9517 イーレックス 2019年3月期4Q決算

前期は下方修正。売上は40%伸びたが、経常利益は減益だった。

今期は売上高+44%の増収、経常利益+67%の増益予想。

単純に成長率と比べると予想PERの15倍は低め。

 

前期の下方修正の原因としては、高圧部門の競争激化や電源調達のJEPX依存度の上昇を挙げている。

大手電力会社の猛反撃によって新電力の高圧部門はかなり厳しい状況のようだ。新電力トップに急成長したF・POWERも2018年に赤字を計上している。自前の発電設備を持たず、価格変動の大きいJEPXに頼るビジネスは結局のところ厳しいみたい。

新電力各社は大手との相対取引を増やしている。イーレックスも東京電力エナジーパートナーとエバーグリーンという高圧向けの新会社を設立することを発表した。

なお、イーレックスの電源構成は相対電源が5割、自社電源が10~15%程度になっている。自社電源の割合はそこまで高くない。2022年3月期に相対電源5~6割、自社電源3割くらいにする目標。

 

電力供給施設数は高圧部門が10,900→9,600と減少、低圧部門が99,000→132,000で大幅増加だった。

中期経営計画書では高圧・低圧ともに増加を見込んでいる。目視になるが高圧部門は1万→1万2千→1万4千、低圧部門は15万→22万→31万といった感じ。

 

不安に感じた点はこんなところ。

・減少している高圧部門の供給施設数を増やせるのか?

・20年4月に一般家庭向け規制料金が撤廃される。低圧部門の競争激化。

・国外から材料を輸入するバイオマス発電を再生エネルギーとするのに批判はないか?

・原材料価格の値上がり。

 

プラス点は2020年1月に2か所の発電所の稼動が決まっていること。大船渡75MW(35%出資)、豊前75MW(65%出資)。現在稼働している2施設の発電出力の合計が70MWなのでインパクトは大きい。

下方修正時の資料では、両施設がフル稼働する2021年3月期に発電部門のみで30億円以上の当期純利益への貢献になるとのこと。2019年の純利益が27億円なので相当な金額(ただし中期経営計画では利益の増加は控えめ)。

また、2021年に沖縄(49MW)が決まっており、24年目標の坂出(75MW)も環境アセス中。さらにFITに頼らないメガバイオ発電所も計画しているとのこと。成長力は十分ありそう。

資金は沖縄までは手当て済みとのこと。坂出はプロジェクトファイナンスの予定。

 

発電所稼働に伴う利益の伸びがかなり確実に見込めるのは良いと思う。本格的な利益貢献は来期になりそうだが、沖縄が寄与する22年までは利益の伸びは期待できそう。

一方で電力小売りの売上高が計画のように伸びるのかはよく分からない。新電力の低圧部門のシェアは現在10~15%程度でトレンドも良いのだが、この流れがどこまで続くのかが不明。自由化後の新電力のシェアは国によって違いがあるようだ。

また、イーレックスは新電力で上位に入っているようだが、特徴的な電力料金を出しているわけでもなさそうだし強みがよく分からなかった。

あくまでも個人的な感想だが、新電力はまったくゼロから始まった市場で顧客が莫大にいて、かつ大手が規制料金で参入できないことから現状ではどの会社もある程度利益が見込める環境なのでは?と感じた。ただ、2020年4月に規制料金が撤廃されたら環境が変わる可能性もあると思う。