アメリカの景気について考える

イールドカーブの逆転が起きたことから景気後退が心配されています。

実際にアメリカ経済はどうなのかという点について経済指標を見つつ個人的な考えを書いてみます。

 

まずは10年-2年金利です。この2つの金利はまだ逆転していませんが逆イールドの一歩手前までスプレッドが縮小しています。

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イールドカーブの逆転については以前メモを書きました。

逆イールドカーブは過去に起きたアメリカの景気後退を高い精度で予想してきたものの、株価はイールドカーブの逆転が起きた年も2年後も3年後もプラスリターンだったそうです。

イールドカーブの逆転が株価下落につながらないのは、逆転が起きてから景気後退までのタイムラグがあることや、景気後退が起きても株価が大きく下がるとは限らないためでしょう。2000年代はITバブルとリーマンショックがあったため景気と株価の動きがかなり一致していますが、それ以前は景気後退期でも株価がそれほど下がらなかった例がけっこうあります。

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中国ネット株のチェック

決算も揃ったのでウォッチしている中国ネット株のPERなどをチェックしました。

ティッカー 会社 株価 今期PER 来期PER 売上高 増収率 増益率
JD JD.com 20.93 83.7 36.7 15,715 25% 赤字
BABA アリババ 153.06 29.7 22.9 12,772 54% -19%
0700.HK テンセント 310.6 31.8 28.2 12,089 24% 22%
BIDU バイドゥ 179.56 18.7 17.0 4,230 20% -6%
NTES ネットイース 236.61 35.0 28.8 2,528 35% -17%
YY YY 62.66 8.6 8.1 615 33% -8%
SINA シナ 63.22 20.5 16.8 557 26% 6%
WUBA 58.com 58.06 21.9 18.1 544 33% 28%
MOMO モモ 24.57 10.0 7.9 536 51% 6%
WB ウェイボー 61.62 23.0 19.0 460 44% 37%

※今期PERと来期PERはYahooFinanceのアナリスト予想を使って計算しました。

※売上高、増収率、増益率は直近四半期の数字です。売上高の単位は百万ドル、増益率は営業利益です。 

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原油安で恩恵を受けそうな業種

2000年1Q~2018年2Qまでの円建ての原油価格と業種別の営業利益率を比べてみました。

原油価格は世界銀行から取得した Crude oil, average の3か月平均(四半期の営業利益率と比較するため)です。これを日銀の為替レートで円換算しました。

業種別の営業利益率は法人企業統計の数字です。対象企業は資本金10億円以上の大企業です。期間中のデータが完全に揃っていない業種は除きました。

 

相関係数のマイナスが大きかった(原油安メリット)10業種はこちらです。

なお、全体や景気との連動も見るために全産業や製造業との相関係数も載せておきます。

  円建て原油 全産業 製造業
電気業 -0.62 0.02 0.10
パルプ・紙・紙加工品製造業 -0.50 0.11 0.31
印刷・同関連業 -0.44 0.05 0.42
ガス・熱供給・水道業 -0.30 -0.08 -0.11
化学工業 -0.18 0.64 0.69
生活関連サービス業 -0.09 0.12 0.17
その他の運輸業 -0.07 0.30 0.30
水運業 -0.06 0.13 0.49
農林水産業(集約) -0.02 0.08 0.12
その他の製造業 -0.02 0.43 0.65

上位の 「電気業」「パルプ・紙・紙加工品製造業」「印刷・同関連業」「ガス・熱供給・水道業」はイメージどおりかなと思います。「全産業」との相関もそれほど高くないので原油価格に素直に反応するのではないでしょうか。

続いて「化学工業」が入っていますが、こちらは原油価格よりも「全産業」や「製造業」との相関が高いので景気循環の影響の方を強く受けそうです。

それ以下の業種はマイナスの値ですが数字自体は高くないです。

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アルベマールとSQMの18年3Q決算

アルベマール決算

3Qは売上+3%の増収、営業利益+11%の増益、調整EBITDA+12%の増益でした。

調整希薄化EPSは1.31ドル、過去4四半期のEPSを使った実績PERは20倍くらいになります。YahooFinanceのアナリスト予想のEPSを使った今期PERは17.8倍、来期PERは15.7倍です。

