6890 フェローテックホールディングス

半導体関連の製品・サービスと電子部品の会社。

磁性流体、真空シール、石英製品、セラミックス、半導体洗浄、サーモモジュール、パワー半導体基板などを提供している。

 

セグメント売上高の推移は以下の通り。現在のセグメントは半導体等装置関連事業と電子デバイス事業の2つだが、2019年までは太陽電池関連事業を行っていた。

半導体等装置関連事業は波があるものの右肩上がりに業績を上げている。電子デバイス事業は2014年~2015年頃から大きく伸びている。

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セグメント利益の推移。

半導体等装置関連事業は波があるものの近年は大きな利益を出している。電子デバイス事業は赤字がなく利益に貢献している。

太陽電池事業は2009~2011年ごろは大きな利益を出していたが、2013年以降は撤退するまで赤字が続いていた。

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次に製品ごとの売上高を見てみる。

半導体等装置関連事業ではコア技術である磁性流体を使った真空シールで65%という高いシェアを持つ。真空シールは半導体製造装置、FPD、LED関連製造装置の基幹部品として使用されているそうだ。

真空シールの売上高は10年程度で見るとそれほど大きく伸びてはいない。2021年はセグメント売上高の14%を占めている。

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フェローテックは真空シールを販売している顧客に対して石英製品やセラミックスなどの半導体生産プロセスで使われる消耗品を拡販してきた。これらの製品(石英製品、シリコンパーツ、セラミックス、CVD-SiC)を半導体マテリアル製品として区分けしている。

半導体マテリアル製品の売上高はセグメントの57%を占めており最も大きい。単体の製品区分で見ても石英製品やセラミックスの売上高は真空シールを上回っている。ただ、これらの製品では真空シールのような高シェアは持っていないそうだ。

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真空シールと半導体マテリアル製品を除いた半導体等装置関連事業の内訳が以下のグラフとなる。

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EBガン・LED蒸着装置はほぼ成長がなく横ばいで推移している。

ウェーハ加工は中国で多額の投資をしてきたが、株式の売却により持分法適用会社に移行した。この部門は成長期待こそあったものの財務悪化の原因になっていたので、売却によりバランスシートが改善したのは良かったのかなと思う。ウェーハ子会社は赤字だったため業績へのマイナスの影響はない。この会社は2022年6月に上海の科創板市場への上場する予定。フェローテックの持ち分は29.5%となっている。

装置部品洗浄も中国でのビジネス。会社によるとウェーハ洗浄は中国で50~60%の市場シェアを持つそうだ。業績も伸びておりセグメント売上高の12%を占めている。なお、ウェーハ洗浄の子会社も深センの創業板に上場する計画となっている。現在の持ち分は67.73%。上場後も連結子会社を維持する方針。

石英坩堝は以前は太陽電池関連事業に含まれていた。売上高は大きく減少している。

 

続いて電子デバイス事業。

このセグメントは磁性流体、パワー半導体基板、サーモモジュールで構成されている。なお、パワー半導体基板の数字が分かるのは2017年からでそれ以前はサーモモジュールに含まれていた。

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磁性流体は祖業で高シェアを持つものの市場規模が小さいため売上高は少ない。

サーモモジュールは対象物を瞬時に暖めたり冷やしたりすることのできる製品。小型軽量かつ振動騒音がないことから幅広い分野で使われているそうだ。用途別で43%を占めているのが電子向けで5G通信機器にも使われる。サーモモジュールはフェローテックのコア技術のひとつであり36%のシェアを持つ。

パワー半導体は産業用機械やEVのモーターなど大きな電力を扱う場所で使われることが多い。フェローテックはサーモモジュール製造技術を応用したDCB基盤を作ってきたそうだ。2019年1月の記事によるとDCB基板は月産37万枚で世界シェアの15%に相当するとのこと。さらに2021年1月の記事には2021年中にDCB基板を月産100万枚に、AMB基板を20万枚に引き上げると書かれている。

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以上のようにフェローテックは多くの製品・サービスを取り扱っているが、中期経営計画によると半導体マテリアル、サーモモジュール、部品洗浄、パワー半導体基板、再生ウェーハの5つに注力するそうだ。

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業績面では3年後の2024年3月期に現在の2.5倍の営業利益250億円を目指すとのこと。

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カテゴリー別の目標売上高によると電子デバイスと半導体サービスの伸び率が高くなっている。売上高の絶対額も考えると電子デバイスが重要になりそう。とりわけ成長率の高いパワー半導体基板に期待がかかる。

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バランスシートを見ると2021年3月期の有利子負債は前年から308億円減って476億円となった。ウェーハ子会社の連結除外と売却益による借入返済のため。

一方で現預金は65億円増加して302億円なった。財務的には大きく改善している。

なお、2021年の決算では売上債権が大きく増えているが、これはウェーハ子会社3社の持分法適用会社化が原因とのこと。

 

株価は2021年3月期の本決算後に大きく上げたもののその後はじり下げが続いていた。しかし金曜日に出た1Q決算と上方修正によってPTSで大きく値上がりしている。

1Qの数字は売上高+35%の増収、営業利益3倍超の増益という好決算だった。上方修正後の今期予想は売上高+26%の増収、経常利益+143%の増益となる。

今期予想PERは5倍だが特別利益が大きい。経常利益×0.7で計算した今期予想PERは7.3倍となる。成長率と比べるとかなり低い。

この会社の強みとリスクは中国へのコミットの大きさになると思う。地域別の売上高は日本128億円、中国397億円、アメリカ279億円、その他107億円と中国のみが突出しているわけではないが、有形固定資産の金額を見ると投資は中国に集中している。中国の半導体国産化の追い風を受けるポジションに思えるがカントリーリスクも高そう。