日本の投資家がMSCIワールドインデックス(先進国指数)への投資をした場合、どれくらいのリターンとドローダウンになるのかを調べてみた。
・MSCIワールドインデックスの月足データ(月末値)はMSCIのHPから取得した。ここでは配当込みのGROSS指数を使う。
・円とドルの為替レート(月末値)はFREDより取得した。
・インフレ調整の実質リターンは消費者物価指数で計算した。消費者物価指数は総務省統計局より取得。
為替データのある1971年1月~2019年7月の期間のドルベースのMSCIワールドインデックス、円換算した指数、円換算&インフレ調整した指数の累積リターンのチャートがこちら。
この期間にMSCIワールドインデックスは約90倍になっている。年率換算すると9.7%のリターンとなる。
しかし為替レートが1ドル358円から109円への円高になっているため円換算の累積リターンは約27倍に落ちる。年率換算のリターンは7%。
さらに消費者物価指数が年率2.4%上がっていることからインフレ調整した円換算の累積リターンは約8倍となる。年率換算のリターンは4.6%。
この4.6%という数字はちょっと低く感じる。実質ベースの株価低迷と円高が始まった70年初めを起点にしていることが影響しているのだと思う。
次にドローダウンを見てみる(あくまでも月足のドローダウン。日次ベースでは損失はもっと大きくなる)。
ドルベースのMSCIワールドインデックスのドローダウンチャートはこちら。
1974年、2002年、2009年に-40~50%のドローダウンが起きている。それぞれオイルショック、ITバブル、サブプライム危機の時期に当たる。
それ以外では1987年のブラックマンデー、1990年のS&L危機に-20%程度の下落があった。
続いて円換算のMSCIワールドインデックスのドローダウンチャートはこちら。
円ベースだとサブプライム危機のドローダウンは-60%に達しており深刻さが増す。一方でITバブルでは円安により最大損失はやや和らいでいる。
期間を通してみると-20%レベルの調整は増えている。ドルベースだとドローダウンが-20%を超えた範囲にあるのが85か月(全期間は583か月)なのに対して、円ベースだと131か月にまで増える。
最後にインフレ調整した実質の円換算MSCIワールドインデックスのドローダウンチャート。
実質で見るとインフレが激しかった1970年代から80年代中頃にかけてほぼすべての期間がドローダウンに入ってしまう。この期間の最大損失は-62%とサブプライム危機に匹敵する。
その期間を過ぎると名目と実質のチャートの形に大きな違いはなくなる(ドローダウンの終わった1985年から2019年にかけてのCPIの上昇率は20%に満たない)。
感想。
世界株への投資も名目ドルベースで見るのと実質円ベースで見るのではかなり違ってくる。
名目ドルベースでは年間10%のリターンで-30%前後の下落はかなりまれな出来事(約50年で3回)となる。
一方で実質円ベースでは年間リターンは5%に半減してしまい-30%前後の下落もしばしば起こっている。
いまは危機が起きると円高の流れが定着しているので日本の投資家は海外の投資家に比べると不利な立場にあると思う。為替ヘッジをしないかぎり株価急落時の損失が円高によって増幅されてしまう。