リチウムセグメントは売上高+1%の増収、調整EBITDA-1%の減益でした。売上への貢献は価格が+6%、数量が-5%です。

リチウム価格は2Q比でフラットで2019年も下落は予想していないとのことです。

数量の減少はハリケーンや停電や環境調査のための予期せぬ操業停止が原因とのことです。

会社の発表しているリチウム生産の拡張計画は下のグラフのとおりです。

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持ち株&気になる銘柄の決算チェック その3

決算シーズンも終わったので持ち株や気になっている銘柄をチェックしてみます。今回は金融・不動産・製造業の銘柄です。

 

8699 澤田ホールディングス

モンゴルのハーン銀行が主力の会社です。

中間決算は売上高+9%の増収・経常利益+67%の増益でした。ハーン銀行の3Q(12月決算)も+46%の増益と好調を持続しています。

セグメント別に見ると、銀行が好調で+10%増収+74%増益でした。一方で証券は大幅減益ですが、銀行以外のセグメントの比率は小さいです。

モンゴル経済ですが、世界銀行は実質GDP成長率の見通しを5.4%から5.9%に引き上げています。為替は10月に急落しましたが、現在はかなり戻しています。

今期予想PERは中間の利益を単純に2倍すると6.7倍です。銀行セグメントに明確な季節性はないので、このペースが続けば割安感があると思います。

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持ち株&気になる銘柄の決算チェック その2

決算シーズンも終わったので持ち株や気になっている銘柄をチェックしてみます。今回は内需系の銘柄です。

 

9267 ゲンキー

食品比率の高いドラッグストアチェーン。

1Qは売上高+12%の増収・経常利益+7%の増益でした。進捗はいまいちで、中間予想を達成するのに2Q単体では売上高+17%の増収・経常利益+37%の増益が必要です。

通期予想は売上高+16%の増収・経常利益+20%の増益です。

月次売上高は7月~10月まで全店115.2%・既存店107.2%と堅調です。

今期のPERは15.4倍弱とほどほどですが、下振れ懸念があるのが不安材料でしょうか。

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ファクター投資入門

近年スマートベータとして流行しているファクター投資を解説した本です。

ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)

ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)

  • 作者: アンドリュー・L・バーキン,ラリー・E・スウェドロー
  • 出版社/メーカー: パンローリング株式会社
  • 発売日: 2018/11/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者らは数百もあるさまざまな投資ファクターのなかから真に価値あるファクターを選り分けるために5つの基準を設定しています。

・持続性・・・長期間にわたり、異なる経済的レジームでも有効である。

・普遍性・・・あらゆる国、地域、セクター、さらにはアセットクラスで有効である。

・安定性・・・どのような定義でも有効である(PBR、PER、PCFR、PSR)。

・投資可能性・・・机上のみならず、取引コストなど実践するときの検討事項を考慮したあとでも有効である。

・合理的な説明・・・そのプレミアムとそれが存続する理由を、リスクに基づき、または投資家の行動に基づいて、合理的に説明することができる。

これらの基準をクリアするファクターとして、本書では市場ベータ、サイズ、バリュー、モメンタム、収益性・クオリティ、ターム、キャリーが紹介されています。また付録では、配当、低ボラティリティ、デフォルト、タイムシリーズモメンタムも取り上げています。

 

各ファクターは持続性・普遍性・安定性・投資可能性・合理的な説明の観点から詳細に解説されています。長期的なリターンはどれくらいあったのか、アメリカ以外の国でも機能しているのか、実際の投資信託のリターンはどうなのか、そのファクターが有効な理由はなぜなのか、など。

これらの解説はほぼすべてが学術的な研究に基づいておりとても信頼感がありました。また、数式は出てこないので数学の苦手な人も読むことができます。難しい数式のある英語の論文を大量に読むのは難しいので、このようなまとめ本があるのはとても助かります。

