中国ネット株の決算①

ウォッチしている中国ネット系銘柄の決算がぼちぼちでてきたので簡単にチェックしていく。

 

・BABA アリババ

3Qは前年比で売上高+38%の増収、営業利益+48%の増益だった。この規模で4割も成長しているのはすごい。

セグメント別の営業利益の四半期推移をグラフにしてみた。

利益を出しているのはコアコマースのみで、その他3部門は赤字が継続している。ただ、クラウドコンピューティングはいずれ利益貢献してくると思われる。この部門の売上高の伸びはゆるやかな右下がりだが依然として60%を超えている。

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アリババのバリュエーションはやや分かりにくい。赤字事業があるし投資関連の利益もある。

過去4四半期の営業利益は930億RMB、コアコマースのみの営業利益は1,400億RMB、税前利益は1,937億RMB、営業外利益1,007億RMBのうちアントファイナンシャル関連の特別利益が692億RMBとなっている。

過去4四半期のEPSは9.1ドル(1RMB=0.14ドル)なので実績PERは21.6倍だが、純利益からアントファイナンシャルの692億RMBを引いて計算すると実績PERは36倍になる。

また、営業利益にコアコマースの利益を使って(赤字事業を除く)アントファイナンシャルの特別利益を除いて税率25%で計算すると実績PERは29倍となる。

ざっくりした計算だがすごく割安でも割高でもないかなという感じを受ける。売上高の成長率の高さとクラウド事業の今後の貢献を考えると悪くない水準だと思う。

 

・BIDU バイドゥ

4Qは前年比で売上高+6%の増収、営業利益4倍以上となった。営業利益は2019年1Qに赤字となって以来3四半期連続で改善している。4Qの営業利益46億RMBはピークの水準に近い。

セグメント別の売上高は、オンラインマーケティングが-2%の減収、その他が+35%の増収だった。その他はクラウドサービス、スマートデバイス、iQiyiメンバーシップなど。

会社別ではバイドゥコアは売上高+6%の増収、営業利益+55%の増益。バイドゥアプリのDAUsは1.95億人で前年比+21%増加となった。

iQiyiは売上高+7%の増収、営業利益-25億RMBの赤字(前年-33億RMB)。赤字は縮小したものの高水準。iQiyiは動画サイトでトップを争っているが売上高の伸びは頭打ちになってきている。

バイドゥコアとiQiyiの営業利益の推移はこんな感じ。

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2020年1Qのガイダンスは-5~13%の減収、バイドゥコアは-10~18%の減収。

コスト削減は効果を出しており、1Qのコストも横ばいで前年より15%少ない水準を維持できるとのこと。

バイドゥの時価総額は368億ドルだがネットキャッシュが287億ドルある。現在の業績が続くなら、iQiyiの赤字を除いてEPSは8~9ドルくらい出そう。

バイドゥはどう見ても割安なのだが、検索の伸びが止まっているのと新規で稼げる事業が出ていないのが問題だと思う。スーパーアプリ化で成果を上げるか、自動運転が収益に貢献するといった材料があれば株価は上がると思う。

 

・WB ウェイボー

4Qは前年比で売上高-3%の減収、営業利益-18%の減益だった。

広告の売上高は-3%の減収。内訳はKAとSMEsが-5%、アリババが+20%だった。アリババはここしばらく減少していたが久々に増加している。

バリューアドサービスは-4%の減収。

2020年1Qは売上高-15%~20%の減益というガイダンス。

ウェイボーはつい2年前まで売上高が7割も伸びていたのにあっという間にマイナスになってしまった。中国経済のスローダウンとショートムービーの隆盛が原因のようだがかなり厳しい。中国市場は競争が厳しく難しいなと感じる。

救いはMAUとDAUが依然として伸びているところ。MAUは前年比+12%、DAUは+11%。景気が回復して広告市場が復活すれば成長軌道に戻るのではという希望はある。

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もうひとつの期待は昨年12月にサービスが開始された中国版インスタのOasis。立ち上がりは好調で1月は1,000万人のMAUだったとのこと。ただし、直近ではコロナウィルスの影響でスローダウンしているそうだ(家籠りではインスタする機会がない)。

ウェイボーのネットキャッシュは20億ドル程度(時価総額90億ドル)。

現在の業績が横ばいであればEPSは2ドルあるかといったところだと思う。株価は40ドルなのでPERは20倍程度となる。成長率ゼロでは割安感がない。

 

・JD JD.com

好調な決算だった。

4Qの売上高は前年比+27%の伸び率。プロダクトが+25%、サービスが+44%。成長率は2019年1Qを底に再加速している。

2020年1Qも2桁の売上高の伸び率を見込むとのこと。

営業利益は四半期比では大きく減ったものの黒字を維持している。

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年間アクティブアカウントは前年比+19%と大幅に増えた。こちらも2019年2Qを底に再加速している。地方都市への拡大が好調の理由だそうだ。

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JDは傘下のJD Logisticsの評価が高いうえ、JD Healthもユニコーンとなったそうだ。

2019年の売上高807億ドルに対して時価総額は582億ドル。実績PSRは0.72倍となる。

過去のカンファレンスコールによると、JDリテイルは長期的に純利益率1ケタ台後半を目指すとの話があった。売上高が2桁成長しつつ利益率が上がってくれば割安になると思う。