かん水系のリチウム銘柄

リチウムはかん水と鉱石から生産されていますが、今回はかん水系のリチウム銘柄を紹介します。大手3社以外で少なくとも資源量が発表されている銘柄を拾いました。リチウムアメリカズのほかはオーストラリアかカナダ上場になります。

 

かん水系の特徴

一般的にはかん水からのリチウム生産は初期投資が大きく生産までに時間がかかる一方で生産コストは低くなるとされます。

例えばオロコブレの場合、開発開始が2008年、資源量の発表とPEA(Preliminary Economic Assessment )が2009年、DFS(Definitive Feasibility Study)が2011年、2012年に豊田通商とのジョイントベンチャー締結、2015年に初の売上を計上しますが2018年現在もフル生産には至っていません。長い道のりです。

コストカーブは以下のように鉱石系よりも下になっています。

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プロジェクト一覧

以下は各社のHPから拾ったプロジェクトの資源量や年間生産量の数字です。

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プロジェクトをざっくり見ると、オロコブレの Olaroz、リチウムアメリカズの Cauchari-Olaroz、ギャラクシーリソースズの Sal de Vida の3つは資源量・グレード共に申し分ないです。

それ以外のプロジェクトの資源量はどれも上の3プロジェクトの半分以下です。ただし、ネオリチウムの3Qとリチウムパワーインターナショナルの Maricunga のグレードは非常に高いです。

 

Orocobre(ORE:AX)

大手3社以外で唯一かん水からリチウムを生産している会社です。

現在の生産状況は以下の通りです。

・2017年6月期の年間生産量11,862トン(炭酸リチウム換算)、2018年のガイダンス14,000トン、キャパシティ17,500トン、フェーズ2の拡張案42,500トン。

・直近18年1Qの販売価格13,533ドル/トン、18年1QのSQMの販売価格16,400ドル/トン。

・直近18年1Qの生産コストは4,356ドル/トン。ガイダンスは3,710ドル。

・2017年6月期の減価償却費・のれん償却費8.8百万ドル、金融費用10.6百万ドル。

 

これらの数字を参考に、販売価格14,000ドル、生産コスト3,710ドル、償却費&利払い19.4百万ドル、税率35%、持分66.5%で計算すると、年間生産量17.5ktの利益は69百万ドルになります。生産量42.5ktだと181百万ドルです(償却費と利払いは増えるはずですが)。

どれだけ利益が出るかは前提条件によりますが、ざっくり見てステージ1で60~70百万ドル、ステージ2で150百万ドルくらいが期待できるのかなと思います。

現在の時価総額は約1.12十億ドルなので、この利益を使ったPERはステージ1で16.2倍、ステージ2で6.2倍です。ステージ1のフル生産を見込んだ株価としては妥当~やや割安くらいではないでしょうか。販売価格が上がったり拡張が進めば株価の上昇も期待できると思います。

 

なお、オロコブレはこのほかにアドバンテージ・リチウム(AAL.V)との共同プロジェクトがあります。オロコブレはプロジェクトの25%を持つほか、アドバンテージ・リチウムの29%を保有する大株主です。このプロジェクトの資源量は発表されていませんが、ターゲットは0.25~5.6Mtとのことです。 

 

Lithium Americas(LAC、LAC:TO)

フラッグシップの Cauchari-Olaroz はオロコブレの2倍の資源量を誇ります。SQMとのジョイントベンチャーであること、ガンファン他から資金調達・オフテイク契約を結んでいることからプロジェクトのリスクは低いです。

年間生産量はステージ1が25Kt、ステージ2で50Ktを目指しています。リチウムアメリカの持ち分は45.75%なので、ステージ1が11.4Kt、ステージ2で22.9Ktになります。オロコブレのステージ1&2(持分換算で11.6Kt、28.3Kt)に近い数字です。

現在の時価総額は480百万ドルでオロコブレの半分以下です。オロコブレと比べると3~4年の遅れがありますが、ステージ1が実現することで同レベルの時価総額(2.3倍)になるとすれば悪くないリターンだと思います。

