EVの普及によって需要増加が予想されるコバルトについてです。
UBSのレポートによると、EV(シボレーボルトEV)普及率100%の世界でのコバルト需要の増加率はリチウムに次いで大きい値になっています。
需要増加率が大きいのはコバルト消費の約4割がバッテリー用途であるためです。この数字はリチウムと並んで高い値です。
足元の需給は供給不足であり、さらに今後も供給不足が続くとの見方が多いです。この点は供給過剰という予想も多いリチウムとは違います。
コバルト供給の大きな問題として以下の2点があります。
・ほとんどすべてのコバルトは銅やニッケルの副産物として生産されるため、供給はそれらの金属の価格に影響を受ける。
・コバルトの6割がコンゴで生産されておりカントリーリスクが大きい。
2017年に入りコバルト価格は急騰しています。ただ、過去を見ると最高値というわけではありません。
生産会社のリスクとしてはコバルトの他の金属への置き換えがあります。
以前の中国はコバルトを使わないリン酸鉄系の正極材が主力でしたし、現在主流の三元系でも組み合わせによってコバルト使用量が変わってきます(下図)。ニッケル8 : マンガン1 : コバルト1になるとコバルトの使用量はかなり少なくなります。
コバルトの価格はニッケルの5~6倍もするため、コバルトの少ない正極材を採用するメリットは大きいです。
現在生産中の主要コバルトプロジェクトの一覧です。
コバルト大手はグレンコア、洛陽モリブデン、金川国際、シェリット・インターナショナルといった会社です。
新興の開発会社はオーストラリアやカナダに上場しています。以下にいくつかの銘柄を挙げます。
Katanga Mining(TSE:KAT)
グレンコアの子会社で、コンゴの Kamoto プロジェクトの75%を持ちます。
精測&概測資源量は275.8Mt@銅3.66%・コバルト0.55%です。グレードは通常の4倍で、コバルトは世界一の資源量とのことです。他の新興開発会社と比べても桁が違います。
年間生産量の目標は銅300kt・コバルト22ktで、洛陽モリブデンが買収した Tenke の生産量(銅219kt・コバルト18kt)を上回る規模です。鉱山寿命は22年です。
生産開始は2018年の予定です。
時価総額は他の銘柄と比べても高く3.3十億カナダドルです。
eCobalt Solutions(TSE:ECS)
コバルトが主産物(売上の75%を占める予想)のアメリカの Idaho Cobalt プロジェクトを持ちます。
FS(実行可能性調査)済みで生産開始は2019年の予定です。他のプロジェクトと比べて進捗が良くリスクが少ないです。
精測&概測資源量は3.4mt@コバルト0.59%です。予測(Inferred)も含めたコバルトの資源量は約25ktとなります。グレードは高いのですが資源量は少なめです。
HPによると年間生産量の目標は1,500トンで鉱山寿命は12.5年です。
FSによると税後NPV@割引率7.5%&コバルト価格26.65ドル/ポンドは135.8百万ドルです。現在の223百万カナダドルという時価総額からするといまいちの数字に思えます。
Fortune Minerals(TSE:FT)
FS済みのカナダのNICOプロジェクトを持ちます。コバルト、金、ビスマスのプロジェクトです。
埋蔵量は33mt@コバルト0.11%、コバルト82.3百万ポンド(37kt)・金1.11百万オンス・ビスマス102.1百万ポンド・銅27.2百万ポンドです。
FSによると年間生産量は、硫酸コバルト1,615トン・ゴールド41,360トロイオンス・ビスマス1,750トン・銅265トンとなっています。売上比率はコバルト4割、金とビスマス3割ずつになるとのことです。なお、コバルトの生産量は1,700~2,000トンにアップデートされています。
鉱山寿命は21年です。
税前NPV@割引率7%&金1,350ドル/トロイオンス・コバルト16ドル/ポンド(硫酸コバルト19.04ドル)・ビスマス10.5ドル/ポンドは254百万カナダドルです。使われているコバルト価格が低いうえ、現在の時価総額91百万カナダドルに比べるとアップサイドがあります。
NICOプロジェクトはインフラに問題があり、イエローナイフからワタイまでの道路をカナダ政府が(2019年に建設開始)、ワタイから50kmの道路を会社が建設することになっています。
Clean TeQ(ASX:CLQ)
オーストラリアの Sunrise Nickel-Cobalt-Scandium プロジェクトを持ちます。
PFS済みでDFSは18年1Qに完了の予定です。中国の電池材料大手の Easpring と生産物の20%のオフテイク契約も交わしています。
精測&概測資源量は87mt@ニッケル0.64%(558kt)・コバルト0.13%(116kt)です。コンゴ以外で最も資源量が大きいプロジェクトのひとつとのことです。
年間生産量はニッケル18.7kt・コバルト3.2ktで、鉱山寿命は39年です。売上はスカンジウムを除いてコバルト55%・ニッケル45%となります。
税後NPV@割引率8%&ニッケル7.5ドル/ポンド・コバルト12ドル/ポンドは891百万ドルです。時価総額864オーストラリアドルとそれほど変わりませんが、計算に使われているコバルト価格はかなり低いです。
Ardea Resources(ASX:ARL)
オーストラリアの Kalgoorlie Nickel プロジェクトを持ちます。
プロジェクト全体のコバルト資源量はコンゴ以外で最も大きいのですが、会社はグレードの高いKNPコバルトゾーンに注力しています。精測&概測&予測資源量は64.4mt@コバルト0.13%・ニッケル0.77%で、コバルト含有量は81kt・ニッケル含有量は495ktとなります。
PFSは18年1Qに完了の予定です。
プロジェクト初期段階ということもあり、時価総額の139百万オーストラリアドルは資源量からすると低めに思えます。
Cobalt Blue(ASX:COB)
数少ないコバルトのピュアプレイヤーです。オーストラリアの Thackaringa コバルトプロジェクトを持ちます。
資源量は54.9mt(予測資源量が48.4mt)、コバルト49.9ktです。硫酸コバルトの年間生産量~4ktをターゲットにしています。
PFSは2018年2Qを予定しています。
時価総額は74百万オーストラリアドルです。
GME Resources(ASX:GME)
オーストラリアの NiWest プロジェクトを持ちます。
精測&概測&予測資源量は81mt@ニッケル1.03%・コバルト0.06%、ハイグレードゾーンは35mt@ニッケル1.21%・コバルト0.08%です。ニッケルの比率が高めの鉱山で、ニッケルの資源量は世界トップ10に入るレベルとのことです。
会社によると世界のニッケル生産の半分はバッテリーに適さないそうですが、こちらは高品質のバッテリーにそのまま使えるニッケルコバルトを生産するそうです。
PFSは18年1Qを予定しています。
時価総額は30百万オーストラリアドルと非常に小型です。