6890 フェローテックホールディングス 2022年3月期4Q決算

半導体関連の製品・サービスと電子部品の会社。

磁性流体、真空シール、石英製品、セラミックス、半導体洗浄、サーモモジュール、パワー半導体基板などを提供している。

 

4Q累計の業績は、前年比で売上高+47%の増収、経常利益+216%の増益。期首の予想を大幅に上振れて着地した。

今期の予想も売上高+35%の増収、営業利益+33%の増益と好調を持続する見込み(経常利益は為替差益を見込まないため+7%の増益)。

 

セグメント売上高の推移は以下のグラフの通り。

現在は半導体等装置関連事業、電子デバイス事業、その他の3セグメントだが、2019年までは太陽電池関連事業を行っていた。

2022年の半導体等装置関連事業は前年比+35%の増収。過去の業績を見ると波があるものの右肩上がりに伸びている。

電子デバイス事業は2014年~2015年頃から大きく伸びている。2022年は前年比+56%の増収だった。

 

セグメント利益の推移。

2022年の半導体等装置関連事業は前年比2.5倍と大きく伸びた。業績に波があるものの近年は大きな利益を出している。

電子デバイス事業は前年比+50%の増益。この事業は赤字がなく、安定して利益を出している。

太陽電池事業は2009~2011年ごろに大きな利益を出していたが、2013年以降は撤退するまで赤字が続いていた。

 

次に製品ごとの売上高を見てみる。

半導体等装置関連事業ではコア技術である磁性流体を使った真空シールで65%という高いシェアを持つ。真空シールは半導体製造装置、FPD、LED関連製造装置の基幹部品として使用されているそうだ。

2022年の真空シールの売上高は前年比+24%増加した。ただ、過去10年ほどを見るとそれほど大きく伸びてはいない。セグメントに占める比率は17%程度。

 

フェローテックは真空シールを販売している顧客に対して石英製品やセラミックスなどの半導体生産プロセスで使われる消耗品を拡販してきた。これらの製品(石英製品、シリコンパーツ、セラミックス、CVD-SiC)を半導体マテリアル製品として区分けしている。

2022年の半導体マテリアル製品の売上高は前年比+48%と大幅に伸びた。過去の業績を見てもこの製品は右肩上がりに増えている。

セグメント売上高に占める比率は63%。単体の製品でも石英製品やセラミックスの売上高は真空シールを上回っている。ただ、これらの製品では真空シールのような高シェアは持っていないそうだ。

 

真空シールと半導体マテリアル製品を除いた半導体等装置関連事業の内訳が以下のグラフとなる。

EBガン・LED蒸着装置はほぼ成長がなく横ばいで推移している。

ウェーハ加工は中国でのビジネスだが、株式売却により持分法適用会社となった。この事業は成長期待こそあったものの、赤字かつ多額の投資により財務悪化の原因になっていた。現在のフェローテックの持分は23.05%。中国での上場を目指している。

装置部品洗浄も中国でのビジネス。会社によるとウェーハ洗浄は中国で50~60%の市場シェアを持つそうだ。業績は順調に伸びており2022年は前年比+28%の増収だった。セグメント売上高に占める比率も12%まで上がっている。

石英坩堝は以前は太陽電池関連事業に含まれていた。売上高は減少が続いていたが2022年は久々に大きく回復した。

 

続いて電子デバイス事業。

このセグメントは磁性流体、パワー半導体基板、サーモモジュールで構成されている。なお、パワー半導体基板の数字が分かるのは2017年からでそれ以前はサーモモジュールに含まれていた。

磁性流体は祖業で高シェアを持つものの市場規模が小さいため売上高は少ない。

サーモモジュールは対象物を瞬時に暖めたり冷やしたりすることのできる製品。小型軽量かつ振動騒音がないことから幅広い分野で使われているそうだ。用途別で42%を占めているのが光通信で5G通信機器にも使われる。サーモモジュールはフェローテックのコア技術のひとつであり36%のシェアを持つ。

この製品の売上高は2016年から横ばいが続いていたが、2022年は前年比+35%と久々に大きく伸びた。5G機器向けやPCR検査機など医療分野が伸びたそうだ。

パワー半導体は、産業用機械やEVのモーターなど大きな電力を扱う場所で使われることが多い。フェローテックはサーモモジュール製造技術を応用したDCB基盤を作ってきたとのこと。現在の生産能力はDCB基板が月産110万枚、AMB基板が月産10万枚。DCB基板160万枚、AMB基板45万枚への増産を計画している。

パワー半導体基板の2022年の売上高は前年比+143%と大きく伸びた。この製品は過去数年で見ても成長率が高い。

 

好調な決算と同時に中期経営計画が上方修正された。

従来は2024年3月期に売上高1,500億円・営業利益250億円という目標だったが、今回の修正により売上高2,300億円・営業利益400億円となった。

22年3月期~24年3月期の投資金額も旧計画の950億円から1,800億円に引き上げられた。資金はこれまでに行った増資とキャッシュフローによって賄う見込み。

 

中期経営計画のカテゴリー別の目標売上高を見ると、電子デバイスと半導体サービスの伸び率が高くなっている(半導体金属・装置の伸び率も高いが、これはその他に計上されていた金属加工が含まれるようになるため)。

電子デバイスの内訳は、サーモモジュールが+15.6%、パワー半導体基板が+241.7%とパワー半導体基板の伸び率が非常に高い。パワー半導体基板の2024年の売上高は石英製品やセラミックスを超えて最大になる見込み。

 

バランスシートを見ると2022年3月期の有利子負債は前年から減って395億円となった。

一方で現預金は200億円以上増加して525億円。

中国への積極投資で悪化した財務は、ウェーハ子会社の株式売却や増資によって大きく改善した。

 

株価は決算後に大きく上げたものの、その後は横ばいが続いている。2021年末のピークからは4割近く下げた位置にある。

今期PERは7.6倍。成長率に比べると評価が安い。

半導体銘柄ということで市況のピークが意識されているのと、中国リスクが高いことが原因かなと思う。

2Qの資料によると、売上高に占める中国子会社比率は44%、有形固定資産に占める中国比率は83%となっている。中国の半導体国産化の追い風を受けるポジションではあるがカントリーリスクが高い。

また、中国子会社を上場させる方針から、業績の伸びほど純利益が増えない可能性や、ガバナンス面での不安がある。

パワー半導体基板、シリコンパーツ、半導体洗浄という最も伸びる事業の中国子会社は、上場により5割前後の持分まで低下しそう。