9517 イーレックス 2020年3月期3Q決算

新電力の老舗。電力小売りと卸売り、バイオマス発電を行っている会社。

 

3Qは前年比で売上高+38%の増収、経常利益+167%の増益という好決算だった。

3Q単体では売上高+43%の増収、経常利益+60%の増益となる。

3Q時点での経常利益の進捗率は95%に達しておりかなりの確率で上方修正が見込めると思う。

 

この会社の売上高は大きく伸びているのだが、詳細が開示されていないため内容が分かりにくい。

電力小売に限ると4Qは高圧小売が前年比-7.7%の減少、低圧小売が前年比+10%の増加しかない。低圧小売の件数や販売電力量は伸びてはいるものの計画を下回っているし、時系列で見た供給件数の伸びも鈍化しており頭打ち感が漂う。

 

経常利益は四半期で見ると凸凹がある。基本的には電力消費量の多い夏と冬に業績貢献が高くなるのだと思う。売上高は比較的そういった傾向を見せている。ただ、経常利益に関しては必ずしもそうなっておらず傾向が把握しにくい。3QはJEPXの価格が低かったので期待していたのだがそれほど業績は伸びなかった。

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発電部門では今年1月に豊前と大船渡の新発電所が稼動した。

両施設の発電出力は7.5万kWと大きく、これまでの既存の発電所2カ所の合計7万kWから3倍以上に増加する(ただし出資比率で見ると13万kWと2倍程度)。出資比率65%の豊前は全量外部へ販売、出資比率35%の大船渡は全量erexへ販売とのこと。

両施設の業績への貢献だが、以前出した下方修正時の資料によれば4施設稼働で年間30億円以上の純利益への貢献、6施設稼働(沖縄と坂出)で年間50~70億円の純利益への貢献とある。

参考までに同業他社の業績を見ると、

・エフオンは4施設・発電出力5.5kW(壬生の稼動が半年なので半分で計算)で売上高123億円・経常利益28億円の業績予想。

・レノバの秋田バイオマスは発電出力2.05万kWで売上高48.3億円・経常利益11億円。

・レノバの苅田バイオマスは発電出力7.5万kWで想定売上高130億円。

時期的に近いレノバの苅田バイオマスを参考にすると、2施設の売上高は260億円、営業利益率20%少々として50億円超、純利益35億円、これの持ち分50%で純利益17.5億円程度の上積みになる。

イーレックスの今期予想は純利益38億円、来期予想は純利益49億円なのでだいたい計算と近い(両施設は今年4Qから貢献)。

 

現在の株価は1,231円なので予想PERは16倍になる。

中期経営計画通りであれば来期のEPSは100円近くとなり予想PERは12倍弱。

成長率からすると悪くないが、この会社の業績はブレがあるうえ内容が分かりにくいので安心して持てない。株価も決算のたびに上下に大きく動く。事業内容の分かりやすい発電事業に集中しており、情報開示も充実しているレノバと比べると評価が低いのも納得できる。