リチウム各社の決算を見ての感想。
・価格
中国の炭酸リチウム価格はキャッシュコストの7,000ドル/トン付近まで落ちており下値は限定的という話がアルベマールから出ている。ただし、中国外の価格は10,000ドル程度で両者には価格差がある。
また、fastmarketによると中国での水酸化リチウムの炭酸リチウムに対するプレミアムが3,000RMBまで縮小している一方で、中国外では2,000ドル程度のプレミアムがついている。
中国価格と国際価格の差から中国外での販売を主力にしているアルベマール、SQM、ライベントには価格下落圧力が残る。とくに水酸化リチウムを主力にしているライベントは水酸化リチウムのプレミアムが縮小した場合に大きな影響を受けそう。
・供給
ティエンチーの kwinana ステージ2の延期、アルベマールの2021年以降のキャパシティ拡張の大幅削減、オーストラリアの鉱石開発会社の供給削減など生産計画見直しが相次いでいる。とはいえ供給が絞られてくるのは少し先になりそう。
一方でSQMはアタカマ開発をまったく見直しておらず、価格を無視してシェアを取りに行く姿勢を示している。
いまのところ供給面から需給が劇的に改善することは期待できないのではないかと思う。
・需要
補助金削減によって中国のEV販売が急減している。10月の中国の販売台数は-40%以上の大幅減となった。
中国の市場シェアは上半期に6割前後を占めていただけに影響は大きい。これまでのところ供給は過剰だが需要には問題ないという強気の見方が多かったが、世界最大のEV市場の低迷によってその見方も修正されそう。
希望が見えるのはヨーロッパ。10月は前年比+32%の伸び率で、1月~10月の累計でも前年比+39%と堅調に伸びている。世界販売に占めるシェアも10月には32%まで上がっている(中国は45%)。フォルクスワーゲンが大衆向けEVの生産を発表するなど一般市場への本格的な普及が期待できるのが良い。
EV Salesで発表されている販売台数をグラフにするとこんな感じになる。
・株価
リチウム市場はひどい惨状だが、各社の株価は底堅い。ガンフォンに至っては急反発して高値を更新している。
アルベマールやSQMの株価はリチウムブーム初期の2016年中頃の水準まで戻していることから、リチウム市場の先行き悪化が十分に織り込まれたということかもしれない。株価は市場に先行する傾向があることから、十分下がった水準と思うならば市場の好転を待たずに買っていくのもありだと思う。
ただ、中国の需要急減や中国価格と国際価格のスプレッド縮小などが起これば一段安もあり得る。リチウムに思い入れがないのであればもっと良い条件が整うのを待ち、仮に株価が上がってしまったら仕方ないというスタンスが無難だと思う。