個別ファクターの解説以外には、論文発表後のリターンの変化やファクターの分散効果といった話も書かれています。

以上のように内容的には文句なく素晴らしいので、ファクター投資について正確な情報を知りたいという人にとっては必読の一冊だと思います。難点を挙げるなら図表が少なく堅い文章がぎっしり詰まっている感じなので読んでいて面白みを感じないところでしょうか。

 

なお、各ファクターについての簡単な概要は下の記事にメモしています。

 

持ち株&気になる銘柄の決算チェック その1

決算シーズンも終わったので持ち株や気になっている銘柄をチェックしてみます。今回はネット系の銘柄です。

 

3633  GMOペパボ

個人向けレンタルサーバーやネットショップ運営支援の会社です。主力事業は安定して伸びていますが、ハンドメイド事業が大きな赤字を出しています。

3Qは売上高+11%の増収・経常利益+93%の増益でした。通期の経常利益を46%上方修正していますが進捗率は95%と依然高いです。

セグメント別に見ると、ホスティングが1桁の増収増益、EC支援が+28%増収+15%増益、ハンドメイドが+11%増収5.35億円の赤字です。

EC事業は Canvath 事業譲受の上乗せがありますが、オリジナルグッズ作成のSUZURIが伸びているようです。

ハンドメイド事業は先行投資のため赤字ですが売上高の伸びは少し物足りなく思えます。ただ、月次の流通額は直近やや減速しているものの10月まで+18.5%の伸びです。

通期の営業利益は4.3億円の予想ですがハンドメイド事業の赤字が7.6億円あります。現在の時価総額は103億円なのでハンドメイド事業の赤字がなくなればPERは10倍台前半でしょうか。

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オニールの成長株発掘法

成長株投資で有名なウィリアム・オニールの本を読みました。 

オニールの成長株発掘法 【第4版】 (ウィザードブックシリーズ)

オニールの成長株発掘法 【第4版】 (ウィザードブックシリーズ)

  • 作者: ウィリアム・J・オニール,スペンサー倫亜
  • 出版社/メーカー: パンローリング
  • 発売日: 2011/04/15
  • メディア: 単行本
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この本で解説されているのは株価が何倍にもなるような大化け株を見つける方法です。オニールはこの方法を「CAN-SLIM」という7つのルールにまとめています。

C=当期四半期のEPSと売り上げ(Current Quarterly Earnings)

A=年間の収益増加(Annual Earnings Increases)

N=新製品、新経営陣、新高値。(New Products, New Managment, New Highs) 

S=株式の需要と供給(Supply and Demand) 

L=主導銘柄か、停滞銘柄か(Leader or Laggard)

I=機関投資家による保有(Institutional Sponsorship)

M=株式市場の方向(Market Direction)

CAN-SLIMについてのオニールの言葉を引用すると、「われわれの手法は、強いファンダメンタルを持つ企業、つまり独自の新製品や新サービスによってもたらされた大きな売り上げと増益を見せる銘柄を見つけだし、そのような銘柄が適切に形成されたベース期間から抜け出して強気相場で大きく上昇を始める前に、正しいタイミングで買うということだ」とのことです。

他のファンダメンタル系の投資手法と違うのは、最高の成長株のみを対象にする、バリュエーションにこだわらない、上げ相場のときだけ参加する、チャートを重視するといった点かなと思います。

 

CAN-SLIMの有効性についてですが、客観的な検証結果が掲載されているわけではないのでこの本を読んだだけではよく分かりません。上げ相場でのグロース株は強烈に値上がりするので正確に実践できればかなり効果的な気はしますが。

ただ、実践に当たってはマーケットの方向性を見極めるという点がかなり難しいのではないかと思いました。オニールはチャートさえ正しく読めればマーケットの天井や底を見抜けると言いますが、解説ではいくつもの条件が羅列されているだけで明確なルール化はされていませんし、その根拠も成功したチャートが掲載されているだけです。これは個別株のセットアップに関しても同じで、取っ手付きカップ型などの解説はあるものの有効性についてはいまひとつ謎でした。

 

そんなわけで個人的にはこの本のチャートの解説はやや微妙に感じましたが、CAN-SLIM自体は代表的な成長株投資法なので読んで損はないのかなと思います。