テスラが黒字決算を発表しました。これまできちんと決算を見たことがなかったのでこの機会に内容を見てみます。
業績
まずは過去5年の売上高と営業利益です。営業利益は赤字ですが、売上の伸び率は高いです。
次に四半期の売上高と営業利益です。
長らく赤字が続いていましたがモデル3の生産が軌道に乗ったことから3Qは大幅増収の黒字転換でした。営業利益4.2億ドル、純利益3.1億ドル、営業キャッシュフロー13.9億ドル、フリーキャッシュフロー(営業-投資)8.3億ドルとすべてが黒字になっています。
財務
ネットキャッシュ(現金同等物マイナス有利子負債)と営業・投資キャッシュフローも見てみます。
営業キャッシュフローは2014年から4年連続で赤字です。投資キャッシュフローと合わせたフリーキャッシュフローは大幅なマイナスが続いており、ネットの有利子負債は約70億ドルまで膨らんでいます。
ただ、有利子負債は大きいものの時価総額は564億ドルもあるのでいざとなれば増資によって資金調達するのは難しくないはずです。また、3Qにキャッシュフローも黒字転換したことから過度な悲観論はひとまず収まるのではないかと思います。
利益率とバリュエーションの比較
テスラ、トヨタ、GM、フォードを比較してみます。
テスラは3Qを×4倍した数字を、他の3社は利益率には実績値をPERとPSRにはYahooFinanceの今期予想値を使っています。
テスラ | トヨタ | GM | フォード | |
---|---|---|---|---|
粗利益率 | 22.3% | 18.7% | 13.9% | 10.6% |
営業利益率 | 6.1% | 8.2% | 7.4% | 4.3% |
税前利益率 | 4.6% | 8.9% | 8.1% | 4.9% |
予想PSR | 2.1 | 0.7 | 0.3 | 0.3 |
予想PER | 45.3 | 9.0 | 5.5 | 6.9 |
表を見て分かるように粗利益はテスラの22.3%が最も高いです。テスラの粗利益はオートモーティブ部門に限れば25.8%まで上がります。一方、トヨタの粗利益は金融収支を除くと17.6%に下がります。
PERやPSRといったバリュエーションはトヨタと比べても高い数字ですが極端に割高というわけではなさそうです。というか、現在の高成長が続き営業利益率が改善すれば割安感が出てくるかもというレベルだと思います。
納車台数
四半期ごとの納車台数を見ると、モデルSとXは2~3万台のレンジで落ち着いていますが、モデル3は1Qが8,182台→2Qが18,499台→3Qが56,065台と順調に増加しています。
モデル3の予約数が2018年1Qの時点で45万台を超えていたことや、2019年初めからアメリカ以外に販売が拡大していくことを考えると、販売台数と売上に関してはしばらくは安泰な状況が続きそうです。
ただし、不安要素として補助金(税控除)の廃止があります。
現在テスラには1台7,500ドルの補助金が出ていますが、今年の7月に販売台数が20万台に達したことから来年1月からこの補助金が段階的に廃止されます。金額的にかなり大きいので売れ行きにどう影響するのか注目だと思います。
(追記)
テスラが開示した3Qの報告書によると、NZEとnon-NZEクレジットの売上が189.5百万ドル含まれていたとのことです。UBSの計算によると両者のEPSへの貢献はそれぞれ0.29ドルと0.77ドルになるそうです。3QのテスラのEPSは2.9ドルでした。
Tesla had 'some unexpected help' when it delivered a surprise Q3 profit, UBS says (TSLA)
今後のラインナップ
2019年にセミとモデルY、2020年に新型ロードスター、2020年以降にピックアップトラックの発売を計画しているようです。
モデルYはコンパクトSUVでモデル3がベースになるそうです。モデル3と同じく値段が抑えられるので売れ行きも期待できそうです。
セミは1台15万ドルからのトラックで、イーロンマスクは4年あれば年間販売10万台を予想できると言っています。15万ドル×10万台で最低でも150億ドルの売上になる計算です。2017年のテスラの売上が117億ドルなので実現すればかなりのインパクトになります。なお、JAMAによると世界のトラックの生産台数は230万台前後とのことです。
新型ロードスターは1台25万ドルで販売するそうです。台数が売れる車ではないので(フェラーリの17年の販売台数が8,398台とのことです)売上的なインパクトはそれほどないと思います。利益については分かりませんが。
エネルギー・ストレージ部門
3Qのセグメント売上高は約4億ドルで全体の6%です。前年比では+26%の増収で粗利益率は17.2%でした。
テスラの一般家庭向け製品は、家庭用蓄電池のパワーウォールと太陽光パネル一体型のおしゃれな屋根のソーラールーフです。
下の写真のように家庭で使う電気を屋根で作り、それを家庭用蓄電池に蓄え、そこから電気自動車に充電するというスタイルが実現すればまさに革命的ですね。
ただ、問題は価格でソーラールーフは通常の太陽光パネルに比べてかなり割高になるようです。
感想
テスラは割高と言われていましたが、今回の決算で割高感がかなり薄れたと思います。今後のラインナップもセミやモデルYやピックアップトラックが控えており成長が期待でききそうです。
不安要素は来年から補助金が削減されるところかなと思います。