率は4.9%とまだ低い。

近年伸びている2つのセグメントが稼げるようになったのは心強い。

f:id:sapa21:20200324104906p:plain

 

2019年2Qの稼働率。いずれも向上しており、これが最近の好業績につながっているのかと思う。

f:id:sapa21:20200324105510p:plain

 

直近3Qまでの業績は前年比で売上高+4.3%、経常利益-8.9%だった。

通期予想は売上高+4.6%、経常利益+7%。

中間は期首予想を-12%下振れており、3Qまでの業績は良くない。

 

バランスシートを見ると、現預金106億円に対して短期有利子負債38億円・長期有利子負債244億円となっている。

2019年の営業利益は35億円・営業CFは44億円。有利子負債は無茶苦茶多いわけではないが、必ずしも業績が安定していないことを考えるとやや多めに感じる。

 

現在の株価は848円で今期PER3.3倍、配当利回り2.6%となっている。

進捗が悪いことや有利子負債があることを差し引いてもかなり低いPERだと思う。

 

7816 スノーピーク

新潟県発祥のアウトドアブランド。テント・タープを主力としたオートキャンプ用品を製造・販売している。高品質、ロングライフ、永久保証制度のハイエンド商品。

新規事業ではアパレルが順調に育っており2019年の売上高の12%を占める。海外比率は15%程度。アメリカ、韓国、台湾などに展開している。

 

売上高は14年連続増収とのこと。

営業利益は2017年に落ち込んだが2018年には復活した。

近年はエントリー製品の販売が好調で、売上高は4.8億円→10.9億円→12.8億円と大きく伸びている。2019年には全体の9%程度を占める。決算説明会資料によるとエントリー製品の粗利益は高いそうだ。

f:id:sapa21:20200320155448p:plain

 

2017年12月期の決算で中期経営計画を出しており、2018年12月期は大幅に上振れて上方修正したが、2019年12月期の営業利益はやや下振れて着地した。

問題は2020年12月期の営業利益で、当初18億円の計画だったものが10億円に下方修正され利益達成が一期後ろ倒しとなった。会社によると投資フェーズという位置づけだが、決算を見ていると2017年の実績や2019年の予想でも投資フェーズが使われており本当に実現するのか不安を感じる。

f:id:sapa21:20200323091049p:plain

 

投資の内容は明記されていないが、海外展開や新規事業の売上比率を増やすという説明はある。ただ、これまでの実績を見ると新規のアパレル事業を除いて結果はあまり芳しくない。

海外事業は一進一退。2020年はアメリカの売上高を7.3億円から12.5億円に増加させる計画を出している。

f:id:sapa21:20200323092202p:plain

 

新規事業ではアパレルの売上高が順調に増えている。他は売上高がかなり少ない。ビジネスソリューションズは今期から登場した。

f:id:sapa21:20200323092232p:plain

 

矢野研究所のレポートによると、2018年の国内アウトドア市場は前年比+7.5%で右上がりに伸びている。

やや古いが2015年12月期の決算説明資料によるとスノーピークのキャンプ用品の市場シェアは15.8%だったそうだ。

会社の国内売上高は2015年から2倍近くになっているので、国内市場が伸びていてもシェアはかなり大きくなっていそう。今後は国内売上高のみの高成長は期待しにくいかもしれない。

f:id:sapa21:20200323093711p:plain

 

バランスシートは健全。キャッシュリッチとは言えないが有利子負債は現金の範囲内にある。

 

株価636円で今期PERは16倍となる。

今後は利益率の改善が鍵になりそう。中期計画のように来期の営業利益が+80%増加すればPERは9倍と安くなる。

実現するかは分からないが、扱っている商品からすると現在の経常利益率6.1%は改善可能なように思える。

 

MOMO 陌陌 2019年4Q決算

中国のライブストリーミング大手。マッチングアプリとして紹介されていることも多い。

2018年に同じくマッチングアプリ最大手のひとつタンタンを買収した。

 