 

Cauchari-Olaroz の他にはネバダのクレイ(粘土)プロジェクトも持っており、今年の4月に資源量が発表されています。精測・観測資源量は6Mt、予測資源量も合わせると8.3Mtと巨大です。ただ、現状でクレイからリチウムを生産しているプロジェクトがないため評価は不明です。

 

Neo Lithium(NLC:V)

アルゼンチンに位置する3Qプロジェクトを持ちます。資源量は2Mtで上の2社に比べると小規模ですがグレードは高めです。

PEAの税後NPV8%は1.2十億ドルです。

前提条件はLCE価格11,760USドル/トン、年間生産量35Kt、生産寿命20年、生産コスト2,791ドル/トン、CAPEX490.2百万ドルです。

現在の時価総額は145百万ドルとリチウムアメリカの3分の1以下ですが、進捗具合が違いすぎてこれをどう評価すればいいのか難しいです。DFSもまだ出てませんし、資金調達による希薄化があるでしょうし、スムーズに話が進んでもリチウムアメリカズよりも2年くらいは遅れていると思います。 

 

Lithium Power International(LPI.AX)

チリに位置する Maricunga プロジェクトの50%を持ちます。ネオリチウムの隣です。

SQMやアルベマールのアタカマ湖に次いでグレードが高いことが売りですが、精測&概測資源量は1.7Mt、予測資源量を含めても2.15Mtと小さめです。

PEAの税前NPV8%は1,049百万ドルです。

前提条件は、年間生産量20Kt、生産コスト2,938ドル/トン、生産寿命20年、CAPEX389百万ドルです。

位置的にも進捗的にもネオリチウムと近いので比較可能かもしれません。時価総額は53百万ドルとネオリチウムの3分の1弱となっています。持分が50%ということを考慮しても、やや評価が低い感じです。

なお、先日 LPI と Codelco が法廷闘争しているというニュースが出ていました。Codelco に許可された採掘エリアがプロジェクトと被っているという訴えのようです。

 

Millennial Lithium(ML:V)

アルゼンチンの Pastos Grandes プロジェクトを持ちます。オラロス湖の下です。

精測&概測資源量は2.1Mtで予測資源量を含めると3Mtになります。サイズ的には上の2社よりやや大きいのですがグレードは低めです。

PEAの税後NPV8%は824百万ドルです。

前提条件は、生産量25Kt(バッテリーグレード20Kt+テクニカルグレード5Kt)、リチウム価格13,499ドル、生産コスト3,218ドル、生産寿命25年、CAPEX410百万ドルです。

この会社には中国太陽電池大手のGCLが30百万ドルの戦略的投資しています。

時価総額は163百万ドルでネオリチウムより大きいです。資源量がやや多いのと戦略パートナーがいるのがプラスですが、グレード低いのがマイナスでしょうか。

 

Lsc Lithium(LSC:V)

リチウムトライアングルに位置する6個のプロジェクトを持ちます。広大な土地の開発権を確保している会社です。Salar del Rincon を開発している Engiri が戦略パートナーです。

6個のプロジェクトのうち Pozueos と Rio Grande は資源量が出ており、いずれも2Mt前後ですがグレードは低めです。

時価総額は92百万ドルです。初期段階のプロジェクトが多く、適正価格は見当がつきません。

 

International Lithium Corp(ILC:V)

4つのジョイントベンチャープロジェクトと、1つのフルオーナープロジェクトを持ちます。中国のガンファンリチウムがパートナーで株式の16.29%を持ちます。

旗艦プロジェクトは Mariana で1.8Mtの資源量ですがグレードは低めです。会社の持ち分は17.2%+10%のオプションです。

時価総額は6.2百万ドルと超小型です。単純に Mariana プロジェクトだけでも開発が進めばそれくらいの価値は出そうですし、さらにガンファンリチウムというネームバリューがあるのは強みです。投機であればこれくらい極端な小型株の方が良いかもしれません。