イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオと主に車載向けのUI開発ソリューションの会社。
クリップスタジオはアマチュアからプロのクリエイターまで幅広く利用されている。イラストSNSの pixiv での使用率はNo.1とのこと。
2021年10月末の累計出荷本数は1,546万本で、うち72.9%が海外向けとなっている。
3Q累計の売上高は前年比+11%の増収、経常利益+87%の増益だった。経常利益の進捗率は86%。
3Q単体だと売上高+2%の増収、経常利益+30%の増益となる。
セグメント別の業績。
クリエイターサポート事業の3Q単体は、前年比で売上高+15%、経常利益+8%だった。依然として伸びてはいるが伸び率は鈍化している。ただ、前年はコロナ特需があったのかもしれない。
クリップスタジオのサブスクリプションは順調に伸びている。
売上高に占めるサブスクの割合は3Q(7月~9月の平均)が37%、直近の10月は47.7%となっている。季節性はあるが順調に上がっている。
サブスクの3か月ARRも順調に伸びている。直近のARRは16.6億円。
ただ、今年のクリエイターサポート事業の売上高が60億円、来年(中計)が66.4億円なので、セグメント売上高に占めるサブスクの割合はまだまだ低い。
UI/UX事業は-42%の減収で赤字。
売上高はエイチエス社の売却により大きく減っている。カンデラ社ののれんを償却したことで赤字額も減ってはいるが、依然として四半期ごとに1.5億円前後のマイナスを計上している。中期経営計画によるとこの事業の赤字は2023年まで続く見込み。
今期の業績予想は上方修正済みで、売上高+11%増の70.8億円、営業利益+80%増の13.5億円。そのうちクリエイターサポート事業は売上高60.5億円、営業利益18.5億円。
3Qまでの業績を見ると、通期予想の達成はやや厳しいかなという感じがする。
決算後に株価は大きく下げている。現在の時価総額は290億円。
今期は特別利益があるため経常利益×0.7で計算した予想PERは31倍となる。
赤字のUI/UX事業を除いてクリエイターサポート事業の営業利益×0.7で計算した予想PERは22倍(この会社は営業外の損益もセグメント間の調整も少ない)。
クリエイターサポート事業の売上高成長率は、1Q+46%、2Q+20%、3Q+15%だが、新型コロナの影響を除くとどれくらいの数字になるのかよく分からない。中計では2022年~2025年にかけて+21%、+12%、+20%、+19%となっており、+10~20%くらいの伸びを想定しているようだ。であれば単に成長率とPERの数字の比較からは妥当なバリュエーションになりそう。サブスク銘柄としての評価ならもっとプレミアムがつきそうだが。
アートスパークは株価上昇によって一昔前のような割安感はすでになくなってしまった。現在はグロース株としての評価になるが、クリップスタジオの成長率や市場の拡大余地がいまいち不明なのであまり強気になれない。