4Qは前年比で売上高+22%、営業利益+58%、調整営業利益+42%と好調だった。

2019年の上半期にモモとタンタンのアプリは規制を受けたものの下半期で巻き返している。

f:id:sapa21:20200322165214p:plain

 

売上高の内訳。タンタンの売上高はまだモモの1/10に満たないが、売上高は前年比で+66%伸びている。

f:id:sapa21:20200322162940p:plain

 

営業利益の内訳。モモは前年比+33%と好調だった。タンタンの赤字は縮小している。

f:id:sapa21:20200322163200p:plain

 

モモアプリのMAUは前年比+1%とここ1年横ばいとなっている。

リテンションレートは継続的な改善を見せ規制前の水準に戻った、ユーザーの1日の使用時間はここ2年間で最高を記録したとのこと。

f:id:sapa21:20200320105752p:plain

 

モモの有料ユーザー数は前四半期比で40万人増加して930万人に達した。

一方でタンタンの有料ユーザー数は450万人で前四半期から横ばいとなっている。

この原因として、iOSの新しいサブスクリプションポリシーの変更が1回かぎりの影響と、ユーザーエクスペリエンスの問題を挙げている。

前者は1Qには影響がなくなる。後者は11月半ばに問題を特定して対処したことで、1月の半ばにリテンションレートが規制前の状態に戻り、2月半ばまでに急激なユーザーの増加したとのこと。ただ、2月半ばからは下方プレッシャーがかかっており、経営陣はウイルスの影響ではないかと考えているそうだ。ユーザーが家に留まることはマッチングアプリには逆風となる。

f:id:sapa21:20200320110230p:plain

 

1Qのガイダンスは売上高が-4.6~-7.3%と減収を予想している。

理由としては、高課金ユーザーへのコロナウイルスの影響、ユーザーのかなりの部分が故郷に戻っていることでDAUやMAUの回復を鈍くしている、外出規制がオープンソーシャルプロダクトへマイナスの影響を与えている、1月末にコアモモプラットフォームにいくつかの機能の調整を行った、といったことを挙げている。

 

2019年の希薄化EPSは1.93ドルで実績PERは11倍弱となる。

2Qにモモ・タンタン両アプリが規制を受けたことや、上半期にタンタンが大きな赤字を出していることを考えると実際のPERはもっと低くなると思う(モモ単体であれば営業利益が4割以上増える)。

 

6245 ヒラノテクシード

塗工機・化工機器といったコーティングマシンを作っている。テクノスマートの同業。

こちらの取材メモに2018年3月期の用途別売上高が掲載されている。比率が高いのは、電池31%、成膜装置19.6%、真空機器7.7%という順になっている。電池向け用途は2015年の1,633百万円から2018年の11,704百万円まで急増している。

 

年ベースの売上高は以下のとおり。機械業らしく凸凹がある。

f:id:sapa21:20200317130832p:plain

 

経常利益も同じ。ただ、赤字にはなっていない。

f:id:sapa21:20200317130853p:plain

 

年ベースの受注高と受注残高の推移。2018年に大きく伸びて最高を更新した。

f:id:sapa21:20200317131018p:plain

 

四半期ベースでは受注のピークは2018年3Q、受注残高のピークは2019年3Qとなっている。それ以後は右下がりに減っている。ただ、受注残高は同業のテクノスマートに比べるとまだ高水準を維持している。

f:id:sapa21:20200317131042p:plain

 

バランスシートを見ると現金+有価証券+投資有価証券-有利子負債は180億円ほどあり現在の時価総額157億円を超える。

 

今期のPERは5.7倍、配当利回りは3.5%となっている。ただ、今後は業績の悪化が予想される。

ヒラノテクシードの2006年~2020年(予想)の純利益の平均は18億円程度だった。これを使うとPERは8~9倍程度となる。

テクノスマートと同じく資産的な割安さを支えに景気回復時の値上がりを狙う、リチウムイオン電池がオプションという銘柄だと思う。

 

