今年は中国の景気回復を背景に好調な株価推移を期待したが、新型コロナウイルスによって完全に目論見が外れてしまった。
株価の暴落スピードはものすごくてボラティリティの大きさにも唖然としてしまう。これほど下げるとさすがに短期的な反発を期待したいが、この問題の先行きが見えないと本格的な回復も難しいのかもしれない。
新型コロナウイルスについては甘く見ていたと思う。最近はいろいろな記事を読んでいるが、株式市場の先行きだけでなく現実生活でも不安を感じてしまう。
Coronavirus: Why You Must Act Now は新型コロナウイルスについての恐ろしさがよく分かる記事だった。感染者数の推定や対策などいろいろ書かれているが、特に重要なのが発症者数と診断者数のギャップの話。
症状が出てから検査によって感染者と診断されるまでにはタイムラグがあるが、この間にも感染者は爆発的に増加するので表面的な数字だけを見ていると対策が手遅れになってしまうとのこと。
下のグラフは湖北省の患者に聞き取りを行った結果で、棒グラフの黄色が検査によってウイルス感染者と診断された人数、灰色は実際にその日に症状が出た人数とのことだ。
武漢を封鎖した1月23日に湖北省で報告された新規感染者は400人以下だったが、実際には2,500人もの発症者がいたそうだ。ちなみにこのサイトによると1月23日時点の中国の累計死亡者数は23人にすぎない。にもかかわらず武漢はあの惨状となった。
ちなみに同サイトから各国の数字を拾ってみるとこんな感じ。
・イタリア 北部を封鎖した3月8日の新規感染者数1,498人・累計死亡者数366人、全土を封鎖した3月11日の新規感染者数2,312人・累計死亡者数827人。
・スペイン 封鎖措置をとった3月14日の新規感染者数1,159人・累計死亡者数196人。
・フランス 不要不急の公共の場の閉鎖を開始した3月15日の新規感染者数838人・累計死亡者数128人。
・アメリカ 直近3月16日の新規感染者数983人・累計死亡者数86人。
検査数などの違いで単純比較はできないだろうが中国の対応に比べるとどの国も後手に回っているように見える。医療が崩壊したイタリアを基準にするとスペインやフランスも今後かなりひどい状況になりそうだし、死亡者数のグラフを見ていくとアメリカやイギリスもそれに続いているように見える。
記事では1日の対策の遅れが大きな結果の違いにつながるとしている。著者の(武漢に似せた)モデルでは社会的隔離を1日遅らせることで全感染者数が40%も増加するとのことだ。これについては同じような分析も出ている。
感染者数の増加は医療崩壊が起きるかどうかを左右するため死亡者数についての影響はさらに大きくなるとのこと。医療が対応可能だった韓国や湖北省以外の中国での致死率が1%を下回っているのに対して、医療崩壊が起きた国々の致死率は3~5%にも上る。
日本は中国や韓国に比べると緩い対策を採っているが、感染者数も死亡者数も少なく死亡者数の増え方も緩やかではある。対策・気候・習慣などの条件が重なってうまく抑え込めているのであればいいのだが、単に検査数が少なくて感染者の増加を見逃しているだけであれば怖い。検査についてはいろいろな議論を見るが、早期対応が決定的に重要という点から感染の実態が分からないというのは危険だと思う。
株に関しては景気後退が金融危機を引き起こすまでいくのが最悪のシナリオだと思う。ただ、ヨーロッパやアメリカはリーマンショック後に民間債務の急増はないし、民間債務が急増した中国はウイルス封じ込めに成功した国になっている。日本を筆頭とした先進国の公的債務はやや心配で、実際にイタリアやスペインの長期金利は上がり始めているが、日本やアメリカやドイツといった主要国には波及しないと信じることにする。
足元ではヨーロッパとアメリカが厳しい時期を控えていることからまだ下げが続くかもしれない。実は日本でも感染者が多かったという話が出てくるリスクもある。
ただ、株はすでに3割前後も下げており、さらに中小型株では投げ売り状態となっていることからここから売ることは考えていない。この先も下がるようであれば相当な割安株が出現することになるので、10年に一度のチャンスと肯定的に考えて買える分を買っていきたい。