YY JOYY 2019年4Q決算

中国のライブストリーミングの老舗。昨年YYからJOYYに名前を変更した。傘下にHUYAとBIGOを持つ。

運営しているサービスとMAUは以下のとおり。

・YY Live 4,120万人(前年比+3.8%)

・HUYA 6,160万(前年比+21.5%)

・HAGO 3,300万(前年比+57.9%)

・BIGO Live 2,310万(前年比+18.6%)

・Likee 1.1億人(前年3,740万人)

・IMO 2.1億

 

4Qは前年比で売上高+64%、営業利益-49%だった。

売上高の大幅な増加は昨年1Qから連結したBIGOが貢献している。

営業利益は前年比では半減だが、四半期では1Qに底をつけて2四半期連続で改善している。

f:id:sapa21:20200319172029p:plain

 

セグメント別ではYYが売上高+7%、営業利益+7%。

HUYAが売上高+64%、営業利益5倍(前年は黒字転換したばかりで少ない)。

BIGOは前四半期比で売上高が+17%伸びた。

 

セグメント別の売上高の推移。HUYAの伸び率が高く、BIGOの伸び率はさらに高い。

f:id:sapa21:20200319171227p:plain

 

セグメント別の営業利益の推移。YYの成長は頭打ちだが、利益は横ばいを保っている。HUYAは安定して黒字を稼ぐようになっている。BIGOの赤字は縮小。

f:id:sapa21:20200319171334p:plain

 

YYの成長は頭打ちだが安定して利益を稼いでいる。会社は2020年も1桁台前半の売上高の成長を見込んでいる。

 

HUYAの業績は好調で5四半期連続の黒字となった。ただ、有料ユーザー数は前年比+6%の伸びにとどまり、前四半期比では減少した。経営陣によると季節性により休みのシーズンにユーザーが増えるとのことだが、同業のDouYuは4Qも前四半期で有料ユーザー数が伸びている。

  

会社が注力しているBIGOは中国外でライブストリーミングのBIGO LiveやショートムービーのLikeeを運営している。

BIGO LiveのMAUは前年比+18%とほどほどの成長率だった。最近は先進国に注力しており、これが業績の伸びにつながっているようだ。先進国の売上高に占める比率は2Qが22%、3Qが26%、4Qが31%とのこと。

YYの各サービスのなかでも最も期待されるのがショートムービーのLikeeで、モバイルMAUは前年比+208.3%(前四半期比+15%)伸びて1億人を超えている。会社はLikeeが世界でNo2のショートビデオプラットフォームと言っている。また、ここのサイトでは2019年の全世界のダウンロードランキングで6位に入っている。Likeeはもともとインドに強かったが、現在はロシアやインドネシアにも力を注いでいるとのこと。

なお、LikeeはBIGOの売上高の10%程度を占めているそうだ。

2020年のBIGOの売上高は前年比で+60%以上伸びるが損失1.5億ドルの予想している。依然として損失が続くが、今年の終わりには月ベースでブレークイーブンに達するとのこと。

 

2020年1Qのガイダンスは売上高+41.2~43.3%の増収。

 

YYの現在の時価総額は34億ドルだが、現金+有価証券が42億ドルあり、有利子負債は8億ドルなのでネットのキャッシュと同レベルしかない。

短期有利子負債の代わりに流動負債を使ってもネットのキャッシュは24億ドルとなる。

(HUYAとBIGOを除いた)YY単体は2019年に営業利益3.8億ドル稼いでおり、ネットのキャッシュとYYの利益だけで見ても非常に割安な部類に入ると思う。

不安点としては、YYの業績が悪化するのではないか、HUYAが子会社を外れるのではないか(テンセントが買い増しする権利を持つ)、Likeeが伸びているといってもTikTokには負けているといったところかと思う。